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今年8月に米IDCが「VR(仮想現実)/AR(拡張現実)市場は毎年倍増し、2021年には2150億ドル規模に達する」という予測を発表し、日本でも大きなニュースとなった。この数字はリサーチ会社によりばらつきはあるものの、VR/ARが次世代エンターテイメントの中心となり、さらに教育、医療などの分野でも積極的な伸びを見せることは間違いないようだ。米国ではすでにエンターテイメントの世界で、AR/VRへの投資合戦が起きている。
VR企業ドリームスケープに大型投資
米ハリウッドの注目を集めている企業がある。その名は「ドリームスケープ・イマーシブ(Dreamscape Immersive)」。2016年にできたばかりの会社だが、出資者はスティーブン・スピルバーグ、21世紀フォックス、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、ワーナー・ブラザーズとそうそうたるメンバーだ。
このドリームスケープ社に今年9月、新たな出資者が現れた。全米2位、世界では第一位の映画館チェーンを持つAMCネットワークスだ。人気ドラマ「ウォーキング・デッド」なども手がける同社はドリームスケープに2000万ドル(約22.4億円)を出資、ドリームスケープの「製品」を全米、そして英国に広げたい、としている。
気になるその「製品」とは何か。ドリームスケープはロサンゼルスの西側にあるカルバーシティを本拠地とし、VR技術を用いて「VR体験ができるマルチプレックス」の構築を目指している。複数の映画が見られる映画館は米国で「シネプレックス」と呼ばれるが、こちらは複数のVRを楽しめるVR専門のエンターテイメントセンターだ。
しかし映画へのVR導入はこれまでも行われて来たし、映画館でヘッドセットを使ってVR映画を楽しむこともできるようになった。ロサンゼルスとニューヨークのIMAXシアターではすでにVR映画を上映しており、これまでに5万人以上を動員した。「ボイド」というVR製作会社はウォルト・ディズニー社と提携してディズニーモールでディズニー映画のVR体験を提供している。
なのに、なぜドリームスケープのVRがこれほど注目を集めるのか。スイスのアルタニム(Artanim)社が開発したVR技術を活用しているという、このVRは、単なる映像のVR化ではなく、最大6人までが1つのVR体験を共有し、参加者のアバターによってコミュニケーションをとりながら同じVR世界を体験できる」という点に特徴がある。
つまり個人的な体験としてのVR映像ではなく、友人らとともにそこに入り込んでの冒険が可能になるのだ。
既存エンターテイメントを超えたまったく新しい体験
AMC社のCEOアダム・アーロン氏は今回の出資について「単なるビデオゲームや映画の延長を抜け出した、まったく新しい体験としてのVRこそ消費者が待ち望んでいたものだ」と語る。
この体験を広げるため、AMCはドリームスケープのマルチプレックスを今後18ヶ月以内に米国内に最低6か所設置する、という。
うち数カ所はAMCの既存の映画館に含まれる形で、また数カ所は独立したVR専用のマルチプレックスとする。第一号となるのはやはりロサンゼルスのセンチュリーシティ・ショッピングモール内になるという。
VRを使ったゲームセンターなどは過去にも例があるが、成功した、とは言い難い。その理由についてドリームスケープ社のパークス・ウォール氏は「ゲームにしろ映画にしろ、360度のビューがあるだけで視聴者は単なる見物客にすぎない。映画にしてもVRを導入したことでストーリーが変わるわけではない。VR体験を左右するのは自分が体験できその中に入り込める、という要素だ」と説明する。
同社のVR体験はまだプロトタイプの段階で、9分間ほどの短いものだ。しかし、その中では利用者が「主役」であり、一緒に体験する人々の間でアバターを通してオブジェのやり取りをしたり、という実際の体験に近いものを楽しめる。9分間の作品の制作費は150~200万ドル程度だという。
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