キングが直面したビジネスモデルの転換
スマートフォン向けパズルゲーム「キャンディークラッシュ」で世界中を熱狂させたキング。日本でいうパズドラやモンストのような大ヒットを飛ばした同社だが、その生い立ちもこうした企業と共通点がある。同社は当初、Webでしか提供していなかったからだ。
一方で違っていたのはビジネスモデル。当時、同社が提供していたのは、ギャンブル要素の高いビジネスだった。ゲームに参加したユーザーから参加費を集め、手数料を取った上で、その残りをゲームの勝者が総取りするというもの。「ガートナー ビジネスインテリジェンス&アナリティクスサミット2015」で登壇したエリクソン氏は「毎日100万人のプレーヤーがいたので、これはこれで非常にいいビジネスだった」と振り返る。
そんな同社に1つの大きな転機が訪れる。それがFacebookプラットフォームの開放だ。
「我々のWebサービスのトラフィックが下がってきていた時に、5億人のアクティブユーザーを持つFacebookが突然、そのプラットフォームをサードパーティの開発者に開放した。そのAPIを使えば、Facebookの特徴を活かしたゲーム開発ができるというものだった」
キングはこれをさっそく活用する。当時すでにWeb上では提供していたキャンディークラッシュにおいて、あるレベルに到達したユーザーが、それをFacebook上のタイムラインに投稿して自慢できるようにした。それを見た友人が、投稿されたリンクをクリックして、新たにゲームを始められるといった仕組みを構築した。
「Facebookが我々にもたらしたメリットは、第一にバイラル(クチコミ)効果で、もう1つが新しいビジネスモデルの確立だ。Facebookは、我々が従来Webのプラットフォームでやっていたような“取り分ビジネス”は認めてくれなかったので、新たなビジネスモデルを構築する必要があった。それがゲーム内で仮想的なアイテムを販売するというモデルだ」
これがスマホアプリ版のビジネスモデルの原型にもなった。その後、スマホアプリとして提供されるようになり、今の大ヒットへと至る。これにより、プレーヤーはいつでも、どこでもゲームができるようになったのだが、その一方で大きな課題も生まれてきたという。
「(スマホアプリの提供に伴って)プレーヤーはオフラインでもゲームができるようになった。そのため、プレーヤーがオンライン化してデータが生成されるまで、(プレイ履歴のデータを)待たなければならなくなった。また、いつゲームをしたのかを特定することや、同期を取ることも難しくなった。そのため、ユーザー行動を分析するためのレポーティング機能が非常に重要になった」
Hadoop+Apache Hive+EXASOL+Qlikview
現在キャンディークラッシュには、約1億人のデイリーユーザーが存在し、1日当たり15億のゲームプレイが行われ、そこから日々150~200億行のデータが生成されているという。そして、各タイトルのチームごとに、最低でも1名のデータサイエンティストがメンバーとして存在している。
この体制になったのには2つの理由がある。1つは、ビジネスマネジャーがすぐにデータにクエリをかけられる人、答えを出せる人に質問を投げられるということ、そしてもう1つが、データサイエンティストが製品をよく理解できるようになるからだ。
「ここで重要になるのは、どういうデータを使っていきたいのか、そこからどんな価値を得たいのかを基準に、ソリューションを考えているということだ。Hadoopやテラデータなどのテクノロジーはあくまで手段。大量のデータを処理するために何を使っているかは関係ない」
1日当たり150~200億行のデータはペタバイト規模になってきているというが、キングではプレーヤーが操作した際に出力されるさまざまなイベントが記録されたログファイルをHadoopに投入し、Apache Hiveを使って、データウェアハウスの構成を取り、そのすべてを保存しておくという。
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