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- 2018/06/08 掲載
「産廃の島」で今度は山林伐採して太陽光発電、豊島の苦悩はいつまで続くのか
建設予定地は裸地が広がり、一部が崩壊
瀬戸内海の東部、小豆島の西に浮かぶ豊島は、周囲19.8キロ、面積14.4平方キロ、人口800人ほどの小さな島だが、瀬戸内国際芸術祭の舞台となり、美術館などが整備されて以降、観光客が急増している。豊島自治連合会の三宅忠治会長(71)は「人口減少に苦しむ島活性化の切り札が観光」と力を込める。
豊島はかつて、大量の産業廃棄物が不法投棄され、「産廃の島」と呼ばれた。不法投棄量は汚染土壌を含め、実に90万トン以上。約40年にも及ぶ住民運動の末、撤去にこぎつけ、観光で島の再生を図ろうとする矢先に、新たな難題が降りかかってきた。島外資本による太陽光発電の建設計画が相次いでいることだ。
計画はいずれも山林を切り開いて太陽光発電施設を建設するもので、開発が実現すれば景色が大きく変わるうえ、土砂流出など環境破壊の恐れもある。徳島県阿南市の業者が島北部の唐櫃虻山地区で計画した太陽光発電計画は、住民の反対運動の末に2015年、凍結に追い込まれた。だが、島の東部2カ所では今も建設計画が進んでいる。
現場はともに東海岸の唐櫃栄山地区にあり、小豆島など瀬戸内の島々を一望できる景勝地。海上を通るフェリーや高速船、小豆島から望める場所で、大規模の太陽光発電が設置されれば緑豊かな島のイメージを損なうことは間違いない。
2つの計画のうち、実際に動きだしているのは、広島市の合同会社フォレストエナジーの計画。もともとヘリポートなどがあった場所で、峠道から見下ろすと、周囲の山林を含む1.2ヘクタールが切り開かれて裸地が広がり、一部が崩れている。
計画出力は750キロワット。5,000~6,000平方メートルの用地に約3,600枚のソーラーパネルを敷き詰める計画で、2017年11月から設備の設置に着手し、2018年2月から稼働させることにしていた。経済産業省から事業認定を受け、中国電力との間で売電契約を結んでいる。
自治体の消極的な姿勢に島民が反発
豊島自治連合会は島民の成人人口の95%に当たる738人の署名を集め、香川県や土庄町、中国電力、環境省、経産省に事業の中止を陳情した。さらに、現場でコンクリート片など産業廃棄物が不法投棄されていることを確認、香川県警に告発した。
その結果、着工は先送りされ、香川県と土庄町の指導の下で産業廃棄物の撤去作業が進められている。しかし、三宅会長は「フォレストエナジーが撤去終了後に整備工事に着手する姿勢を崩しておらず、引き続き反対運動を進める」と警戒している。
もう1つは小豆島の業者が計画していたが、経産省の事業認定は岡山市の業者になり、出力750キロワットになっている。豊島自治連合会によると、事業が引き継がれたようだが、今のところ具体的な動きが見えていない。
【次ページ】住民との合意を義務づける条例制定が必要
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