- 会員限定
- 2018/11/14 掲載
金と名誉で「チームのやる気」に火は付かない
火をつけるには「3要素」が必要だ
個人的な体験で恐縮だが、先日、とあるキャンプ場で薪ストーブに火をつける経験をした。
アウトドアにまったく縁がない筆者は、手際よくやれば、ものの1時間で起こせるような作業に2時間も3時間も格闘したのだった。着火剤があり、薪があって、手順通りに組み上げて点火する──。理屈通りやっているはずなのに、なかなか火が薪に移らない。ようやく火がついたと思って安心していたら、すぐに鎮火してしまう。あれこれいじり回すうち、不完全燃焼を起こして白い煙がもうもうと舞い上がってしまう。
私は理論に従い、燃焼の3要素を揃えているはずだった。着火剤もあれば、薪もある。もちろん酸素もある。しかし火がつかない。そこでふと、キャンプ場のインストラクターが話していた言葉が脳裏をよぎった。
「薪は、ただそこに並べて火をつけても、絶対におきませんから。しっかり組み上げて、酸素が流れるようにしてくださいね」
初心者の筆者が並べた薪は、どうひいき目に見ても不細工で、火が着きそうな感じのしない、いかにも素人然としたものだった。燃焼の3要素とは、そこに並べただけではだめで、燃焼が起きるためには、それを起こす必然的状況を作り出す必要があるのだった。
そんなことを思いながら、どうにかして無事に火は起きて、一息ついた私は、チームビルディングにおいてもまったく同じことが言えるのではないかと気づいたのだった。
でも3要素だけで火はつかない
薪ストーブ体験において、ビギナーは最初、こう考える。・可燃物:薪
・酸素:そこらじゅうにある
・点火源:マッチや着火剤
これは決して間違いではないが、正しい理解とはいえない。
まず、問題なのは酸素だ。燃焼が継続するためには酸素がうまく供給され続ける必要がある。そこで、ストーブ内部の排気路をあらかじめ温めておいたり、扉をあけていい具合の隙間を作り、鋭い風を送る、という仕掛けを工夫するのだ。「空気がそこらじゅうにある」だけでは十分ではないのだ。
薪はもっと大事である。薪は可燃物としての役割を果たすが、これを「組む」ことによって、酸素の流れを作ることが肝心なのだ。そして着火剤、これが燃焼の出だしを担うが、これは早々に役目を終える。着火してからは「引火点以上の温度」を継続しないといけない。継続の主体は、燃焼の当事者である薪自身だ。
こう考えると、燃焼の3要素を実効的なものにするには、現場でちょっとした発想の転換が必要だということがわかる。「燃焼に必要なもの」を考えてみるとこうなる。
・薪:可燃物であり、酸素供給、引火点以上の温度維持(3要素のすべてを担う)
・マッチ&着火剤:引火点以上の温度提供(3要素の出だしを担う)
・ストーブ:酸素の通り道、可燃物の把持(3要素を実現するための外的環境)
不完全燃焼なチームとは?
翻って、心に火のついたチームをつくるにも「燃焼の3要素」が必要だ。いいチームは、モチベーションが高く、仕事自体を楽しむものだ。難しい仕事をクリアすること自体が次の仕事へのモチベーションになる。アイデアや貢献が自律的、自発的に生まれて、その場にいること自体がワクワクする体験になる。つまり、心の完全燃焼が起きているのである。
しかし、多くの職場では「心の不完全燃焼」を起こしているのではないだろうか。
・可燃物:人(スキルや知識など)
・酸素:報酬(金、名誉、成長など)
・点火源:モチベーション
このように整理すると、なぜ職場が盛り上がらないかが見えてくる。
【次ページ】「3要素」を揃えるだけでなく「統合」する視点が重要
関連コンテンツ
PR
PR
PR