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2017年08月16日

経済財政白書で読み解く、日本企業が「生産性が向上しない技術」ばかり導入する現実

今ほど「生産性」という言葉が注目を集めている時代はないだろう。生産性の向上は働き方改革の中核として位置づけられており、今年の年次経済財政報告(経済財政白書)でも主要なテーマとして取り上げられた。白書では、AI(人工知能)やクラウドといったテクノロジーが生産性にどう影響するのかについて分析を行っているが、非常に興味深い結果が得られている。日本企業はこれからどのようにテクノロジーと向き合えば、生産性を高めることができるのか、有益なヒントが散りばめられている。

執筆:経済評論家 加谷珪一

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日本企業はなぜか「生産性が向上しない」技術ばかりを採用している

(出典:いらすとや)


新しいテクノロジーが生産性を向上させるメカニズム

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 一般的にAIやIoT(モノのインターネット)、クラウドといった新しい技術が導入されると企業の生産性は向上すると考えられている。生産性は生み出した付加価値を総労働時間で割ったものなので、生産性を引き上げるためには、付加価値を増やすか、労働時間もしくは労働者の数を減らせばよいということになる。

 新技術の導入によって総労働時間が減るという波及経路は非常に分かりやすい。これまで人手に頼ってきた業務をAIなどが代替すれば、その分だけ短時間労働で済むことになり、式の分母が減って生産性が向上する。日本ではIT化の影響というと、こうした「効率化」がイメージされるケースが圧倒的に多い。

 だが、新技術導入の効果はそれだけではない。生産性の式の分子、つまり企業が生み出す付加価値そのものを増大させることで生産性を高めるというメカニズムもある。

 IoTはそのよい例だが、技術の導入によって業務プロセスが最適化されるだけでなく、これまでに存在しなかった新しい製品やサービスが生み出される。

 米GE(ゼネラル・エレクトリック)や独シーメンスが取り組んでいる製造業のIoT化は、納入した製品をリアルタイムでネットに接続することによって、機器類の運用を含めた総合的なサービスを提する試みである。つまり製造業のサービス業化であり、新技術によって新しい付加価値が生み出されたと考えてよい。

 現実には、両者を完全に分けて考えることは難しく、技術の導入で既存の業務プロセスが効率化するメカニズムと、新しい付加価値が生み出されるメカニズムが同時並行で進むことになる。結果としてイノベーションのマネジメントが上手な企業は、継続的に業績を拡大できるわけだ。

日本企業の生産性が低い理由はITと技術の活用方法

 ところが多くの日本企業では、生産性に関してかなりの苦戦を強いられている。日本の名目労働生産性は38.6ドルとなっており、先進諸外国と比較すると著しく低い(OECD調べ、2005年から2013年までの平均値)。米国は58.4ドル、ドイツは60.2ドル、フランスは60.3ドルなので日本の1.5倍もある。

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(クリックで拡大)

主要先進国の「名目労働生産性」の水準


 白書では日本の生産性の低さについて、IT資本装備率とTFP(全要素生産性)が大きく影響していると分析している。簡単に言ってしまえば、日本企業はIT投資に積極的ではなく、しかも、こうした投資をうまく付加価値増大に結び付けられていない。

 日本の製造業における1人あたりのIT投資金額は約3500ドルだが、米国は7000ドルを超える。非製造業ではさらに差が拡大し、製造業と同じく7000ドル台の米国に対して日本の非製造業は2500ドル程度まで落ち込んでしまう。以前から指摘されてきたことではあるが、ITによる業務プロセスの標準化が進んでいないため、あちこちでムダが発生しており、これが生産性を引き下げている可能性が高い。

 こうした状況下では、いくら残業を減らそうと努力しても、うまくいかない可能性が高い。業務プロセスそのものにムダがあり、システム化以外に解決の手段ない場合には、現場の努力でできることには限界があるからだ。

 ITの導入が進まず、業務プロセスの合理化もままらない状況では、次のステップであるITを活用して新しいサービスを生み出すというところまではとても手が回らないだろう。

【次ページ】「効果が小さい技術」ほど積極的に導入する隠れた理由

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