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- 2016/11/01 掲載
「グローバルWiFi」のビジョンが取り組むIoT活用、スマート宅配BOXの導入効果とは
Wi-Fiルーターの需要増で好調のビジョン
ビジョンの主力事業のひとつがWi-Fiルーターのレンタルサービスだ。日本から海外に向かうアウトバウンドや、逆に海外から日本に来るインバウンドのほかに、海外から海外へと国をまたいだ場合でも、ローカルネットで最適な通信サービスを提供している。同社の海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」は、まずネットかコールセンターでレンタルの申し込みを行い、空港で専用ルーターを受け取る。借りたルーターは、帰国時に空港のドロップボックスで回収するという流れだ。世界中の通信事業者と連携することで、すでにグローバルで200か国以上をカバーしている点が大きな強みだ。現地通信会社と連携しており、現地ユーザーと同じエリアで利用可能であること、ビジネスで利用する際のセキュリティなどが高く評価されているそうだ。
エスキュービズム主催イベント「IoTカンファレンス」に登壇した佐野氏は「我々のレンタルサービスは順調な伸びを示してきた。海外、国内ともに市場開拓の余地は大きいと思うが、サービス開始の2012年から2015年の4年間で、売上は約14倍まで急増し、約50億円になった」と語る。
ビジネスが成長したことで生じた課題もある。同社のWi-Fiルーターは空港カウンターで受け取るため、どうしてもユーザーが渋滞を起こし、行列が起きてしまっていた。この渋滞対策として、以前にレンタルサービスを利用したことのあるユーザーと、初めてサービスを利用するユーザーで並ぶレーンを分けて対応することにしたという。こうすることで、リピーターの列を迅速に処理しつつ、初めてのユーザーには時間を割いて説明できるようにした。
とはいえ、それでも朝の出発便など、特に人が集中する混雑時には、どうしても受付カウンターに長蛇の列ができてしまう。
スマート宅配BOXの導入で業務効率化と顧客利便性向上
そこで同社が活用したのがIoTだ。イベント主催者のエスキュービズムのIoTロッカー「スマート宅配BOX」を使った「スマートピックアップ」を導入することにしたのだ。「空港側にも他にカウンターをつくって欲しいと要望を出したが、ロケーションの関係から空いているスペースがなくて断られてしまった。そこで、この混雑を緩和するために、4月から店舗の間口を広げる改造を施し、店舗をリニューアルオープンした」(佐野氏)
スマートピックアップでは、Wi-Fiルーターの予約申し込み時にメール発行されるQRコードが表示されたスマホ画面をかざすと、指定ロッカーが開き、Wi-Fiルーターを受け取れるというもの。
まずインターネットで利用の申し込みを行うと、このQRコードが記載された受け取り手配完了メールがユーザーに届く。あとは指定場所のスマートピックアップに行き、ボックスの前でスマートフォンのQRコードをかざすだけでよい。
スマート宅配BOXには合計94個のボックスがあり、1日に2回転させることで最大184件のレンタルWi-Fiルーターの受け渡しが可能になる。現在、羽田空港において先行稼働中だが、現状の平均稼働率は85%以上で、1日平均156件の受け渡しが行われているそうだ。
導入効果について、佐野氏は「かなりの時間的な削減につながった。たとえば1日に156件の受け取りの場合、1回につき3分間で処理していたとすると468分となり、約8時間ほどになる。30日稼働すれば1か月で234時間の時間削減となる」と評価する。
ユーザーを待たせることがなくなったことで、顧客満足度が大幅に向上し、それが差別化となって、さらに集客増につながったそうだ。また店舗スタッフの負荷も軽減され、労働集約型で人を増やすよりも、知的生産性による新たな業務に取り組める体制を構築できたという。
【次ページ】キオスク端末とウェアラブル活用の新たな取り組み
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