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- 2021/01/08 掲載
「教師あり学習」と「教師なし学習」は何が違う?イラストでわかる機械学習の基礎
連載:図でわかる3分間AIキソ講座
「機械学習」とは
「機械学習」とは、人工知能(AI)が自律的に物事を学ぶための技術です。本来であれば人間が細かく設定しなければいけない部分を機械自身で学習してくれるというわけです。たとえば、本来なら人間の手によって構造化する必要のある非構造化データであっても、機械学習をうまく使えば構造化してくれるほか、収集された構造化データを利用してデータ分析を行う際も、機械学習を活用すれば効率は大幅に上がります。
具体的には、エキスパートシステムや検索エンジン、広告表示から言語入力ソフトの変換候補まで、あらゆるところで機械学習が応用されています。つまり、プログラムが「自ら学んでタスクの精度を高める仕組み」はすべて機械学習に含まれるということです。
機械学習を支える統計学
機械学習のベースとなっているのは統計学やデータサイエンスです。たとえば、エキスパートシステムから派生したIBMのAI「Watson(ワトソン)」は、膨大なデータに統計的手法を用いた解析を行うことで、クイズ王に勝利するほどの知識を得ました。チェスや囲碁のAIも、統計と確率を効果的に活用したアルゴリズムを利用して大きな成果を出しています。機械学習における統計データは、人間の「経験」とよく似ています。人間は自ら体験したり、他人の言葉を聞いたり、本を読んだりして得たさまざまな経験から学習をします。人間の経験が限られた不正確なデータを多数含むものであるのに対し、統計データは幅広い、かつ正確な情報が集まっているため、時にAIは人間以上の精度でタスクをこなせるようになります。
また、昔は学習のためには、膨大なデータを読み込む必要があった機械学習も、学習方法が洗練されるにつれて必要なデータの量も減っています。まだ人間の学習能力には及ばない部分があるものの、その計算能力と稼働時間を生かして学習を重ね、人間以上の能力を発揮する場面はかなり増えてきたのではないでしょうか。
「教師あり学習」とは
そんなAIの機械学習は、学習方法によって「教師あり学習」と「教師なし学習」に分かれます。ここからはそれぞれの特徴を解説していきます。まず「教師あり学習」とは、教師となる人間がAIに問題と答えをセットで教え、問題の解き方を学ばせる学習方法です。
たとえば、AIに画像を見せ、それが何かを当てさせる「画像認識」を例に挙げて考えてみましょう。画像認識の場合、AIに読み込ませる「人の顔」や「猫の姿」などの画像が「問題」にあたる一方、これら画像に紐づけられた「山田さん」「猫」といった人名や動物の種類名が「答え」にあたります。
教師あり学習では、人間に与えられた「問題」と「答え」がセットになった「情報」を学習し、AIは画像を分析、分類、抽出しながら、問題(入力)に対する答え(出力)が正しくなるよう、解き方(推論装置)のパラメータを自動で調整するのです。
この時に調整するパラメータは、エアコンの設定のようなものです。エアコンの場合、快適に過ごすために、そのときの室温や外気温に応じて、設定温度や風量、風向を変更します。これと同じように、AIも入力値に対して最適な出力値が出るように調整するわけです。教師あり学習では、このパラメータを答え(出力)を見ながら調整できる点が特徴になっています。
たとえば、同じ「山田さん」の写真であっても、写る角度や表情、明かりなどの具合によって微妙に違って見えるものですが、AIに求められている出力値(答え)は、どの写真を見ても「山田さん」となる状況です。
教師あり学習では、AIに学ばせる「答え」と「答えではない画像」のズレを調整していくだけで最適なパラメータを見つけられるようになるため、非常に学習効率が良いのです。
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