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  • 2018/05/08 掲載

オプト 金澤大輔社長に聞く、34歳社長がV字回復させた「ミドルアップダウン経営」とは

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デジタルマーケティング事業などを手がけるオプトは、2015年4月に持株会社からの分社化という形で、新生オプトとして再スタートを切った。創業者の鉢嶺 登氏から中核企業のオプトの経営のバトンを受け継いだのが、当時34歳で社長に就任した金澤大輔氏である。大学を卒業後、テレビ制作会社を経て、オプトでは アルバイトからたたき上げの金澤氏がこだわったのは「日本一実行力のある会社」。停滞気味だった業績を3年でどのように回復させたのか、社内改革の取り組みと次のビジョンを聞いた。
(聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司)

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オプト 代表取締役社長CEO 金澤大輔氏

閉塞感打破のため「実行力」が求められた

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──34歳での社長就任ということで、抜擢されたときに驚きはなかったのでしょうか。

金澤氏:実は驚きはありませんでした(笑)。私が社長に選ばれた理由として、前社長の鉢嶺から言われたのが「やると決めたこと、発言したことを実現してきたコミット力を評価した」ということです。

 私はアルバイトでオプトに採用されて、ここまできましたが、ずっと「上の役職の人の顔、考えていることが見えないと気持ち悪い」と感じていました。ですから、自分が役員になったときは、とことん自分がコミットしていることをオープンに、クリアにしてきました。

 当初は達成できないこともありましたが、だんだん周りの仲間やクライアント のサポートを得て達成できるようになり、そうした私のやり方、実行力が期待されたと考えています。

──業績が厳しい中でのバトンタッチということで、現状打破への期待もあったのでしょうか。

金澤氏:オプトという会社はフラットで、手を上げたらどんどんチャレンジさせてくれる会社です。私は役員時代から、オプトの広告代理店としての機能、マーケティング機能にコミットしたい、コミットする必要性を感じていました。

 当時、オプトは広告以外にも事業を多角化しており、広告やマーケティングは売上の8割くらいを占めていたものの、事業の位置づけが今ひとつはっきりしない、閉塞感のようなものがありました。私は改めて会社のビジョンを定義し、事業を再構築したいと考えたのです。

──閉塞感というのは、具体的にどのようなことでしょうか?

金澤氏:一緒に働いていた仲間が辞めたり、業績が思うように上がらなかったりして、対外的にも「オプトは元気がなくなった」という声が聞かれました。私が社長に就任した直後に、離職率は最大で2割近くまで上がりました。クライアントからも心配されたことを今でもよく覚えています。

 広告代理事業やマーケティング事業は人がすべて。思うに、閉塞感というのは、クライアントやメディアやパートナーとの向き合い方にもあったと思います。広告代理事業は、メディアやパートナーと並走してクライアントに信頼していただき、ともに売上を上げながら、成長していくことが大事です。

 そこで私は売上高にこだわりたいと思いました。そのために目標の指標そのものを変えたのです。


どうポートフォリオを見直し、指標を変えたのか

──厳しい環境のときは売上を押し上げることよりも、利益率のほうを優先すべきだと考えそうなものです。

金澤氏:おっしゃる通りなのですが、あえて原点に戻りトップライン(売上)にこだわりました。従来の重要指標であった営業利益率から、マーケットシェア、市場成長率を指標に、売上高を伸ばすことに注力しました。売上高が上がれば、周囲の評価や期待も変わり、ビジネスチャンスがどんどん広がっていくと考えたからです。

 やはり、広告やマーケティングは、パートナーとの連携なしに自分たちだけで解決、成長できないビジネスです。そのために、売上高を伸ばして、パートナーの信頼を得る「アライアンス戦略」に未来を託すことにしました。

──具体的にはどのようなことを行われたのでしょうか?

金澤氏:指標を変えた後に取り組んだのが戦略を抜本的に変えることです。具体的には「ポートフォリオ・マネジメント」を意識しました。これまで、人やモノ、カネといった経営資源を、あまり戦略的に割り当てて来なかったとの反省から、改めて自分たちのサービスを4象限に定義しなおしたのです。

 Aは「トップライン(売上高)」を重視する象限、Bは「付加価値」を重視する象限、Cは「収益化」をはかる象限で、Dは「将来性(シーズ)」の象限という風に分類し、3年計画で、経営リソースを戦略的に配分しました。

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事業を四象限に分解

──オプトグループ全体はM&Aなども行いながらシーズに対する種まきをしていますが、中核企業であるオプト内でのシーズが明確に定義できていなかったのでそれを整理したと。

金澤氏:おっしゃる通りです。きちんとした定義がなされていないから、ある新規事業に人を多く付けてやってみたものの、長続きせずにすぐに撤退するということを繰り返していました。利益にこだわっていると、なかなかDの事業は育ちません。

 さらに「なぜトップラインを上げる必要があるのか?」「マーケティングは誰の、どんな課題を解決するのか?」という「目標の共有」を社員に対して行ったのです。

 当時は、営業利益率だけを管理していた状態だったので、ともすれば自分たちの仕事は誰の何に貢献しているのかが見えなくなりがちでした。自分たちのミッションは何かをきちんと明らかにすることが重要だったのです。

 最初に訴えたことは「『実行』にこだわる企業文化」を根付かせることです。クライアントのマーケティングのデジタルシフトを進め、クライアントも自分たちもハッピーになろう、これまで利益率が高くないからと立ち止まっていたものを実行しよう。「日本一実行力のある会社」に生まれ変わりたいというフラッグを立てたのです。


会社が成長するために必要な3つの要素とは?

──指標を変え、ポートフォリオを見直すことで業績が回復したのですね。

金澤氏:社長就任から3年が経過して、就任当時は、売上高は昨年対比ベースで、ほぼ横ばいでした。今は、売上高は前年比約20%以上の成長率というところです。

──具体的にはどのような施策を行ったのでしょうか?

金澤氏:組織力を高めるための変革を行いました。私は、会社が成長するために「絆」「評価・報酬」「成長実感」という3つの要素が必要だと考えています。

 これを担保するために、組織機構を見直し、取締役と執行役員をラインではなく社長直下に配置 、本部長職を撤廃することで、従来の階層から2階層分をなくし、その分、部長職にどんどん権限を委譲することにしました。

 また、教育方針も見直し、「Hキャンプ」という取り組みを、半期ごとに年2回行うようにしました。これは、社員一人ひとりの育成計画を上司がプレゼンするというもの。私を含め、全社員の育成計画を徹底的に議論します。

──金澤さんも育成計画をレビューするのですか?

金澤氏:もちろんすべてのHキャンプに参加して 全社員分を見ています。私は上の役職に行けば行くほど、緊張感、危機感を持って働く組織を目指したかったのです。インターネット業界は、業績が下降線をたどると、あっという間に人がいなくなるというのを、身をもって経験しました。そこで、「一人ひとりと向き合って育成計画を作る」ことを大切にしています。これは、上述した「絆」の部分にもつながります。

【次ページ】業績を上げる前に社員の給与を上げた

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