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  • 2017/11/28 掲載

職場でも家庭でも役に立たない「#うちのインティライミ」を撲滅する方法

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Twitterで、ハッシュタグ「#うちのインティライミ」が沸騰している。人気ドラマ「コウノドリ」の中で、俳優のナオト・インティライミ氏が出演、そこで発したセリフが、世の母親たちの逆鱗に触れ、「公開処刑」さながらの「うちのインティライミ大発表会」が始まったのだ。議論のテーマは「夫による『家事育児手伝う』発言」。基本的には善意の言葉である「手伝う」がなぜ相手に違和感、不快感を与えるのか? そこには、職場においても慎重に取り扱うべき「手伝う」と「任せる」の心理学についての学びがある。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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#うちのインティライミは家庭・職場から撲滅できるのか?
(画像:いらすとやの画像を編集して使用)


「オレも育児手伝うよ」が広げた波紋

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「オレも育児手伝うよ」

 これは昨今の世相を表す名(迷?)ゼリフだった。

 人気ドラマ「コウノドリ」の第一話および第三話である。このストーリーの主人公は、高橋メアリージュン氏演じる育児ノイローゼに苦しむ妻であり、ナオト・インティライミ氏の役は、その夫で子どもが生まれたばかりの父親だ。その彼が、この非常に無神経なセリフを発した。

 育児は想像をはるかに超える大変な仕事だ。子どもを産んで主婦になることを選ぶ女性もいるが、早く会社に復帰して活躍したいと切に思う人もいる。その一方でプレッシャーとなるのが、親や同僚など、世間が発する、やんわりとした「女性はやっぱり子どものそばにいるべき」という価値観。

 産む前は、あんなに楽しみにしていて、あれだけ欲しいと思っていた子どもなのに、いざ産んでみると、子育ては心の負担でしかない。むしろ社会的な自己実現を妨げる「壁」に見える。

 こうした子どもを持つ女性の声を象徴するかのように、メアリージュン氏はクライマックスとなる場面で「子どもがかわいく感じられない」というセリフを発した。

 社会通念上、幼い子どもを持つ親は、絶対的にそんな発言をするべきではない。しかし、育児の現実とは、ありとあらゆる心理的プレッシャーと体力的消耗の連続である。もちろん子どもがかわいいと感じる瞬間はたくさんあるが、それを超えて有り余る疲労がセットになっていることを、現在子育てをしている筆者自身も知っている。

 「子どもがかわいく感じられない」の言葉は、疲労感と不安のなかで、ふと心のなかに生まれる。同時に、本当にそれを口にしてしまうと、自分は親失格、いや人間失格となってしまうのではないか、という恐怖が沸き起こる。

 「子どもがかわいい」と思いたいのに、そう思えなくなる自分の心。本作においてはこの「本音」と「恐怖」の相剋の描き方にリアリティがあった。

 そこで妻が切実に求めるのは、ともに「子育て」という重大任務にあたる、「もう1人の当事者」であるはずの「夫」の活躍である。

「手伝う」=「それはオレの仕事ではない」

 「オレも育児手伝うよ」という発言は、絶妙だ。

 「手伝う」という表現は、「その労働は本来自分の仕事ではないが、私がやってあげる」という「善意」によって成り立つ。言い換えれば、夫が持って当然の子育てに対する「当事者意識」が、綺麗さっぱり存在しないことを表現している。

 さらにドラマのなかでは、「オレも育児手伝うよ」が口先だけでは言う夫は、妻の苦悩に気づきもしない、指一本も動かさない。

 現実に、こういうことがあったそうだ。Twitterで「#うちのインティライミ」のハッシュタグを見せられた夫が、「世の中こんなひどい人がいるんだね」と一緒になって憤慨した。しかしその彼もまた、「家事育児を手伝うとは、口先ばかりの、何もしない夫」だった・・・。

 これはまだいい方で、このハッシュタグに対する一連の反響を見ても、「え? 何が問題?」と論点を理解できない男性もまだまだいる。

「手伝うよ」は相手を失望させるだけ

 このように口先だけの「手伝う」は、当事者同士の信頼関係に大きな影を落とす。では、どのような状況であれば、「手伝う」の善意が、善意として成立するのだろうか?

 それは実は、「自分の仕事を、自分が大変なときに、助けてもらった」という状況でしかない。それ以外は、いかなる場合に発しても効果を発揮しない、言うなれば「地雷原ワード」なのであった。

 メアリージュン氏が演じた女性は、「子を持つという幸福を手にした人=子育てという自己実現の達成」という周囲からの認識と、「仕事に無事に復帰できるだろうか、子育ては問題なくやれるだろうか、という不安」に引き裂かれていた。

 そこで、まごうかたなき子育て当事者であるはずの夫からのまさかの「手伝うよ」発言。失望と孤独の地獄に突き落とされるような感覚だ。

 これは、あらゆる人にとって対岸の火事ではない話である。

 家事育児の場だけではなく、ビジネスの現場たる職場においても日々発生している。とりわけ、上司と部下の関係性においては極めて慎重になるべき問題である。

 現場で困難に直面している担当者に対して、はるか後方から届く「何かあったら手伝うから、遠慮せずに言ってね」という上司の空手形。そこに発生する「それじゃない感」は、多くの人が経験したことがあるのではないだろうか?

【次ページ】家庭と職場の敵「#うちのインティライミ」を撲滅するには

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