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  • 2018/03/13

ITビッグ5のxR戦略 マイクロソフトの難題、フェイスブックの進歩、アマゾンの企み

連載:シリコンバレー発 米テックレポート

xR(AR/VR/MR)分野を取り巻く勢力図に2017年、大きな変化が見られた。もともとxRの先行者はグーグルとフェイスブックだった。だが2017年、この分野に最も貢献したのはアップルだったと、どのメディアもいう。グーグルはそのキャッチアップに追われているという見方だ。xR技術をサービスに導入しはじめたオキュラスとフェイスブック、ロケットスタートを目論むマイクロソフトの動きも見逃せない。さらにビッグ4での後方では、アマゾンが虎視眈々とチャンスを狙っている。2017年のITビッグ5の動きを追いながら、その思惑を読み解く。

富士通 米研究所リサーチャー/知財部門 山田 世智

富士通 米研究所リサーチャー/知財部門 山田 世智

早稲田大学法学部卒。富士通株式会社に入社し、テクノロジーソリューション分野における知的財産マネジメント・契約業務に従事。特許出願動向調査に関連して、変化が速い最新テクノロジートレンドの調査も担当。現在は世界的なイノベーションの発信地の一つであるアメリカ、シリコンバレーにある富士通グループの研究所、Fujitsu Laboratories of America, Inc.に赴任。次の世界的イノベーションの種やその誕生プロセスを捉えて、将来の機会に変えるべく日々活動中。これまでのレポーティング業務による、半導体からAI、クラウド、3Dプリンタ、サイバーセキュリティ、量子コンピュータなど幅広いテクノロジートレンドの動向把握と、特許視点での調査分析が強み。表面のトレンドやメッセージの裏にある、「本質を捉える」ことをつねに重視する。

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2017年、フェイスブックでは3つの大きな変化があった。ほかのビッグ5の動きも見逃せない
(出典:フェイスブック)


先行者のアップル、iPhoneにAR機能搭載で本格進出へ

 アップルは実はグーグル glassの発表時点から既にARやスマートグラスに対して長年注目していた企業だが、関連製品や機能の発表はこれまでなかった。しかし、2017年6月のWWDCと呼ばれる同社のディベロッパー向けカンファレンスで「iOS11」にAR機能を搭載することを発表し、いよいよ本格進出を始めたところだ。

 同年9月に、アップルはiOS上でARを実現するフレームワーク「ARKit」の提供をはじめ、ARソフトウェアの開発者たちにとって最も巨大なエコシステムを提供した。調査機関UBSによれば、アップルの iPhoneは今も世界で8億台ほどアクティブに使用されている。その巨大マーケットにディベロッパーがアクセスできるのは大変魅力的だ。

 なお、対象となる端末は、ARアプリケーションがiOS 11以上にアップデートした対応端末(5S以上で動作可能、しかし、開発のための「ARKit」は6S以上のグレードの端末でないと使用できない)であり、すべての端末というわけではないが、それでも、十分な規模だろう。

 これらの開発や投資体制としてアップルは、xR分野に強いイスラエルにおいて投資と研究開発の拠点を置き、1,000人以上のエンジニアが開発を続けているという。このような技術を活用して、iPhone Xに搭載されたような、3Dカメラによる奥行きの検知や、顔認識技術なども実現している。

 また、今後もスマホARだけとは考えていないようだ。アップルは、ARスマートグラス開発企業を2014年ごろから買収をはじめており、独自のスマートグラスの開発も続けていた。ただし、クックCEOによれば製品として出すにはまだ不十分として見送っているとのことだ。アップルはウェアラブル製品のApple Watchも5年近い歳月をかけて慎重に研究開発を進めながらリリースした。そのスパンで考えるとアップルの目指すスマートグラスの誕生にはもう少し長くかかると思われる。

 一方、ARと比べてVRの分野ではそれほど表に大きな動きは見えない。もちろん、VRデバイス関連の特許出願はされており、研究開発は行っているようである。しかし当面はARに注力し、魅力的なプロダクトとソフトウェア、開発環境を提供し、ユーザーを魅了するプラットフォームにし続けることが彼らの戦略だろう。

 課題としては、ARKit自体の機能で平面、明るさ、実物スケールの3次元認識などある程度できるものの、その空間情報を記憶して後で読み込んだりできない点や、深度センサーなども付いていないので精密なモーション認識/物体の検出などもできない点、通常のアプリに比べバッテリー消費が激しい点などが挙げられる。

 今後も研究投資してハード、ソフトともにプラットフォーム基盤を充実させていくこと、そして、コンシューマーへのリーチに加えて、エンタープライズ分野への攻略をディベロッパーを通じてどう攻略していくか、が鍵となるだろう。

スマホAR/VRでエコシステム構築を狙うグーグル

 グーグルはAR分野で先行していたが、エコシステム構築においてアップルに初手を取られ、対応を急いだ形になった。グーグルのAR技術開発は、Google glassのほかにも、米モトローラ買収によって手に入れた次世代スマホの研究チーム「ATAP」の、「Project Tango」の中で進められていた。

 そして2017年初め、一部のハイスペックな新端末に実装しリリースを始めた。これらのテクノロジーはスマホを使って深度センサーによる詳細なモーション認識、現実空間のスキャニング、移動の検知などができ「屋内地図の作成」にも活用できる技術があった。しかし、専用端末にしか実装されず、ユーザーも少数スタートとなった。これがグーグルのスマホARの初手となったのである。

 一方のアップルは、多くのiPhone上でOSを更新するだけで「ARアプリ」を動かせるようにした。この「AR体験の民主化」はグーグルを慌てさせるものだったと推測する。グーグルは、2017年8月、Tangoの機能を削ぎ落し、多くの既存Android端末上でARを実現できる開発フレームワーク「ARCore」をリリース、Tangoのサポートは12月に終了させた。

 これによって、グーグルは、世界で1億台以上の端末でARアプリが動く開発環境を提供できたと発表した。ただしその一方で、さまざまなAndroid端末で動くよう機能を下げた結果、現時点で使える機能はアップルの「ARkit」と比べ、劣るものになった。ARCoreでは、現実世界の長さ、距離、複数の平面の検出ができない。

 VRにおいてグーグルは、ハイエンドVRではなく、簡易なVRの普及を一貫して進めている。VRでの用途を想定してグラフィック解像度を向上させたスマホPixel端末と、対応端末をはさむだけでVRが体験できるヘッドギアDayDreamの開発販売を行っている。Oculusのような高級高解像度のVRヘッドアップディスプレイに踏み込む様子は見られない。

 また、スペックが低くともスタンドアロン(スマホも不要)で動作するVRヘッドアップディスプレイをLenovoと共同開発している。2018年4月ごろに発売が予定されているスタンドアロンVRヘッドセット「Milage Solo」だ。

 
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スタンドアロンのVRヘッドアップディスプレイ、「Mirage Solo」
(出典:レノボ 報道発表)


 グーグルは2017年9月にはHTCのスマートフォン、Pixel開発チームを11億ドルで買収しているが同社のVRヘッドアップディスプレイ部門は買収しなかった。この動きからも、グーグルがあくまでAndroidスマホを中心としたAR/VRに注力していることがうかがえる。

 ほかにもグーグルは、2018年にいよいよ初のMR製品がリリースされる米Magic Leapにも5億ドル以上の投資を、系列の投資会社グーグル・ベンチャーズより行っている。高級VR/MRはMagic Leapの動向を見て、当面はARと簡易VRに集中するという戦術なのかもしれない。

 このようにグーグルは既に多くの手を打っている。グーグルとしてはAR/VRという新しいテクノロジーを一般に普及させつつ、その両方をスマホのAndroid端末ひとつで体験できるものにしていこうとしているのだろう。そうすることで、次のプラットフォームへの移動を阻止しつつ、既存のAndroid・スマホエコシステムの充実を促している。

【次ページ】マイクロソフトの難題、フェイスブックの進歩、アマゾンの企み

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