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  • 2019/06/14

あいりん地区「再チャレンジできるまち」実現へ、官民が取り組み

国内最大のドヤ街として知られる大阪市西成区のあいりん地区(釜ヶ崎)で、労働者の就労支援を進める官民の取り組みが動いている。労働者が仕事を求めて集まっていたあいりん総合センターが閉鎖される一方、JR新今宮駅を挟んですぐ北側の浪速区で星野リゾートの観光特化都市型ホテルが着工するなど、地区を取り巻く環境が大きく変わる中、労働者を置き去りにしない地域づくりを進めようとしているからだ。桃山学院大社会学部の白波瀬達也准教授(社会学)は「地域づくりを成功させるには、労働者が働くことで人間関係を豊かにできるコミュニティーを築く必要がある」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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大阪市中央区のエル・おおさかで開かれた第4回仕事づくり集中講座。
大阪府のハートフル条例を活用した仕事づくりなどが話し合われた
(写真:筆者撮影)

仕事づくりや就労あっせんを官民で

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「仕事が労働者の居場所になる地域に釜ヶ崎を変えていきたい」「仕事の確保には大阪府のハートフル条例(障害者など就職困難者の雇用促進、就労支援条例)活用が有効でないか」。

 大阪市中央区北浜東のエル・おおさか(大阪府立労働センター)で5月末に開かれた第24回釜ヶ崎講座。講師や主催者から労働者の就労支援に向けた提案があった。

 釜ヶ崎講座はあいりん地区の労働者を支援する目的で2001年から開かれている学習会。地区を取り巻く環境が変化してきたのを受け、2018年から仕事づくり集中講座と題して就労支援をテーマに取り上げている。今回は仕事づくり集中講座の4回目で、支援者や福祉関係者ら40人余りが集まった。

 釜ヶ崎講座の渡邉充春代表が過去3回の集中講座について報告したあと、NPO法人釜ヶ崎支援機構の松本裕文事務局長があいりん地区の変化について説明し、「労働者のところに来る仕事は収入アップが見込めるものではないかもしれないが、仕事を労働者の心の居場所にし、地域で見守っていきたい」と訴えた。

 続いて、この日の講師であった大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合の冨田一幸代表理事が4月から施行された府のハートフル条例を紹介し、「この条例を活用することでビルメンテナンスなどの仕事確保が可能になるのではないか。地域や支援団体が共同企業体となって確保に動いてはどうか」とアドバイスした。

 西成特区構想を掲げる大阪市は、労働者の就労支援を進める西成版サービスハブ構築・運営事業を夏ごろにもスタートさせる。就労支援だけでなく、日常の生活支援や孤立防止も進める方針で、2019年度予算に1700万円を計上した。

 サービスハブ事業は生活保護を受ける若年層をターゲットに仕事のあっせんや居場所の提供を進める事業で、地区内の日雇い労働を活用することも検討されている。市が打ち出す西成特区のスローガン「再チャレンジできるまち」を築くのが狙いだ。

 現在、事業委託を受ける事業者を募っており、市は6月中に応募事業者からの企画提案を選考して委託事業者を決める方針。西成区保健福祉課は「生活保護の受給者らに対し、効果のある支援を進め、就労につなげたい」と意欲を見せた。

大阪市の主な2019年度西成特区構想推進事業
事業概要
地域密着型エリアイノベーションビジネス促進事業新今宮駅前でイベント、拠点づくりを進めてエリアの集客力を高め、にぎわい創出につなげる
西成版サービスハブ構築・運営事業あいりん地区の若年層に生活支援や就労先へのつなぎ、孤立防止などのマッチングを行う
公共空間利用モデル構築事業萩之茶屋小学校跡地に子どもたちの遊び場と高齢者の憩いの場を暫定的に整備する
西成区こども生活・まなびサポート事業児童や生徒が抱える個別の課題に対応するサポーターを小中学校に配置し、支援する
あいりん地域環境整備事業ごみの不法投棄対策や迷惑駐輪防止に努める
(出典:大阪市報道発表資料から筆者作成)

あいりん総合センターは4月で閉鎖

 あいりん地区は西成区北東部の広さ1平方キロ足らず。大正時代から失業者の集まる場所となってきた。ドヤと呼ばれる簡易宿泊所が並び、多くの労働者がねぐらとするほか、路上生活者もいる。

 労働者の3分の1以上が生活保護を受け、結核罹患率が全国平均の28倍。かつてたびたび暴動が発生するなど、貧困や差別など社会問題が凝縮した地域だ。「汚い」「危険」というイメージがつきまとい、周辺住民から敬遠されてきた経緯を持つ。

 そんなあいりん地区の中心となってきたのが、1970年に設置されたあいりん総合センターで、日雇い仕事を受けられるだけでなく、食堂や売店、医療施設、労働者が昼間に横になれる場所などが設けられていた。労働者にとって自由を享受できる居場所であり、地域の象徴にもなっていた。

 しかし、耐震性が不十分なことから、センターが担っていた機能を分散、移転することになり、抵抗する一部の労働者を強制排除して4月に閉鎖された。

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4月に抵抗する労働者を排除して閉鎖された大阪市西成区のあいりん総合センター。
閉ざされたシャッター前の歩道上で昼寝する労働者の姿も見られた
(写真:筆者撮影)

【次ページ】2つの施設登場で「労働者の街」に新しい風、労働者の居場所は?

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