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  • 2019/04/04

オムロン、PHC、NEC、パナソニックらが激論、IoTは本当に必要なのか

IoT、インダストリー4.0などのキーワードが世間を騒がすが、生産技術者の間では「昔から現場でIoTをやっていた」といった冷めた声も聞かれる。いま本当に現場に求められる技術とは何なのか。先ごろ開催された「Manufacturing Japan Summit 2019」において「IT技術・自動化との共存へ踏み出す 」をテーマに、PHC、オムロン、NEC プラットフォームズの責任者が本音を語りあった。モデレーターはパナソニックの中谷光男氏が務めた。


日本を代表する製造現場におけるIoTや自動化の課題とは何か?

 まずモデレーターのパナソニック ES社 技術本部 イノベーションセンター 主幹の中谷氏が、現状の製造現場におけるIoTや自動化の課題について3社の登壇者に問いかけた。

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パナソニック ES社 技術本部 イノベーションセンター 主幹 中谷 光男氏

 口火を切ったのは、PHCで設計生産プロセス技術部長をつとめる新谷啓司氏だ。同社は、医療機器、ヘルスケアIT、ライフサイエンス事業を中心に展開している企業だ。製品的にはデバイスと完成品の両方を有し、センサー系は大量生産、完成品は多品種少量生産で、両極端の製造技術が必要だ。

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PHC 設計生産プロセス技術部長 新谷 啓司氏

「グローバル化していくなかで、製造ノウハウをどうすべきか、現場の知恵をオープン化し、製造技術・ノウハウを改善していく必要があると考えています。そこでベテランが退職する前に、彼らのスキルをデータ化して継承するテーマにも取り組んでいます。こういった課題をITや自動化で解決できると考えています」(新谷氏)

 オムロンでイノベーション推進本部 SDTM 推進室長をつとめる竹林 一氏は、自社の課題の前に「まずIoTとは何か、という点から問い直したい」と語る。

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オムロン イノベーション推進本部 SDTM 推進室長 竹林 一氏

「経営層はIoTというバズワードで何かやれと言いがちですが、あくまでIoTは手段です。最初から根本的な目的を持っていないと、うわべの言葉で踊らされます。エンジニアにIoTについて聞くと、そんなことは昔からやっていた、ユビキタス、M2M、IoTで何が違うのかと言われます。その本質を理解せずに、会社のなかで議論してもダメだと思います」(竹林氏)

 オムロンにとって、IoTは3つの定義があるという。1つは「プロセス・イノベーションを起こすこと」。製造現場にセンサーを導入し、予兆管理をすれば生産性も向上する。実際に草津工場では、熟練工のライン生産性を30%向上した例があるそうだ。

 2つ目の定義は「プロダクト・イノベーションを起こすこと」。オムロンには血圧計や体重計など多くのヘルスケア製品があるが、その上のサービスレイヤーが重要だ。

 そして3つ目が「オープンデータを出すこと」。ユーザーが欲しいのは、ハードでなくデータだ。データを掛け算すると面白い産業ができる可能性がある。ただし、日本は1番目のプロセスレイヤーは強いが、2番目と3番目が弱い。どのレイヤーでIoT戦略を仕掛けるべきかという点を考える必要がある。

 NECグループのハード設計・開発を行うNEC プラットフォームズでプラットフォームズ 生産本部 甲府生産統括部 生産統括部長をつとめる原田久嗣氏は、主な悩みに「ITと自動化の切り口」を挙げた。

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NEC プラットフォームズ 生産本部 甲府生産統括部 生産統括部長 原田久嗣氏

 甲府工場では、スパコンからIAサーバなどコンピュータ関連機器の幅広い製品を生産している。年間10万台の注文を誇るIAサーバはユーザーの構成がバラバラの多品種少量生産だ。

「自動化するにも会社全体の横串で共通化を貫きたいため、どこを共用化すべきかという課題があります。一方、受発注から生産、出荷までの一元的なサプライチェーン管理は20年前から確立しています。その中で、今後はIoTと自動化をどう組み合わせるのかという課題があります」(原田氏)

 同社では、トヨタ生産方式を基軸にしているが、いま生産ラインにセンサーを付け、現場の課題を発見しようとしているそうだ。IoTから得られる情報から、設備や人の動線などを多角的な視点で捉え、新しい付加価値を見出すことが目的だという。

すでにIoTは進めている企業も多いが、危機感がないという指摘も

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 次に中谷氏は「IoTの導入に生み切ろうとしている段階で壁になるものや、不足するものがあるのか?」と各企業に訊ねた。

 PHCの新谷氏は、オムロンの竹林氏と同様に「工場でIoTといっても前からあるし、単にシーケンサ(PLC)をネットにつないでその後どうするのか?という話になります。その一方で現場の課題を人の想定したものではなく、日々現場で起きている事実(データ)を中心にアプローチを進めなければなりません。まだ十分できていない工程もあります。また、医療機器を製造しているため、品質を重視した4M(Man、Machine、Material、Method)変更管理のトレーサビリティITシステムを構築していますが、どうしても個別最適に陥りがちで、今後、全体最適化(生産管理系の融合等々)を図っていく必要があります」と語る。

 これを受けて中谷氏は「もしIoTが必要ならば、すぐに現場にセンサーを導入すればよいのに、なぜプライオリティ的にIoTが進まないのか」と疑問を呈した。

 これに対して新谷氏は「IoTという言葉が登場しただけで、やっていないわけではありません。IoTが言葉遊びに聞こえるので、あえて我々はそう言わないだけ。それは工場のIT化ですよね、だから従来どおり淡々とやればよいということです。ただインダストリー4.0などが騒がれるなか、どこの国も共通認識として、工場のIT化という同じ切り口の良い事例が他社に発見でき学べることがメリットだと思います」と答えた。

 オムロンの竹林氏は、国内でIoTが進まない理由について、かつてブームが起きた「オープンイノベーション」を例にした。

 同氏は「オープンイノベーションを進めた大阪ガスには危機感がありました。IHオール電化が登場し、ガス不要論が出てきたからです。そこでガスから電気を作る“エネファーム”が登場しました。現在そういった危機感が各社にありません。現状維持で売上が数%あるから、IoTは必要ないという判断になるのです」と指摘する。

【次ページ】もう1つのIoTが進まない理由

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