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  • 2014/09/02

ネクソン マホニー社長インタビュー:基本無料のビジネスモデルはなぜ生まれたか

ゲームビジネスの過去と未来

ソーシャルゲームやスマホゲームに限らず、今やさまざまなWebサービスでも当たり前になった「Free-to-Play(F2P:基本プレイ無料)」。F2Pは、PC向けオンラインゲームから発祥したビジネスモデルだが、米Wired誌の編集長クリス・アンダーソン氏のベストセラー『FREE』で紹介された「フリーミアム」の先駆けともいえるものであり、後のWebビジネスにも多大な影響をおよぼしたことで知られている。そのF2Pに世界でいち早く取り組んできたネクソンのオーウェン・マホニー社長に、ゲームビジネスの過去、そして未来について話を聞いた。

F2Pモデルは衰退ゲーム起死回生の策だった

photo
ネクソン
代表取締役社長
オーウェン・マホニー 氏
──はじめにマホニー社長の経歴をお聞かせいただけますか。

 生まれも育ちも米国のシリコンバレーです。ICTや新しい技術が身近にある環境で育ちました。高校時代は小売店で「Apple II」を販売するアルバイトも経験しました。カリフォルニア大学バークレー校ではアジア学を専攻し、1990年に卒業したあとは、東京大学大学院で学んだ経験もあります。その後、アップルの子会社(当時)だったクラリス、Webサービス・プロバイダーのPointCastを経て、 2000年に大手ゲーム事業会社のエレクトロニック・アーツ(以下、EA)に入社しました。EAでは経営企画やM&Aを担当していました。

──なぜ大手のEAからベンチャー企業であるネクソンへと転身なさったのでしょうか?

 私がEAに入社して間もない2001年、EAは本格的なオンラインゲーム参入を計画していました。それでオンラインゲームが大ブームだった韓国へ出張し、PointCast在籍時にも会ったことのある韓国のネクソングループ創業者、金正宙(キム・ジョンジュ)氏と再会しました。

 当時ネクソンでは「Free-to-Play(以下、F2P)」という、基本的なゲーム利用は無料で提供し、ゲーム内アイテムなどの購入で課金するゲームを提供していました。こうしたスタイルのゲームは見たことがなかったので、衝撃的だったことを覚えています。

 当時、EAの企業規模はネクソンの数倍大きかったので、すぐに金氏に対して買収をもちかけてみました。しかし、金氏は首を縦に振らない。それどころか、私をネクソンにリクルートしました。それから9年間に3回ほど買収話を持ちかけましたが、いずれも逆に私がリクルートを受けて断念。そして4度目に私のほうが折れました。ネクソンで働くことにしたのです。その理由は、ネクソンがゲームの未来を担う会社だと判断したからです。

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──当時のオンラインゲームのビジネスモデルは、月額課金モデルが主流でした。F2Pモデルに可能性を感じた理由は何でしょうか。

 F2Pモデルはビジネスに精通したエリートが考案したのではなく、偶然の産物でした。以前に月額課金で提供していたとあるゲームが、ライフサイクルの衰退期にさしかかって利用者数が減少し、「いつ(提供を)打ち切るか」という状態になりました。そのとき、「どうせ打ち切るならばゲーム自体は無料で公開し、その中で使うアイテムに課金してみては?」と考えたそうです。

 しかし、始めてみるとF2Pはユーザーにとっても、提供するわれわれにとってもメリットがあるモデルであることがわかりました。有料アイテムはユーザーのゲーム体験を充実させるもので、購入するかどうかの判断はユーザーに委ねられています。実際、F2Pで有料アイテムを購入するユーザー比率は、10%程度です。多くのユーザーはわれわれが提供する高品質なゲームをフリー(無償)で利用しています。

──F2Pモデルの場合、パッケージ販売や月額課金と比較して開発費の回収予測が立てづらいのではないでしょうか。

 立ち上げ時は難航しましたが、ネクソンの直近の数字で言うと、(F2Pでの)営業利益率は32.6%(2013年12月期)です。通常、パッケージゲームの同数字は10~20%程度なので、今やゲームビジネスとしてはF2Pのほうが手堅いといえるでしょう。

 パッケージゲームとF2Pは投資回収のモデルが基本的に異なるので、単純な比較はできませんが、パッケージゲームは、“タフでハード”なビジネスです。たとえば、1つのゲームの開発には3~5年を要し、延べ数百人が関わります。つまり、そのゲームが成功するかどうかわからない段階で、全開発費を投入するモデルです。

 一方、F2Pの場合、開発期間は2年程度です。そして市場に投入したあとは、アップデートを続ける「ライブ・デベロップメント」を行い、ユーザーのニーズを見ながら機能を拡充し、発展させていきます。つまり、われわれの投資は、すでに市場に出てどのくらい人気があるのか(ユーザーがいるのか)が予測できる状態で、さらにアップデートによって寿命の長いゲームを目指します。逆に人気がなくアップデートしてもユーザー数の増加が見込めないと判断した場合には、開発をやめる判断もできるのです。

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F2Pとパッケージ型の売上高(グラフ上)と開発・運用費(グラフ下)の違い
(出典:ネクソン提供資料)


 こうした判断はパッケージゲームには不可能です。発売前のまったく未知のゲームに対し、膨大な時間とコストをつぎ込む。もし、そのゲームが失敗すれば、その損失は計り知れません。

──ビジネスモデル的にもF2Pのほうが“手堅い”わけですね。

 たとえば、1万円のパッケージゲームの場合、ユーザーは購入段階でそのゲームが1万円の価値があるかを判断し、対価を払います。そのゲームに1万円の価値を感じていないユーザーは購入しません。つまり1度しか接点がないのです。

 一方F2Pは、最初はゲームに対価を払う必要がないと考えているユーザーとも接点があります。F2Pで大切なのは、すぐれたゲームを提供し、長期間遊んでもらうことです。何度も遊びたくなるゲームは、その度にユーザーエンゲージメントが高まっていき、結果として課金ユーザーを獲得することにつながります。

 F2Pならではの難しさは、有料課金とゲームバランスとの関係にあります。短期的に有料課金重視で利益を得ることはできますが、われわれは長期的な関係性を重視する大切さを学んできました。この点は今後も大きなノウハウになると思います。

【次ページ】スマホの次はどうなるのか

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