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  • 2018/10/04

自民党提言の「中央省庁再編」、厚労省分割は本当に必要か

自民党行政改革推進本部の甘利明本部長は、中央省庁の再編を促す提言を安倍晋三首相に提出した。生産性の高い政府の実現に向け、通信や農林水産業など12の政策分野にわたる課題を列挙した内容で、焦点となった厚生労働省の分割については政策の一体性や業務量などを踏まえた検討が必要としている。1府22省庁体制を1府12省庁に再編して17年、行政機構の点検は欠かせないが、厚労省分割には賛否両論がある。慶應義塾大経済学部の土居丈朗教授(公共経済学)は「(業務が過大になった)厚労省の問題は閣僚や副大臣の増員など別の方法で対応できるのでないか」とみている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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2018年 自民党総裁選に投票する安倍首相と甘利氏
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

厚労省分割は業務量を踏まえた検討を提言

 「行政組織の見直しは統治機構の根幹に関わる。不断に見直す必要がある」。自民党総裁選で3選を果たした安倍首相は、首相官邸で甘利本部長から提言を受け取り、3期目の課題として検討をする考えを示した。

 提言の主なポイントは

  1. 内閣府、厚労省、文部科学省に分かれる子育て政策を一体で推進する官庁が必要
  2. 文化やスポーツ政策を推進する行政組織の必要性を検討する
  3. 内閣官房と内閣府のスリム化を目指す法案を2019年通常国会に提出できるよう目指す

――など。

 焦点に浮上していた厚労省については、「統合の相乗効果が見られるところとそうでないところの差が大きい。政策の方向性や業務量などを踏まえた検討が必要」と述べるにとどめている。

自民党行政改革推進本部の主な提言
厚生労働省に統合の相乗効果が見られるところとそうでないところの差が大きい
内閣府、厚生労働省、文部科学省にまたがる子育て政策を一体で推進する官庁が必要
統合的に文化、スポーツ施策を推進する行政組織の必要性を検討
内閣官房と内閣府のスリム化に向けた法案提出を目指す
(出典:自民党行革推進本部)


 自民党では2016年、小泉進次郎代議士ら若手議員で構成する2020年以降の経済財政構想小委員会が厚労省の分割案と2大臣制の検討を柱とした提言を行った。分割は政策テーマによって、社会保障、子ども子育て、国民生活の3省にする2とおりの分割案と、社会保障、国民生活の2省に分ける計3案を提示している。

自民党2020年以降の経済財政構想小委員会の中間提言
●厚生労働省の分割・新省設置
1案:社会保障(年金・医療・介護)、子ども子育て(少子化対策・子育て支援)、国民生活(雇用・再チャレンジ・女性支援)に3分割
2案:社会保障(医療・介護)、子ども子育て(少子化対策・子育て支援)、国民生活(年金・雇用・再チャレンジ・女性支援)に3分割
3案:社会保障(年金・医療・介護)、国民生活(少子化対策・子育て支援・雇用・再チャレンジ・女性支援)に2分割
●2大臣制の検討
(出典:2020年以降の経済財政構想小委員会)


 党内には小委員会の提言を支持する声がある一方で、厚労省分割に対する慎重論も根強い。行革推進本部での意見集約が自民党総裁選と時期が重なったこともあり、総裁選で争点化するのを避ける思惑から、厚労省分割に踏み込まなかったもようだ。

 自民党がこの時期に省庁再編を議論したのは、内閣と官僚の関係がぎくしゃくしてきたことが影響している。モリカケ問題では、官僚から内閣に不利な情報が相次いでマスコミに流れた。地方創生でも中央省庁の地方移転に官僚が公然と抵抗している。このため、官僚が動揺する省庁再編を議論することで官僚を抑えようとする思惑があったとみられる。

厚労省の業務が増え、国会審議にも影響が

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 現在の1府12省庁体制は、1996年にスタートした橋本龍太郎内閣で議論が進み、森喜朗内閣時代の2001年に発足した。戦後初の本格的な省庁再編で、政治主導の政策決定を旗印に縦割り行政の弊害を排し、組織をスリム化する狙いがあった。

 その結果、従来の1府22省庁が一気に半分近い1府12省庁となったが、これに伴い巨大官庁が生まれた。旧建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁が合併した国土交通省、旧総務庁、郵政省、自治省を一体化した総務省、旧厚生省、労働省による厚労省だ。ともに大臣官房を含めて10以上の局を抱えている。

 中でも厚労省は社会保障、高齢者福祉、感染症対策、子育て支援、働き方改革など幅広い業務を所管するようになった。しかも、人口減少や高齢化という時代の変化の中、国を挙げて対処しなければならない重要案件が多い。

 厚労相は2015年の通常国会で300時間以上の委員会審議に出席し、国会答弁も3,000回に及んだ。他の大臣に比べ、突出して多い数字だ。衆参両院の厚生労働委員会は審議案件が重なり、重要法案の成立が遅れたこともあった。

 厚労省の予算規模は約32兆円に達し、国債費を除いた一般会計支出の約4割を占める。業務量の増加に本省定員が追いつかず、職員の残業時間は霞が関の官庁で最も多い。このため、厚労省分割が焦点に浮上したわけで、自民党小委員会は現状を「1人の大臣、1つの役所で所管するのが困難」とみている。

【次ページ】省庁細分化で心配な縦割り行政の弊害

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