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  • 2018/10/19

Improbable(インプロバブル)にソフトバンクらが5億2000万ドル出資、一体何の会社?

英国を拠点に活動するオンラインゲーム開発会社のImprobable Worlds(インプロバブル・ワールズ)。同社が提供するプラットフォーム「Improbable」は、ゲーム業界の枠を超え、社会課題を解決するシミュレーション研究へ応用できると期待されている。すでにソフトバンクなどから5億2,000万ドルの資金調達に成功した同社。“次世代プラットフォーマー”が担う社会的役割とは何だろか。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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Improbableの技術は、ゲーム用途以外にも応用できる可能性を秘めている
(出典:Business Wire)

人数参加でプラットフォームが拡張する?

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 ゲーム市場が活況だ。2018年時点で全世界のゲーム人口は23億人いるとされ、そのうちの46%はゲーム機やソフトを購入、あるいは課金ゲームを楽しんでいる。その市場規模は1,379億ドルに達する。ゲーム市場の51%はモバイルゲームの売上げであり、残りをPCと専用ゲーム機が占めている。 さらに、ゲームをスポーツ競技として捉えるeスポーツや、VR・ARといった新技術もゲーム市場を牽引している。

 人気を集めるゲームの1つにMMO(Massively Multiplayer Online、大規模多人数型オンライン)ゲームが挙げられる。「ファイナルファンタジー」といった名作ゲームを始め、多くの作品がMMOとして開発された。1つの世界の中で、多くの人が同時にオンラインでつながれる仕組みが人気を集めてきた。

 MMOでは拡張性(スケーラビリティ)が大きな技術的課題となる。膨大な人数が同時にゲームに参加すると、サーバへの負荷が極めて高くなる。負荷に耐えられるだけの高性能なサーバを調達するにはコストがかかる。また、昼と夜、平日と休日といった状況に応じて参加人数が変わる場合、サーバへの負荷も変動する。高い負荷に合わせてシステムを設計すると、負荷の低い間に稼働率が下がり、コンピュータ資源が無駄になってしまう。

 システムの能力を要求に応じて柔軟に対応できる適応力がMMOのインフラには求められる。MMOゲームの課題は、システム設計においてよくある課題の1つだ。たとえば、基幹システムも1つのサーバへ同時に多人数がアクセスする。Amazon Web Service(AWS)のような拡張性の高いクラウド基盤が流行したのは、スケーラビリティに対する解法になるからだ。

 ゲーム業界ではImprobableが拡張性のあるクラウド基盤を開発した。「SpatialOS」と呼ばれるプラットフォームが、膨大なユーザーが同時アクセスしても耐えられるPaaS(Platform as a Service)環境を提供する。MMOのように拡張性に対する要求が高いゲームを開発する企業がコンピュータ資源の運用をImprobableに任せ、ゲームのデザインやストーリーに集中できるようになるのがメリットだ。

従量課金のビジネスモデルがもたらすインパクト

 SpatialOSは、1つのサーバですべての処理を行う従来の設計思想とは異なり、「ワーカー」と呼ばれる、ゲーム世界に登場するキャラクターやあらゆるものごとを独立した処理として取り扱う方法を採用した。ゲームに参加する人数が増えれば増加したワーカーを管理できるよう、柔軟に処理能力を上げる。負荷が低いときにはワーカーを起動させなければ計算資源がむだになることもない。

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Improbableの仕組み

 Improbableの価格モデルは、多くのクラウド基盤と同様、従量課金制となる。ワーカーの数やその処理時間、保存したデータの容量、ユーザーに転送したデータ量などに応じて、使った分だけ請求される仕組みだ。

 Improbableの価格設定は近年のオンラインゲームのビジネスモデルが影響している。買い切り型のソフトよりも、定額課金や追加機能に対して課金するサブスクリプション型のゲームが増えてきた。利用者数の増減に合わせ、従量課金のプラットフォームによりコストを最適化できれば、ヒットするかどうか分からない新作を投入するゲーム運営会社にとってリスク低減になる。

 専用ゲーム機でのゲーム開発は、従来、高品質な製品を発表し、大きな収益を狙う「ブロックバスター型」のビジネスモデルが主流だった。しかし、近年は、モバイル環境を中心に優れたアイデアで勝負する小規模なゲームが好まれる傾向が見られる。最低限の機能を開発し、顧客からのフィードバックを受けながら反復的に製品開発を進める「リーンスタートアップ」の波がゲーム開発にも訪れている。

 Improbableのプラットフォームは、リーンスタートアップ流のゲーム開発に向いている。英国Bossa Studiosが開発したゲーム「Worlds Adrift」はその一例だ。 多数のユーザーが参加できるこのMMOは、仮想空間内で飛行船を組み立てて、外の世界を目指すストーリーになっている。このようなゲームでは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)がゲームの重要な構成要素であり、ゲーム開発者とユーザーの共創コミュニティが形成されていく。

 Improbableのプラットフォームは、参加人数の増加に柔軟に対応し、従量課金の仕組みを提供するため、コミュニティ型のゲームに最適だ。さらに、ゲームは作って終わりではなく、長期的な関係構築と考えられるようになっている。ゲームの状況に弾力のある対応がますます必要になるなか、Improbableは需要にこたえているともいえる。

【次ページ】なぜソフトバンクはImprobableに目をつけたのか

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