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- 2017/06/09 掲載
空き家バンクが全国一元化、「3.3戸に1戸が空き家」の解消につながるか?
空き家活用に取り組む自治体の7割がバンクを開設
国交省が2015年に実施した調査では、空き家活用に取り組む自治体が全国に950市区町村あった。うち、7割が空き家バンクを開設している。
しかし、仕様は自治体によって異なり、自治体内のデータしか検索できない。国交省はこれらのデータを統一し、地方移住を考える人が希望する場所や立地条件を入力すると、全国の対象物件を一覧表示できる仕組みを想定している。
空き家の増加は治安や防災上の問題になることから、自治体が危険な空き家を強制撤去できる特別措置法が2015年に施行されたが、空き家バンクは撤去ではなく、有効活用するための施策。地方移住の促進や地方の不動産ビジネス活性化も目標としている。
今後も人口減少が続けば、空き家は爆発的に増える見通し。全国にある空き家は2013年度の国交省調査で820万戸。7.4戸に1戸が空き家の勘定だ。野村総合研究所は2033年までに空き家が2,100万戸に増え、3.3戸に1戸が空き家になると推計している。
このため、国土審議会は空き家活用の具体策として、持ち主と行政、不動産業者をつなぐ新組織の検討、クラウドファンディングで資金調達し、空き家を再生、活用する取り組みの推進などとともに、空き家バンクの一元化を提言していた。
国交省は近く、サイト構築の事業者を選定したうえで、空き家バンクを運営している自治体と詳細を詰め、本年度中にサイトを公開したい考え。国交省不動産業課は「利便性の高いシステムを構築し、空き家活用を推進したい」としている。
笠岡市は現地案内を実施して60件余りの成約
広島県との県境に近い岡山県西部の笠岡市。山陽本線のJR笠岡駅から港に向かって歩くと、道の両側に空き家や空き店舗が点在する。人がいなくなって時間が経つためか、傷みの目立つ建物が多く、廃屋に変わりつつあるものも少なくない。国道2号線から路地を入った空き家は、郵便受けが錆びつき、木枠の窓が歪んでいた。笠岡市は4月現在で人口4万9,000人。国の天然記念物・カブトガニの繁殖地として知られるほか、人口100人足らずの大飛島など30を超す島が連なる笠岡諸島を抱える。広島県福山市に隣接し、福山都市圏の一角を構成するが、人口は1975年の6万3,000人をピークに減少を続けている。
笠岡市内にある空き家はざっと1,000戸以上。その数は増える一方で、これを地域資源として活用し、移住者を呼び込もうと、空き家バンクが2009年にスタートした。
持ち主が登録した空き家をホームページ上で公開し、希望者が出てくればセンターの職員が現地を案内する。そのあとで持ち主に連絡し、契約してもらう。手順に現地案内を盛り込んだのは、移住希望者に空き家と地域を確認してもらうためだ。
笠岡市定住促進センターは「移住者には自治会に参加し、地域の一員となってほしい。そのためには単に物件を紹介するだけでなく、地域の現状もその目で見てもらうことが大切」と狙いを語る。
笠岡市が空き家バンクを通じて成約にこぎつけたのは60件余り。現地案内は移住希望者に好評だ。しかし、全国を見渡すと移住者獲得で一定の成果を上げる空き家バンクはそれほど多くない。
【次ページ】1カ月当たりの成約数は89%が1件未満
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