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  • 2019/11/05

電子カルテの基礎解説、クラウド型のトレンドや「今後の医療の発展に欠かせない」ワケ

「電子カルテ」は、医療ITを語るためには欠かせないシステムです。ですが、実際に触ったことがない人にとっては想像しづらい部分があることも事実です。本記事では、医療機関外で働く人にも、電子カルテの概要がわかるように解説します。また、注目の高い電子カルテのクラウド化や、電子カルテが今後の医療の発展に欠かせないと言われる理由についても考えていきます。

医療AIスタートアップ役員 田中大地

医療AIスタートアップ役員 田中大地

医療AIスタートアップ、アイリス執行役員COO。NewsPicks医療介護領域専門家。新卒リクルート、ベンチャーを経てヘルスケアITメガベンチャーSMS社へ。認知症領域で医療メディアを立ち上げ、約半年で60万MAUの領域No.1メディアに成長させる。その後アジア最大の医師プラットフォーム企業買収に伴い、初期PMIメンバーとしてシンガポールへ、同Web部門のヘッドとして事業開発。 帰国後、AI医療機器開発ベンチャーに参画、合わせて複数の医療ヘルスケア企業の支援を行う。ブログ「アジヘルのヘルスケアビジネス考察日記」にてヘルスケアビジネスに関する情報を発信中。

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EMR(Electronic Medical Records)とも呼ばれる電子カルテについて解説する
(Photo/Getty Images)


電子カルテとは何か

 電子カルテとは、医療機関の診療記録を電子化し、保存・管理するシステム全般を指します。

 たとえば、私たちが患者として医療機関を受診し、医師の診察を受ける際に、診察室にあるPCに向かって医師が病状や診断名を打ち込んでいる姿を見たことがあるかと思います。その際に診療記録を入力しているものが電子カルテです。

 以前は紙のカルテに記録していましたが、徐々に普及率が高まり現在大病院の多くが電子カルテに移行しています。

 なお、単に「診療記録」といっても、医療機関によって記録する情報は異なり、たとえば看護師による「看護記録」やレントゲン等の「検査記録」、薬剤師による「薬剤処方記録」等が電子カルテに記録されます。電子カルテ、とひと口にいっても医療機関により運用は異なり、記録する内容も異なっている、というのが実態です。

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電子カルテの歴史、正式に認められたのは1999年

 電子カルテの歴史はそこまで深くなく、日本で電子カルテが正式に認められたのは、1999年です。まだ生まれてから、20年程度しかたっていません。

 もともとは紙で記録されていた診療記録が、ほかの医療者や病院スタッフとの共有の観点から、電子化が進められていきました。

 それまでの紙での運用では、医療機関内の離れた場所での物理的な共有のハードルはもちろん、一部の医師は達筆すぎて、紙カルテに書いた文字が他人に読めない、といったケースも発生していたという課題もありました。

 また、CTやMRI検査といった画像データが増えていった時代背景もあり、そうした情報も一緒に管理したい、という観点もあり、電子化の必要性が言われてきました。

 そんな中、当時の厚生省により、3つの電子原則というものが定義されました。いわく「真正性(電子カルテは、書き換え、消去、混同が行われない)」「見読性(肉眼で見読可能であり、書面化できる)」「保存性(法令に定める保存期間内、保存し続けられる)」という観点から、条件をクリアすれば、カルテを電子データとして保存・管理することが認められたのです。当初は「診療支援ソフト」という名前で電子カルテが使用されていました。

電子カルテの市場規模と普及率

 電子カルテの市場規模は、シード・プランニング社の調べによると、2016年度で2,334億円となっていて、うち9割以上は病院向けが占めています。また2020年度の予測としては2,780億円とされています。市場全体では成長マーケットで、年次5-7%程度で成長していくと見られています。(注1)

注1:市場規模の数字はいずれも、シード・プランニング社「電子カルテ/PACSに関する市場調査結果」より

 普及率は、平成29年の厚生労働省調べ(注2)によると、病院全体で46.7%、クリニックが41.6%となっています。病院の中でも、病床数が400床以上の大病院では85.4%と高い導入率である一方、200床未満の病院では、37.0%とあまり浸透していません。

注2:一般的に病院とは19床以上の有床診療所のことを指し、それ以下の病床数規模の診療所を本記事ではクリニックと表記しています。

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電子カルテシステム等の普及状況の推移
(出典:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」

 これはコスト負担が大きいことが要因で、中小規模病院では電子カルテ導入が数千万円の規模になることもあります。ほかの医療機器であれば保険点数がつき、診断・治療行為を行うことで使えば使うほど収益が上がるのですが、電子カルテは保険点数がつきません。さらに院内の効率向上のシステムであるため、それだけの投資に対しては費用対効果がわかりづらいという理由から導入が進みづらくなっています。

 このように病院の規模によっても状況が異なるため、電子カルテのベンダーも医療機関の規模別に得意領域が異なっています。たとえば大規模病院向けでは、富士通、ソフトウェア・サービス、NECといった企業が強く、中小規模の病院では日立、クリニック向けではPHC(元パナソニックヘルスケアホールディングス)などが有名です。

電子カルテ普及の課題とは

 上記のデータから、200床未満の病院や、クリニックでの導入はいまだ40%前後となっており、まだまだマーケットがあるじゃないか、と思う方もいるかもしれません。

 しかし現実は、年配の医師からしたら「カルテは紙で書く方が簡単」といった意見も根強く残っています。医師の平均年齢は50才(注3)になっており、ほかの職業と比べて相対的に高齢の方が多い、という事情もあり、電子カルテの導入に消極的な医師が少なくありません。

注3:厚生労働省「平成28年(2016) 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より 

 医師へのアンケートでは、業務を楽にすると言われる電子カルテの方がむしろ紙カルテよりも入力時間がかかっている、という声も多く、実際に医師の業務時間において「外来診療が1時間増えると、電子カルテなどの事務作業は2時間増える」(注4)という調査結果もあります。

注4:Annals of Internal Medicine 2019年6月号より

 加えて、都心では医療機関のスペースが限られる中で、物理的にスペースをとられる紙カルテを保持することが大変という声がありますが、地方で十分に広さのある医療機関では紙カルテから切り替える理由もない、というのが現実です。

 一方で、PC操作に慣れた若い医師の中では、「電子カルテが導入されていない病院では働きたくない」という声も少なくありません。そのため、病院の医師不足が顕著な中、若い医師の人材確保のために電子カルテの導入を決定する医療機関も増えてきている、という話を聞きます。

 また新規開業のクリニックにおいて、電子カルテの導入率は70-80%以上と言われており、今後も普及率が伸びていくことは確実です。

 エストニアなど電子化の進んだ国では、電子カルテの普及率が90%を超えた例も見られますので、日本もその規模の普及率を目指していってほしいところです。

【次ページ】「クラウド型」の登場、業務効率化にとどまらない電子カルテの影響とは

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