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- 2017/05/31 掲載
データセンター戦略で2つのトレンド、インターコネクト・ハブに注目すべきワケ
ガートナー 田崎堅志氏が解説
企業データセンターの今後を左右する3つの視点
背景にはどのような環境変化があるのか。企業データセンターの今後を左右する影響を読み解く鍵となるのが、次の3つの視点である。
第1は「クラウド・サービスの利用拡大」だ。これまでアプリケーションは企業データセンター内で運用されてきたが、現在ではOffice 365やSalesforceに代表されるSaaS型アプリケーションの利用が拡大し、データも外部データセンターやクラウドに散在するという動きが加速している。
これに伴い、システム全体が複雑化し、セキュリティやガバナンスを担保することが困難になっている。また、データセンターと各拠点をつなぐWANに大量のデータが流入し、帯域を圧迫するケースも増えている。
第2は「デジタル・ビジネスの進展」が挙げられる。ITとOT(オペレーショナル・テクノロジー)の融合、さらにはIoTといった概念の登場により、これまでの業務系システムと馴染みの薄かった制御系のアプリケーションがどんどん企業データセンターに入り込み、社内外のあらゆるプロセスやデータがつながるようになる。
企業データセンターとしてはこれに対応した新たなIT機能を提供する必要があるが、もともと異なるポリシーを持ったシステムをつなぐことで、どのようなリスクが発生するのかも考慮しなければならない。
そして第3は「ITサービスの継続性」だ。上記の動向を受けて企業データセンターが外部とつながり、パートナー・エコシステムの一部に組み込まれるようになると、24時間365日の運用が必須となる。
計画外停止などの問題を起こすとつながっている相手先まで影響を及ぼすことになる。信用を失うとパートナー・エコシステムからバイパス(排除)されてしまう恐れがあるなど、ビジネス面でも重大な責任を負うことになる。
このように現在、企業データセンターという概念そのものを大きく変えなければならない時期を迎えている。企業データセンターは、もはや単なるITインフラの運用施設ではなくなっている。ハイブリッドな環境で統合するさまざまな機能を安心・安全・俊敏にエンドユーザーに提供し、管理の効いた変化とイノベーションを促す、自社が必要とするサービスの調整とならなければならない。
必然的にそれを結ぶネットワークも企業データセンターだけでは完結しなくなる。クラウドやセカンダリ・サイト、パートナー・エコシステムと企業データセンターを結ぶバックエンドが今まで以上に重要となる。
テーマは「多元的な接続」と「エッジへの拡張」
具体的にデータセンター間ネットワークはどのように変化しているのだろうか。現在のトレンドは「多元的な接続」「エッジへの拡張」の大きく2つである。まず「多元的な接続」だが、発端となったのは目的に応じたクラウドとの接続で、AWSやAzureなど各クラウドと企業データセンターを個別に結ぶ専用接続(ダイレクト・コネクト)が拡大している。業務で必要なセキュリティとパフォーマンスを担保できるという意味で、当面はこれでしのいでいけると考えられる。
しかし、たとえばオンラインストレージのBox上で蓄積・管理しているデータをAWS上のアプリケーションで利用するといったクラウド間のやり取りが拡大すると、新たな問題が発生する。クラウド間のトラフィックが常に企業データセンターを経由するため、そこがボトルネックになってしまうのだ。
この課題を解決するためには、複数のクラウドや通信事業者、データセンター事業者、サービス・プロバイダーなどを相互接続する仕組みが必要となる。ガートナーではこれを「インターコネクト・ハブ」と呼んでおり、各プロバイダーのサービス・ロードマップにも記載され始めている。
さらにインターコネクト・ハブに複数のデータセンターを接続することで、企業間のピアリングも可能となる。パートナー・エコシステムにおけるアプリケーションやデータの共有、プロセスの可視化・自動化など、インターコネクト・ハブはデジタル・ビジネスを支えるコア・インフラの1つになると考えられる。
【次ページ】データセンターの将来像を描く5つのステップ
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