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- 2018/12/25 掲載
さっと読んでざっくり理解する「カスタマーサクセス」
ベンダーが「カスタマーサクセス」にたどり着くまで
この提供形態の変化は、ソフトウェア提供におけるベンダーとユーザーの力関係の変化を引き起こした。
SaaSの多くが採用する月額制の最大の特徴は、顧客がいつでも契約を解約できることだ。SaaSのパイオニアであるセールスフォースは、2006年当時、月に8%の解約が発生していたという。これは、1年の間に新規顧客獲得がなければ、まるごとすべての顧客が消えてしまう数字であった。
幅広いユーザーに利用してもらって利益を得るために月額制のビジネスモデルを採用したのに、これではまったくの逆効果である。こうした発想から生まれたのが、「カスタマーサクセス」の考え方だった。
「カスタマーサクセス」の3つのポイント
「カスタマーサクセス」とは、良いプロダクトが顧客の事業に貢献し、それが次の商談機会や成長機会につながる、そんな成長サイクルを生み出そう、という意味だ。これは、単純に「良いものさえ作れば顧客はついてくる」という牧歌的な話とは少々違う。「顧客満足」とも違うし、「お客さまは神様」といったスローガンともまったく違う。その違いは、次の3つのポイントにまとめられる。
- (1)製品保証のためにやむなくコストを割く“サポート”活動ではない。
- (2)無限に広がる顧客の要望に応え続ける“業者的な”活動ではない。
- (3)個別の顧客に対して個別の販売員や対応要員がコツコツと対応する"労働集約型"の業務ではない。
以下、筆者自身の体験をベースに、各ポイントについて説明しよう。
カスタマーサクセスは自発的なもの
まず、(1)について。“サポート”というと「製品の使い方が分からない」「使っていたら壊れたので修理してほしい」「不満足である」などといった内容の電話やメールに対応するもの、というイメージがある。カスタマーサクセスも同様に「不満足をなくす」「マイナスをゼロにする」ものだと考えたら大間違いだ。サポートとは、受け身なものだ。製品を使っていなかったり、期待を失っている顧客からすると、まったく無用の長物だ。不満をぶつけてくる顧客は製品を使っていて、または使おうとしていて、製品に対し積極的な姿勢を残している顧客なのである。
SaaSにとってのリスクは、無言で去っていくサイレント・マジョリティだ。このリスクはプロアクティブな活動によってしか取り除くことはできない。よって、カスタマーサクセス活動は「受け身」であってはならないのだ。
イエスマンベンダーはカスタマーサクセスにコミットしていない
次に、(2)について。人間はあるモノを手にした瞬間、それが「当たり前」になってしまう。いかに最新鋭のSaaS製品だといっても、完全無欠な製品はこの世に存在しない。使ってみて初めて、足りない機能に気づくこともある。競合製品にはあって、こちらはないところも目につく。人の欲望は無限だが、開発リソースは有限である。イエスマンベンダーになりきって顧客のニーズに永遠にこたえ続けようとすると、いつかどこかで破綻が生じる。もちろん、徹底的にニーズに向き合うことは大事だが、「いまここ」でそれがニーズが満たせるわけでもない。ではどうするべきか。
【次ページ】「カスタマーサクセス」の取り組みが抱えている課題
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