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- 2017/03/31 掲載
不動産で町と起業を支援したい! 小田原市の創業支援拠点「旧三福」の挑戦
連載:地方創生を支えるコワーキングスペースガイド
スタディスト アドバイザー、情報工場 メディア開発部プロデューサー、デフタ・キャピタル アクセラレーター 兼 横浜ジェネラルマネージャ。
2006年から日本最大料理レシピサイト「クックパッド」を運営するクックパッドにて、広告事業・マーケティング事業の創成期より参加、2009年の同社IPOにトップセールスにて貢献。大手食品・飲料メーカ、流通・商社、広告代理店を担当し、バリューチェーン全体を幅広くカバーした事業創造を行う。2012年より3人目の社員としてランサーズに参画し、ビジネス開発部部長として大手企業との事業提携・協業、広告企画の販売開始などを実行。その後、社長室広報チームリーダーにて、クラウドソーシング業界の普及啓もうに47都道府県フリーランス交流会の実施、中小企業庁主催の各県のセミナー登壇など、実績多数。
2015年1月デフタパートナーズのアクセラレーターとして、インキュベーション施設である横浜グローバルステーションの管理運営とベンチャー企業向けに育成プログラムを提供するなど、活動領域を拡げる。
2015年5月に54を創業。常時約30社のスタートアップ企業のアドバイザーとして事業戦略策定、BtoBアライアンス支援、広報部門立ち上げ等のコンサルティングを行う。
創業する人を増やすための不動産屋でありたい
ここに来たきっかけは、今から5年前の2012年、その会社を辞める少し前にあります。
地元の小田原で、数十年営業したのちに店じまいした「三福」という中華料理屋さんがこの建物の1階にありました。元が三福だったから、「旧三福」という名前にしたんです。
不動産業は前々からやりたかったものの、当初はまだ始めておらず、コワーキングスペースだけでした。それから2年たった2014年、共同代表の渡邊と一緒に旧三福不動産を立ち上げました。
どうして不動産をしたいのかというと、根底には「地域を良くしたい」という思いがあるのです。地域が変わるのに何が必要かというと、住む人が増えるとか、商売を始める人が増えるといったことが必要だと思います。
住む人、商売を始める人は、家や店を借りるわけです。しかし、一般の不動産屋さんは創業する人を増やすという意識はあまり持っていないんじゃないかと思います。そういう意識を持つ人が不動産業を営む必要があるとずっと思っていたのです。
たとえば「東京R不動産」などの良い不動産屋がある町には住みたいですよね。それと同じで、創業に最適な不動産屋があるといいなと思っていました。
私がもともと地主の息子だったら自分の土地で何かやるんですが、そうじゃないので、人を繋いでそういう不動産屋さんを生み出したいと考えていました。そんな時に良いタイミングで共同代表の渡邊に出会い、不動産業を始めたという経緯があります。
不動産×コワーキングスペースだからできる創業支援
前述のとおり、創業支援をするのが目的です。コワーキングスペースを使い始めた人が、だんだんと事業を成長させていってくれることに期待しているわけです。しかし、もしコワーキングスペースだけの運営だと、利益相反が起きてしまうと思いました。つまり、事業が拡大してコワーキングスペースではなく専用オフィスを持ちたいとなったときに、退去することになってしまう。運営側からすると、固定収入の減少になるから、利用者の事業拡大を素直に喜べなくなうかもしれません。
我々は不動産業を営んでいるから、コワーキングスペースを出ていくことになった企業に、たとえばオフィスを提供するというような別の形で協力ができて、形を変えて支援が続けられるのです。これは、ひとつの理想的な創業支援のあり方かと思って、取り組んでいます。
入居者さんの特徴としては、PCを広げている人が少ない印象です。絵を描いていたり、クラフト作家だったり。大工さんもいれば、お茶の先生もいて、職種は多彩です。入居者さんの人数は、変化しますけれどだいたい15人前後。年代としては、30代が多いでしょうか。性別でいうと、おおよそ男女半々です。
入居者の飲み会や交流もあります。職種がそれぞれ違うんで、ノベルティを画家にデザインしてもらうほか、入居者どうしで発注したりというコラボレーションが起きるのもおもしろいところです。
特徴的な入居者さんに、すさびさんがいます。彼らは、ハンモックやインテリア商品等インターネット通販事業を営んでいます。代表の方は横浜から来られて、最初は自宅で個人事業として始められたのですが、のちに旧三福に移ってこられました。その後、法人化して、従業員も増えるなど、成長中の企業です。
【次ページ】苦労の末にたどり着いた、運営のポイント
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