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  • 2015/12/21

中央省庁の地方移転に暗雲、熾烈さを増す「官僚の抵抗」を突破できるか

東京一極集中の是正に向けて検討されている中央省庁や研究研修施設、独立行政法人など政府機関の地方移転が、官僚の激しい抵抗に遭っている。政府は首都圏の1都3県を除く43道府県から中央省庁7期間を含む計69機関に対する移転要望を受け付けたが、移転の検討対象を半数以下の34機関に絞り込む考えを17日の有識者会議(座長・増田寛也元総務相)に示した。今回、事実上の要望却下となったのは、研究研修施設や独立行政法人ばかりで、いずれも官僚側から否定的な意見が寄せられていた。中央省庁7機関の移転をめぐる綱引きは年明けから本格的に始まるが、官僚の間で移転に反発する声が水面下で高まっており、実現するかどうかは不透明さを増している。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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地方自治体からの人気が高かった産業技術総合研究所
(写真は臨海副都心センター)
(写真:Yoji Shidara/Flickr


海外には政府機関を地方に移して成功した例も

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 政府のまち・ひと・しごと創生本部によると、政府機関移転の要望を出したのは、鹿児島県を除く42道府県。移転要望が出された69機関は研究研修施設が大半を占めたが、中央省庁も7機関が含まれている。

 中央省庁7機関に対しては、京都府が文化庁、北海道と兵庫県が観光庁、大阪府が中小企業庁、大阪府と長野県が特許庁、三重県が気象庁、徳島県が消費者庁、和歌山県が総務省統計局の移転を要望した。

 残り62機関の研究研修施設、独立行政法人などには、産業技術総合研究所12県、理化学研究所11府県、森林技術総合研修所11県など、各道府県から多数の移転要望が殺到、さながら誘致合戦の様相を示していた。

 政府の絞り込みを通過したのは、理化学研究所や教員研修センター、国民生活センターなど27機関に対する移転要望。このうち、研究研修施設は大阪府が要望した国立健康・栄養研究所を除き、組織機能の一部移転となった。18日に開かれた政府のまち・ひと・しごと創生本部で了承され、中央省庁とともに来年3月までに移転の可否を決める。

地方自治体が移転を提案した中央省庁
機関名所在地提案した地方自治体
観光庁東京都千代田区北海道、兵庫県
文化庁東京都千代田区京都府
消費者庁東京都千代田区徳島県
中小企業庁東京都千代田区大阪府
特許庁東京都千代田区長野県、大阪府
気象庁東京都千代田区三重県
総務省統計局東京都新宿区和歌山県
(出典:まち・ひと・しごと創生本部)

 政府機関を地方に移した例は海外にもある。総務省や国土交通省などによると、韓国は首都ソウルへの一極集中を是正するため、果川市や大田市に1980~90年代に22の政府機関を移転した。さらに2012年からはソウルから138キロ離れた場所に世宗市を建設し、中央省庁の移転を進めている。

 マレーシアは90年代、首都のクアラルンプールの南25キロにあるプトラジャヤに首相府を移した。英国は1963年から72年までの10年間に2万を超す政府ポストを首都ロンドンから地方へ移転、移転先で約9,000人以上の雇用を生み出している。

 このほか、ドイツやオーストラリアも首都以外に政府機関を置いている。こうした海外の事例も42道府県の移転要望を後押ししたことは間違いない。

激しさを増す官僚の抵抗

 しかし、官僚側の抵抗は激しかった。中央省庁に先駆けて始まった研究研修施設や独立行政法人などに対するヒアリングでは、「他の研究施設利用が困難になる」「一部移転で本部との円滑な運営が難しくなる」などと反対意見が相次いだ。

 政府は11月、移転による地域の機能向上が明確でない要望を検討対象から外す方針を打ち出したほか、移転に対する追加条件を次々に増やしているが、これら官僚の反発に押された結果だと受け止められている。

 その結果、鳥取県が要望した統計センターの集計業務は、首都圏を離れると女性職員の離職が増え、正確な業務に支障が出るなどとして、移転対象としない方針が早い段階で示された。島根県は宇宙航空研究開発機構、農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所など20機関の移転を要望していたが、11月に16機関の要望を取り下げている。

 今回の絞り込みでは、国立社会保障・人口問題研究所など5機関の移転要望を提出していた群馬県、防災科学技術研究所など5機関の誘致を希望していた岩手県など8県は、要望がすべて退けられた。群馬県の笠原寛企画部長は県議会で「各省庁の本気度はいかがなものか」と疑問の声を上げている。

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