• 会員限定
  • 2019/08/22 掲載

日米経済を読み解くカギ、1990年代から今につながる「4つの逆転」とは 篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(113)

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
インフォメーション・エコノミーの源流に遡(さかのぼ)ると、日米経済にはさまざまな「明暗と逆転」のコントラストがみられた。その分水嶺となったのが1991年だ。今回は成長率と失業率に着目し、トレンドとサイクルの分析枠組みで具体的にみていこう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

photo
日米の逆転を生んだ30年前に何が起こったのか
(Photo/Getty Images)

マクロ経済のデータで読む4つの逆転

連載一覧
 前回は、1990年代にみられた日米経済の2つのコントラスト──明暗と逆転──に情報化が影響しているのではないかと問題提起した。その究明に先立って、今回は、まず両国の実態経済がどう対照的だったのかを確認しておこう。

 日米経済の2つのコントラストは、マクロ経済の指標を長期観察で対比すれば一目瞭然だ。前回の東京オリンピックが開催された1960年代に遡り、両国経済を年代別に整理すると、1990年代には次の「4つの逆転」が観察される。

●1990年代に日米経済で起こった「4つの逆転」
(1)成長率の逆転
(2)失業率の逆転
(3)政府支出と民間投資の関係逆転
(4)国際社会における経済面の評価逆転

 この「4つの逆転現象」は、1992年以降により鮮明だ(表1)。今回は、その中で成長率と失業率 の逆転現象をみていこう。
画像
表1 主要経済指標にみる日米経済の「明暗と逆転

景気循環でみた分水嶺は1991年

 トレンドとサイクルの分析枠組みを応用すると、1991年は両国経済にとっていわば分水嶺の年だった。

 日本は、1991年2月を景気の山として、1980年代後半からの大型景気がピークに達し、バブル崩壊後は32カ月という戦後2番目の長さの後退局面に突入した。

 その後、1990年代の中盤と終盤には小型の景気回復を2回経験したが、いずれも短命に終わり、本格的な拡大が実現しないまま雇用情勢は悪化し続けた。

 その意味で、1991年は“Japan as No.1”と称された1980年代までの繁栄が転機を迎えた年といえる。“Japan as No.1”とは、驚異的な復興を遂げた日本社会の「強さ」を丹念なフィールド調査で分析したハーバード大学の社会学者エズラ・ヴォーゲル教授の著書名(1979年)に由来する。

「明暗と逆転」が1992年以降に鮮明なのはなぜか?

 一方、米国は、連載の第108回で解説したように、1991年3月を景気の谷として、2001年3月に景気後退入りするまで、当時としては史上最長の好景気を実現し、最も健全な10年を謳歌した。

 つまり、米国にとっての1991年は、1970年代以降の長期停滞から再活性化へ至る転機の年だった。

 このように、1991年は日米ともに景気が転換点を迎えた年であり、その翌年(1992年)からの経済動向は、1990年代の中でもとりわけ両国経済の特徴が凝縮しているわけだ。

【次ページ】成長率と失業率にみられた「明暗と逆転」

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます