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  • 2016/10/31 掲載

GE、コマツ、テスラ、ファナックはなぜ「IoT化」できたのか?IoT NEWS小泉氏が解説

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IoT(Internet of Things)は、すべてのモノがインターネットにつながることであり、昔からM2M(Machine to Machine)などの自動化で使われていたコンセプトだった。しかし、センサーの低価格化や小型化、クラウドの普及やAI技術の発展などの環境変化によって、IoTは一気に注目されはじめた。Webメディア「IoT NEWS」の小泉耕二 氏が、IoT化を進めるGE、コマツ、テスラ、ファナックといった企業の事例を中心に、自社でIoTビジネスを始める際のポイントを解説する。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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IoT NEWS
小泉耕二 氏

立場によって異なる「IoT」の広義

 エスキュービズム主催イベント「IoTカンファレンス」に登壇した小泉氏は「ビジネスを始める前に、まず人(立場)によってIoTの見方が異なることを知って欲しい」としたうえで、IoTの定義(広義)を次のように説明した。

「IoTは『各種センサー』、『クラウド』、『アクチュエーター』が連携しているサービスだ。センサーから収集したデータを、ネットを経由でクラウドにアップロードし、蓄積された大量データをAI技術などで処理する。さらにそれらの結果を返し、実世界の製品にアクチュエート(反映)させる」

 では、IoTを使ったビジネスを成功させるための要因とは何だろうか。小泉氏は次のように語る。

「そもそも、いまIoTが騒がれているのは、周囲の環境が変わったことがきっかけでしかない。センサー類が安くなったり、電池が長持ちしたり、クラウド環境が整備されたり、機械学習などAIが発展してきたため。この環境を活かしながら、これまでコンセプチュアルだったIoTを粛々と実現していけばよいという話だ」

GEとコマツはなぜ「IoT化」できたのか?

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 さらに小泉氏は、いま世間で注目されているIoT(Internet of Things)で、世界的に知られる2つの成功例について示した。GE(ゼネラル・ エレクトリック社)のガスタービンとコマツのKOMTRAX(コムトラックス)の例だ。小泉氏は、GEやコマツがIoTビジネスに参入した理由について説明した。

 2001年までGEのCEOを務めた伝説の経営者、ジャック・ウェルチは、同社を単なる物売りから脱却させるために、エンジンにセンサーをつけた。これにより故障の予兆保全が行えるようになり、燃費が向上し、フライトプランの作成まで支援できるようになった。

「従来の航空機産業は、エアラインが機体を持ち、運行から整備まで担当していた。一方で、製造についてはボーイングなどの飛行機OEMメーカーや、GEのような部品メーカー、素材メーカーが下支えをしていた。いまGEはIoTによって運行や整備まで入り込み、産業構造自体を変えはじめた。しかしGEは、最初から産業構造を変えようとして、IoTをはじめたわけではない」(小泉氏)

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GEのIoT化はなぜ成功したのか? ジェットエンジンの事例

 一方、コマツがIoTを始めた理由も、土木建設分野での人材不足という課題を解決するためだった。まずコマツは、自社の建機の自動化を推進した。ただし、自分たちの建機を自動化しただけでは、人材難や工期の短縮化にはつながらないことに気づいた。

「そこでコマツは、建機の自動化だけでなく、各種センサーによってデータを集め、現場の土量計算を精緻化し、土木プロセス全体に影響を及ぼすことで、工期を圧縮できるように工夫した。もともと土木建築のプロセスは、測量から始まり、図面を作成し、変動要因(土質や埋蔵物など)の調査を行ったあとに、計画を立てて施工を実施する。そして、その実績を管理するという流れだった」(小泉氏)

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コマツの情報化施工ソリューション「スマートコンストラクション」の成功事例。建機の自動化のみならず、センサーでデータを集め、現場の土量計算を精緻化し、土木プロセス全体に影響を及ぼすことで工期を圧縮させた

 従来までコマツの事業ドメインは施工機械(建機)を売ることがメインだったが、同社は新たな情報化施工ソリューション「スマートコンストラクション」により、ビジネスプロセス全体で同社がサポートできることを探し出し、新ビジネスとして成功させたわけだ。

コマツの成功事例を「概念化」して自社に活かせ

 では、コマツのような成功事例を、他社で推進するにはどうすればよいのか。ご存知の通り、介護ビジネスも建設と同様に人手不足の業界だ。小泉氏はコマツの事例を参考に、介護ビジネスへの応用例を説明した。

 まず介護分野でも、センサーによりデータを測定する。例えば要介護者の健康状態や活動状態を検知し、そのうえで臨床計画とギャップ分析を行う。これで誰の面倒を優先すべきかリアルタイムで分かる。適切な作業指示に基づき、現場のヘルパーや医師に巡回してもらい、効果測定を行って分析する。毎日のように全員に回る必要もなくなり、人手不足の解消につながるかもしれない。

「このように成功事例を概念化し、自社の事業とマッチングさせることが、IoTの導入に求められる重要ポイントになるだろう」(小泉氏)

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コマツの成功事例を介護ビジネスへの応用したもの。例えば要介護者の健康状態や活動状態をセンサーでモニタリングし、適切な作業指示を行うことで、現場のヘルパーや医師に巡回を効率化させ、人手不足の解消につなげる

【次ページ】テスラやファナックはIoTの「どの部分をクラウド化」したのか

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