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  • 2014/06/24 掲載

東北メディカル・メガバンクが取り組む、東日本大震災による健康被害への中長期医療

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遺伝子情報などを臨床に活用する研究が進んでいる。今では個人のゲノム(=全遺伝情報)解析にかかるコストは10万円以下、必要な時間も数時間にまで短縮されてきており、解析によって得られた情報を医療に活用することで、患者一人ひとりの体質に合わせた個別化医療を実現することが可能となる。こうした取り組みに注力しているのが、東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)だ。そのミッションと具体的な活動内容について、東北大学 災害科学国際研究所 教授で東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 三世代コホート室長の栗山進一氏が語った。

東北メディカル・メガバンク事業で、個別化医療と被災地支援を目指す

 富士通フォーラム2014 東京で登壇した栗山氏は、始めに東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(以下ToMMo)が取り組む東北メディカル・メガバンク事業のミッションについて、次のように説明した。

「大きなミッションとしては人類全体の“個別化医療”の実現、そしてもう一つが、東日本大震災の被災地にいらっしゃる患者さまの支援。この2つを目指している」

 このうちの後者について、東日本大震災による健康被害は、急性期はもちろん、中長期的にどうなっていくのかが非常に危惧されているという。

「たとえば2004年に発生したスマトラ島沖地震の際には、短期的には感染症などが、中長期的には循環器疾患あるいは生活習慣病が増えているという報告がある。被災による治療の中断や生活習慣の大きな乱れが原因だ。我々はこうした疾病を抑え込みたいと考えている」

 そこでToMMoでは、被災地域住民の健康状態を把握するために、アンケートや血液検査、MRI検査などを実施し、病気の早期発見や治療に役立て、さらに得られた結果を住民にフィードバックすることで、住民の健康増進に貢献している。

「東北メディカル・メガバンク事業では、遺伝子情報の提供なども含めて住民の皆さまに協力をお願し、個別対応を実現していく。また現在の住民の健康を守ることは当然、未来の住民の方には、得られた結果を活用して、新たな医療を提供することを目指す」

 こうした活動に付随して、ToMMoでは医療者がいないエリアへの医師や医療関係者の派遣、保険医療サービスの普及、長期の健康調査、健康に関する最先端の研究などにも取り組んでいる。

2つの“コホート”を形成して健康調査を行い、得られた結果を活用する

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 個別化医療の実現を目指してToMMoが具体的に実施しているのが、地域住民コホート、三世代コホートという2つの“コホート(=同じ条件下にある特定の集団)”を対象にした健康調査だ。

「コホートとは古代ローマの歩兵隊の単位で、元々は数百人、数十人の規模。我々が行っている取り組みでは、2つの住民コホートの健康状況を追跡して、どうなっていくかを診る。まず各コホートへの参加者を募り、色々な健康調査を実施して、得られた結果を住民の皆さまにお返しし、支援を行い、さらには今後の研究にも活用する」

 1つめの地域住民コホートは、2013年5月から、宮城県と岩手県に住む20歳以上の住民を対象に参加者を募集し、現時点で1万人を超えた。最終的に8万人の参加者を目指すという。

 一方の三世代コホートは、宮城県全域と岩手県の一部地域に在住の妊婦を起点に、その夫、子供、祖父母の三世代を対象に2013年5月から参加者を募集し、今までに妊婦とこれから生まれてくる子供を含めた約6000人の協力が得られた。最終目標は7万人規模だ。

 さらに、この2つのコホートから抜けてしまう小中学生に対しては、地域子ども長期健康調査を実施することでフォローする。

 ここで栗山氏は、自身が室長を務める三世代コホートの詳細について言及した。

「三世代コホートでは、子供の健康状態を胎内にいるうちから見ていく。母体の中でどういう環境だったか、生まれてからどんなライフコースを進んできたか。それが親や祖父母の世代にも繋がっていく。いわゆる生涯コホートを目指している」

 住民に参加してもらうに当たっては、各種の説明と同意を取っているという。

「たとえば調査にはゲノム解析も含むという同意を取らせていただき、健康状態と遺伝子との関係についてもご説明する。得られた遺伝情報も集計や研究に活用するだけでなく、研究成果が得られ、準備が整えば、参加者の皆さまにお返しするということもお伝えしている」

【次ページ】今後はエレクトリックヘルスレコード(=生涯健康医療電子記録)を活用
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