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  • 2016/07/21 掲載

JFEスチールやNTTドコモが「OpenStack」を導入した理由

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クラウドのIaaS環境をプライベートで構築するオープンソースのソフトウェア群「OpenStack」。2010年のプロジェクト開始以来、6年目を迎え、エンタープライズへの導入も着実に進んでいる。信頼性やセキュリティといった現行のシステムで求められる性能を維持しながらクラウドの利用を進めるには、さまざまな懸念を抱いている人も多いだろう。そこで、JFEスチールやNTTドコモなど、ユーザー企業の先進的な事例から、OpenStack導入の決め手や活用のノウハウに迫った。
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大手企業がOpenStackを採用する動きが活発化している


JFEスチールが自社クラウドにOpenStackを採用した理由

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JFEスチール
IT改革推進部
渡邉 健太郎 氏
 エンタープライズにおけるOpenStack導入が進んでいる。OpenStack Foundationの調査によれば、全米のフォーチュン100企業におけるOpenStackの導入率は、2014年4月の34%から2016年4月には54%と半数を超えた。

 OpenStack導入の価値は、ビジネスに「破壊的革新と多様性」をもたらすことだ。このほど都内で開催された「OpenStack Days Tokyo 2016」では、日本の先進企業の導入事例が紹介された。

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 JFEスチールは、2003年4月に日本鋼管と川崎製鉄の鉄鋼部門が統合、発足した。同社では「合併会社がそれぞれITインフラを整備してきた」課題があった。同社 IT改革推進部の渡邉 健太郎 氏は、「迅速に変化に対応できるグローバルIT活用企業をめざすべく、これまで個別最適化が進み、複雑化していた古いIT基盤を解消する必要があった」と語る。

 柔軟性の高いITシステム、アーキテクチャに変革していくため、同社では、製鉄所のシステム更新による「IT構造改革の断行」と、業務改革と最新IT技術の活用による「IT活用レベルの高度化」に取り組んだ。

 具体的には、グループ会社の提供するクラウドである「J-OSCloud」においてOpenStackが採用された。オープンなプラットフォーム、標準化されたアーキテクチャを採用し、データセンターの仮想化やビッグデータ解析基盤の整備に取り組むことで、新たな価値の創出につなげる狙いだ。

 同社がとくに重点を置いたのは、各地の製造拠点のデータセンターの統合だ。渡邉氏は「災害時のBCPを考慮して、データセンターを東西に分散。分散したデータセンターをネットワーク仮想化技術により、あたかも一つのデータセンターであるように統合した」と語る。

 データセンター内のハードウェアをOpenStackにより抽象化することで、今後、性能のよいハードウェアに柔軟に載せ替えられる「リソース最適化/プラットフォームフリー」もポイントだ。また、自動化技術を駆使したガバナンス/ITサービス管理もあいまって、24時間、365日体制で稼働する工場のITインフラとして、可用性と信頼性の高いデータセンターを実現した。

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JFEスチールが描く統合データセンターの将来像

 これらの構想を実現するプライベートクラウドを、OpenStackを使い、IBMとともに開発した。OpenStackの導入に際しては、VMwareなどのハイパーバイザーをコントローラーにする非依存型も検討されたが、「スピード感をもって変更可能なインフラにするためには、ベンダーに依存しない標準的なアーキテクチャを構築する必要があった」と、VMwareのハイパーバイザーすら介さない、ベンダーフリーの仮想化環境を実現した。

 渡邉氏は「スピード、コスト、品質、オープン性を高め、戦略的IT活用によるグローバル鉄鋼サプライヤーをめざしていく」と今後の抱負を語った。

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NTTドコモはネットワーク仮想化にOpenStackを活用

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NTTドコモ
ネットワーク開発部 担当部長
深江 誠司 氏
 SDNを中心とした「ネットワーク仮想化」に注目が集まる中、IT部門にとって関心が高まっているのが、仮想化技術を使い、汎用サーバ上でネットワーク機能を実現する「NFV(Network Functions Virtualization)」だ。

 NTTドコモは、通信ネットワークのさらなる効率化と、災害時に「いつでもつながる通信インフラ」の両立をめざし、OpenStackによる仮想化技術の活用を推進した。

 同社 ネットワーク開発部 担当部長の深江 誠司氏は、仮想化技術導入のポイントについて、「ハードウェアの物理的な構成にとらわれないため、ハードウェアの効率的な利用や柔軟な運用が可能になる点」を挙げた。スマホの普及によるさらなるトラフィック増大に対応し、震災時などに高まるリクエストにも対応できる安心感を提供するためには、仮想化技術の活用が欠かせなかったのだ。

 具体的には、ネットワーク仮想化にOpenStackを活用し、異なるベンダーを複数組み合わせ仮想化レイヤー上にハードウェアを自由に構成できるようにした。

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複数ベンダーの組み合わせによるメリットの最大化

 メリットは大きく4点ある。1点目が「ネットワーク設備の経済性向上」だ。汎用ハードウェアを用いることでCAPEX(設備投資コスト)やOPEX(運用コスト)が低減できる。

 2点目が「混雑時のつながりやすさ向上」だ。ネットワークにトラフィックが集中し輻輳すると、規制がかかりつながりにくくなる。ネットワーク仮想化により、ハードウェアの上限に達しても、リソースプールにソフトウェアの容量を自動で追加できる。

【次ページ】5G時代に向けて約75%のネットワークを仮想化する
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