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  • 2017/06/28 掲載

モノのインターネットの「モノ」とはそもそも何か?ガートナーが「極める方法」を解説

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「IoT=モノのインターネット」は、データのあり方やその活用方法を大きく変える。リアルタイムで生成、集積、分析され、次のアクションのトリガーとなる無数のデータが、ビジネスだけでなく社会や生活すべての変革を加速していくことは間違いない。だがそもそも、「モノのインターネット」のモノとは何か? データとの関係はどうあるべきか? ガートナー リサーチ部門 リサーチ ディレクター マイケル・パトリック・モラン氏が解説する。
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モノのインターネットが扱うデータは従来のデータとまったく異なる
(© chombosan – Fotolia)


※本記事は、「ガートナー データ&アナリティクス サミット2017」の講演内容をもとに再構成したものです。

モノの情報端末化がビジネスプロセスを劇的に加速する

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 登壇したモラン氏は「まず、IoTの「モノ」とは何か。またなぜそれらを極める必要があるのかということを見ていこう」と切り出した。

 現在のモノあるいは製品は、原型=マスターに基づいて作られる。たとえば、電気部品のサーモスタットを製造する場合、マスターとなるモノが最初にあって、その設計やデザインをもとに、同一の製品が製造されていく。たとえ100万個の単位で作られる場合でも、それは変わらない。

「だがモノのインターネットの世界では、一つひとつのサーモスタットは同じものではない。個々のサーモスタットが生成しているデータがビジネスプロセスにとって重要であるとなれば、一つひとつのサーモスタットのレベルで、それらの情報を個別に把握していく必要がある」

 今度はそうした単独の製品ではなく、企業で使われているさまざまな機器や装置などの「モノ」を考えてみよう。たとえば、ある建設企業がショベルカーを所有していたとする。その建機の置かれている場所や、運用・保守の状況といった情報は、紙ベースの運用レポートやメールによる点検報告などの形で収集され、EAMやMROソリューションによって集約・管理されている。

 「だがIoTの登場で、このデータのあり方は劇的に変わる」とモラン氏は指摘する。車体のあちこちにセンサーを取り付け、IoTのエッジデバイス(情報端末)となったショベルカーは、無数のデータをリアルタイムで生成していく。そうなれば、これらのデータを直接管理ソリューションによって捕捉することが可能になるからだ。

 もちろんショベルカーだけではない。トラックや列車のような運輸機械、航空機のタービン、さらには風力発電のタービンなどでも同じことが可能になってくるという。そうなれば、データを利用したビジネスプロセスの効率は、飛躍的に向上することは疑いがない。

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企業の枠を超えた相互運用が求められるため、企業内の課題は小さく見える
(出典:ガートナー)


所有からサービス利用へと「モノのモデル」に変化が起こる

 IoTがもたらす変化について、モラン氏はもう1つの側面から見るべきだと示唆する。その変化とは、前章で触れたような大量かつ複雑な機器へのIoT導入が急速に進んでいくと、やがてそのスケールメリットが、モノの所有者や運用者からメーカーへとシフトしていくことだ。

「ガートナーでは、IoTの採用によって2020年までに、エンドユーザーの資本資産に対する支出の25%が、『調達して保守するモデル』からサービスモデルへと再配分されるという仮説を立てている」

 IoTによって、たとえば商用の航空機タービンならば、運転中の機器の状態や、運転時間に基づく部品交換時期、そして燃焼温度の異常といったモノの情報を、機器に取り付けたセンサーから、ネットワークを介して、メーカーがすべて直接把握できるようになる。その結果、ユーザーは機器のメンテナンスコストを自社で負担する必要がなくなってくる。

 つまり、これまでのようにタービンを調達し、使用期間を通じた補修費用や人材の手当、施設コストなどを負担することなく、メンテナンスはすべてメーカーに任せて、自分たちは“利用”するだけで済むようになる。モラン氏の言う「再配分」とは、こうしたオンプレミスからクラウドへの移行がもたらすコストメリットを指している。

「おそらく将来的には、所有・運用ではなく、単純に航空機タービンの推進力だけを消費するサービスモデルに移行していくことになるだろう。メンテナンスなどのコストは、自社のP/LからメーカーのP/Lへと移り、経済的にも劇的な変化がもたらされることは間違いない」

原子と分子の両レベルからモノの複雑性を把握していく

 「IoT=モノのインターネット」に取り組むためには、従来のデータとは異なる、IoTならではの観点がいくつも必要になってくる。その1つが、「モノの複雑さ」だとモラン氏は指摘する。たとえば、航空機のタービンをIoTの視点から見ていく場合、原子と分子の両レベルでデータを見ていく必要があるというのだ。

「たとえば航空機のエンジンは無数の部品の集合体であり、その部品一つひとつからもデータは生まれてくる。エンジン全体のデータとは別に、タービンのブレード一枚いちまいからもデータは生成される。ブレードだけではない。燃焼室や燃料制御ユニット、燃料ポンプなどさまざまな部品を、個別に把握していかなくてはならない。エンジン全体という分子レベルから、個々の部品という原子レベルまで、さまざまな粒度でデータを把握していく必要があり、しかもこれらすべてがIoTでは重要なのだ」

【次ページ】IoTデータがもたらす新たなビジネス創出の3つの可能性

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