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  • 2018/10/26

民営化空港が全国で続々と、利用増の一方でリスク管理に課題も

2016年の関西、伊丹、仙台の3空港に続き、高松、神戸の両空港が2018年4月に民営化されて半年が過ぎた。両空港とも利用が伸びており、国土交通省は国や地方自治体が管理する他空港へ民営化を拡大したい考えを打ち出している。ただ、9月の台風被害で関西空港が混乱したように民間が空港運営するうえでの課題をのぞかせたほか、どこまでが民営化の効果なのかについては見えない点が残る。島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「利用者増は訪日外国人観光客の増加に依存した一面がある。もろ手を挙げて民営化効果が出たとはいい切れない」とみている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。


高松空港ソウル便の毎日運航がスタート



 「ソウル便の毎日運航が実現でき、ありがたい。アジア、世界とつながる瀬戸内ナンバーワンの空港を目指していきたい」。韓国の格安航空会社(LCC)エアソウルが運航するソウル線の毎日運航が始まった10月末、香川県高松市の高松空港で高松空港会社の渡部哲也社長が笑顔で語った。

 この日は毎日運航スタートの記念セレモニー。旅客ターミナルビル2階の国際線搭乗待合室に浜田恵造香川県知事ら自治体、経済団体関係者ら約20人が集まり、くす玉を割ったあと、到着ロビーで乗客に記念品を渡した。

 高松空港は高松市中心部から南へ15キロ、標高185メートルの高台に整備されている。東京羽田、上海など国内外7路線が就航する国管理の地方空港だったが、4月に民営化された。運営しているのは、三菱地所などで構成する企業グループが設立した高松空港会社だ。

 空港は香川県中央部に位置し、徳島県や高知県に近い。このため、東四国の拠点空港とするべく搭乗待合室、駐車場をリニューアルするとともに、徳島県三好市の観光地・大歩危祖谷峡、高知県高知市のJR高知駅への直行バス運行を始めるなど、利便性向上と訪日客の受け入れ推進を目指した取り組みを進めている。

2018年度上半期(4~9月)のチャーター便を除いた乗降客は約87万人。前年同期と比べ、717人のわずかな伸びだが、LCC路線や訪日客受け入れの拡大で2032年に年間乗降客数を307万人に増やす計画だ。

 香川県交通政策課は「民間の発想で課題を迅速に解決している。民営化はスタートしたばかりだが、着実な歩みを見せている」と評価している。

神戸空港は民営化も発着枠が既に上限



 神戸市の神戸空港は市が運営してきたが、4月から関西、伊丹の両空港を運営する民間の関西エアポートに委ねられ、関西3空港一体での運営が始まった。

2018年度上半期の乗降客は約158万人と前年同期を2.4%上回った。2006年の開港以来、これまで一度も届かなかった開港前の年間需要予測319万人に匹敵するペースで利用が続いている。

 しかし、24時間運用可能な海上空港でありながら、国際線禁止、1日発着枠60回など厳しい運用規制が設けられ、潜在能力を発揮できないでいるのも事実。スカイマークなど4社が7路線を運航する空の便は、規制の上限に達し、これ以上の増便が困難な状況だ。

 兵庫県内には規制緩和を望む声が出ているものの、関西3空港懇談会が開かれ、規制緩和の協議が進むめどは立っていない。関西エアポートは「どういう方向で地域振興へ貢献が可能か、見定めている段階」という。

 神戸市空港推進課は「3空港一体運営で関西経済を押し上げる役割を果たせているのでないか」と評価しているが、潜在能力を生かす方向については見えてこない。

仙台空港は高評価、関西空港は台風被害で課題も



 2016年に民間の仙台国際空港会社に委ねられたのが、宮城県の仙台空港だ。2017年度の乗降客は前年度比8.7%増の344万人で、11年ぶりに過去最高を更新した。スカイマークが運航を再開した神戸線、ピーチ・アビエーションが開設した札幌線、台北線などが利用を押し上げている。

 施設面では既存ターミナル西側にピア棟が10月末、増設された。一部3階建ての延べ約5,950平方メートル。搭乗ゲートや待合スペース、事務室を備えている。朝や夕方など発着便が集中する時間帯でも、増便や新規就航を可能にするための増設だ。工事費は約20億円。宮城県の予算が1円も使われずに完成した。

 民営化前は東北唯一の国管理空港で、東北の拠点空港を目指していたのに、宮城県以外へのアクセスは不便だった。しかし、民営化後は東北各地を結ぶ直通バスが相次いで整備されるなど改善が進んでいる。

 新規就航や増便を促す着陸料の割引制度を導入、石井啓一国土交通相からは「民間ならではの柔軟な発想」と高く評価された。宮城県空港臨空地域課も「東北の拠点空港として着実に成果が上がっている」と喜んでいる。

 2016年に特殊会社の新関西国際空港から関西エアポートが運営を引き継いだ関西空港は、民間の発想が大きな成果を上げる一方で、弱点もさらけだした。

2017年には新たにLCC専用のターミナルを増設、折からの訪日客増加に合わせ、大阪、京都の繁華街が外国人であふれる現象を巻き起こした。新関西国際空港の運営時代から計画されていたものだが、専用ターミナルを生かして次々にLCC便を就航させ、関西に訪日客を招き入れることができたのは、民間ならではの迅速な対応があったからだ。

搭乗までの待ち時間を短縮する自動チェックイン機など最新機器、商業施設も次々に導入された。関西エアポートは「空港をお出かけスポットとする一方、搭乗までのストレスを軽減できたのは成果でないか」と胸を張る。

 しかし、9月の台風21号では対応に混乱を重ね、早急な再開策を打ち出せないまま、政府主導で再開に踏み切る形となった。政府と関西エアポートで公共性に対する認識の差が浮き彫りになり、民営化がプラス方向だけに働くとは限らない一面も見せつけた。

国交省は有識者会議で効果や課題を検証



 空港民営化の動きは福岡市の福岡空港、広島県の広島空港、北海道の新千歳など7空港をはじめ、全国に広がろうとしている。だが、民営化の効果がどこまで出ているのか、課題がどこにあるのかの検証は始まったばかりだ。

 国交省は8月から有識者会議を設置してこれまでの検証作業と改善策の検討に入った。2019年3月までに一定の方向性を打ち出す方針で、国交省空港経営改革推進室は「民営化効果や課題についても本格的に検討したい」としている。

 民営化すればどの空港でも成果を上げられるわけではない。日本よりひと足早く空港民営化を始めた英国では、カーディフ空港など経営不振で公営に戻さざるを得なかった例がある。空港民営化だけで地域に波及効果が及ぶこともない。

 西藤准教授は「民営化された空港が訪日客の増加を受け、免税店への投資や新規路線の誘致に動いている点は政策の狙い通りだろう。しかし、関西空港の台風被害のように緊急時の指揮系統などで行政との役割分担があいまいだと安定した経営が難しい」と指摘する。

 民間の柔軟な発想と経営感覚を空港に生かすのに異論はないが、民営化がゴールではない。空港の安定運営に向け、官と民が連携を深めることも忘れてはならない。

【次ページ】徳島、千葉、広島でも広域化を模索する動き

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