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  • 2018/03/09 掲載

再生医療を本格普及させるには「標準化」に取り組むべきだ

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医療のあり方を抜本的に変えるといわれる再生医療。2014年には世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われたが、それが実際に社会に普及するのはいつなのか。2018年2月22日(木)、日経ホールで第1回 ウェルビーイング イノベーション シンポジウムが開催された。テーマは再生・細胞医療の社会実装だ。臨床現場や再生医療医薬品の製造現場における課題を浮き彫りにするとともに、その解決に向けた取り組みが幅広く議論された。

執筆:フリーランスライター 吉田育代

執筆:フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

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パネルディスカッションの風景
(写真:筆者撮影)

安全性の確保なしに前へ進めない再生医療

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 そもそも再生医療とは何か。厚生労働省によると、生まれつき、あるいは疾病・不慮の事故・加齢に伴い、欠損・損傷・機能低下した組織や臓器を、患者の体外で培養した細胞や組織を用いて修復再生し、機能を補完する医療であるという。具体的には細胞培養や細胞医療製品の開発、新薬開発などさまざまな分野がある。

 これまでの医学では難病とされた疾病が再生医療で克服可能と期待されている。

 その反面で、これまで以上に懸念すべき点もある。それは安全性や品質の確保だ。生きた細胞や組織を利用するために、慎重を期さないと感染症の伝搬や不純物混入、腫瘍形成、好ましくない免疫反応などを引き起こす恐れがある。

 医療業界や製薬業界にとって、再生医療の社会実装は過去の経験をそのまま適用できない未知の領域だ。

産業として進化させるには世界で共有できる標準が必要

 この日のシンポジウムでは、「再生医療製品製造の課題と標準化に向けて」と題したパネルディスカッションが行われた。

 再生医療製品製造分野では現在、安全性確保のための標準化活動が幅広く進められているが、実のところその対象は多岐にわたる。細胞入手や細胞バンク構築に関するものもあれば、細胞調製や品質評価に関するものもあり、輸送や保存のプロセスに着目したものもあれば、創薬の安全性評価・有効性評価に焦点を置いたものもある。

 そして、あるものはアカデミア主導、あるものは国際標準化機関主導など、対象ごとに標準化活動の様相は異なっている。

 再生医療製品の製造プロセスの標準化については、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)がISO/TC 276 のメンバーとして参加し、日本主導の国際標準化を推進している。

 富士フイルム再生医療事業部嘱託 FIRM標準化部会長 日置達男氏は、「産業化を考える際にカギとなるのは標準化だ。これは都市計画のようなもので、人々が個々に家を建て始める前に街のデザインを示す。“標準”の条件としては(1)共通言語となれること、(2)オープンであること、(3)権威を持っていること、(4)有用と信頼できること、の4つが重要で、ISO/TC 276はすでに(1)から(3)を満たしている。(4)については今後開かれるワークショップなどの経験を通じて確立していくことになる」と語る。

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富士フイルム
再生医療事業部嘱託
FIRM標準化部会長
日置 達男 氏

 大阪大学 大学院工学研究科 生命先端工学専攻 教授 紀ノ岡正博氏は、培養組織生産分野における第一人者だ。「再生医療分野は製造者、アカデミア、規制当局など多くのステークホルダー間でのコラボレーションが欠かせないが、幸い日本にはよいコミュニケーションがある。すぐれた再生医療製品を世に送り出すためには、モノづくりの視点だけではなく、ルールづくりやヒトづくりなど、コトづくりの視点が重要だ」そう同氏は強調する。

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大阪大学
大学院工学研究科
生命先端工学専攻
教授
紀ノ岡 正博 氏

【次ページ】再生医療の製造の機械化はどう実現するのか?

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