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- 2019/02/05 掲載
不妊の4割は男のせい?「ExSeed(エクシード)」が精子をスマホとAIでチェックする
不妊の原因の4割が男性!? 不足する男性向け不妊治療
不妊治療が一般的になる一方で、その心身及び経済的な負担は大きい。不妊治療に対する不安や不満に関するアンケートでは「治療費が高いこと」「精神的な疲労」「長期間にわたる通院」が上位に挙げられた。
体外受精をはじめ、数十万円から数百万円に達する高額な不妊治療は、1,472億円規模の大きな市場だ。政府もこの点に着目し、少子化対策の一環として、心身や経済的な負担の大きい不妊治療に対し、費用の助成を拡充するなどの政策を行っている。
近年、テクノロジーを通して女性の健康を促進する「フェムテック」(FemTech:女性を意味する「Female」と「Technology」の造語)が米国をはじめ、大きな盛り上がりを見せている。 月経トラックキングアプリや避妊プロダクトなど、ウェアラブル機器を活用して女性の健康を促進するアイデアが生まれてきた。
一方で、不妊治療の需要と供給がマッチしていないという見方もある。Centers for Disease Control and Preventionの調査では、男性のみに原因がある不妊は19%、男性と女性に原因がある不妊は18%。約4割の不妊の背後に男性がいる。にもかかわらず、不妊治療に関する400億ドル規模の市場は、ほぼ女性向けで占められている。
欧米では、食生活や運動といったライフスタイルの変化により、過去40年の間に、精子の質が50%低下したといわれる。ファーストフードを含め、西洋化したライフスタイルが全世界に広がっている点を考えると、問題は世界的だ。また、男性不妊症の原因として、精子をつくる精巣に問題を抱える造精機能障害が約8割を超えるという厚生労働省の調査結果が知られている。さらに、造精機能障害の細分類として、原因不明が5割、精巣から腹部に至る静脈がうっ血する精索静脈瘤が3割となっている。精索静脈瘤の改善には、サプリメント投与や手術が必要となる。
テクノロジーで男性向け不妊治療を支援するExSeed
この男性向け不妊治療という新しい分野に挑戦するのがデンマーク生まれのベンチャー企業ExSeedだ。同社は、スマートフォンに接続する小さな顕微鏡を用い、精子の活動を自宅で確認できるアプリを開発した。顕微鏡で映した少量の精子から、精子の質を数秒のうちに判定してくれる機能を持つ。また、人工知能を用いて、精子の質を向上するためのアクションを提案する。男性が病院で治療を受ける場合、毎度、病院の予約をとって通院する必要があった。その煩雑さが男性の治療に対する意欲を下げ、不妊治療が継続できないケースがあったが、ExSeedのデバイスの場合、自宅でいつでも検査ができるのがメリットだ。
精子の質には3つの要素がある。1つ目は精子の数、あるいは密度であり、1ミリリットルあたり1500個の精子が妊娠に必要とされる。2つ目は運動性が挙げられる。卵子に到達するには4割以上の精子が活発に運動していなければならない。そして、3つ目に形状が考慮され、いわゆるオタマジャクシのような形をした精子が望ましい。 ExSeedのアプリは、こういった要素を計算し、自動的に精子の質を判定する。
精子の質を改善するには総合的なライフスタイルの改善が求められる。酒やタバコを控え、栄養を十分にとる。運動を欠かさず、適正な体重を維持する。サウナや熱い風呂、あるいは、ノートパソコンをももの上に置くといった、下腹部の温度を上げる行為を避けるのも影響があるといわれる。顕微鏡から撮影した精子の動きに加え、ライフスタイルに関する情報をアプリに集約し、ExSeedは体質改善に関する提案を行う。
さらに、専門家からの助言が必要な際は、ExSeedのアプリを通じて医師との通話が予約できる。利用者個人にパーソナライズされたアドバイスを、いつでもアプリから呼び出せるのは、不妊治療に臨む男性にとって心強い。
【次ページ】遺伝子検査から精子の質を判定するベンチャーも
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