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  • 2020/09/10 掲載

コロナ後の人事トレンドを一挙解説、ジョブ型雇用は進むのか?採用や評価に変化は?

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新型コロナウイルスの感染拡大により起きた半強制的ともいえるリモートワークへの移行は、企業の働き方に大きな変化をもたらした。各社はそれぞれ新たな人事制度を模索し、企業の人材戦略は大きな変革期を迎えている。大手法人を中心に1100社以上の人事部を知るWorks Human Intelligenceが、顧客からのヒアリングや独自調査を通してわかった「ジョブ型雇用」やオンラインでの採用活動など、トレンドの変化を解説する。

Works Human Intelligence 経営企画 Div. 伊藤 秀也

Works Human Intelligence 経営企画 Div. 伊藤 秀也

千葉大学文学部行動科学科卒業後、教育関連企業に入社。営業職を経験した後、インターネット系ベンチャー企業に転職し、セールスエンジニアを経験。2001年、ワークスアプリケーションズ入社。コンサルタント、HR製品の開発責任者を経て、1,100社を超えるユーザー会の企画運営を務める。現在は、Works Human Intelligenceの経営企画部門責任者として、経営戦略の立案・企業文化の醸成・組織改革等、幅広く手がけている。

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人事業務はこれからどう変化していくのか
(Photo/Getty Images)


コロナ禍で明らかになった既存制度の限界

 2020年1月16日、国内初となる感染者が確認されてから、社会は目まぐるしく変化しています。Works Human Intelligence(以下、WHI)では、大手法人ユーザーを対象に時差通勤や在宅勤務など、新型コロナウイルス対策の実施状況に関する調査を行ってきました。

 2月下旬の感染拡大初期に行った調査では、新たな対策を講じたのは全体の3割弱、既存の社内制度で対応した企業が全体の3割ほどという状況でした。ところが、4月と5月に行った同様の調査では、新たな対策を講じた企業は8~9割以上と急増しています。既存制度だけでは十分に対策しきれなかった実情が浮き彫りとなりました。

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新型コロナ対策としての時差通勤や在宅勤務等への取組み状況
(出典:Works Human Intelligence)

 以下ではコロナ禍を受けての採用・評価の変化や近年の人事トレンドについて解説していきます。


ほぼすべての大企業で進んだ採用選考のオンライン化

 大企業においては、2020年9月時点では新卒採用を含む採用計画の大幅な変更は見られません。一方で、採用選考のオンライン化はほぼすべての企業で実施されています。WHIのユーザーを対象に行った独自調査では、4月の時点で59.1%だった採用面接のWebへの切り替えが、翌月には95.4%にまで増加しており、導入せざるをえなかった状況が浮かび上がってきます。

 特に日本の新卒採用ではマッチングに独特の難しさがあり、現時点での能力よりもポテンシャルを含めた総合的な見極めが必要です。

 採用プロセスのオンライン化により、学生にとってはエントリーのハードルが下がり、採用を受けやすくなったと言えます。入社後の業務の大半がオンライン上で完結するのであれば、地元を離れたくない学生にとっても大きなチャンスです。これまでは獲得が難しかった幅広い人材を採用できる可能性も広がります。

 WHIでは5月に2日間、インターンシップをオンラインで開催し、全国各地から33人の大学4年生が参加しました。学生の声としては「地方在住なので、上京しなくても参加できるのは金銭的負担が減り、大きなメリット」とポジティブな意見があった反面、「学生同士や企業の社員とのつながりが生まれにくい」「一緒に参加する学生の雰囲気を知りたい」との声もあり、直接的なコミュニケーションの減少に対する不満が見られました。

 内定まではオンラインのみで決まるケースもあるでしょうが、その後のフォローにおいては、社内見学など実地でしかできない取り組みが不可欠です。学生側は複数社の内定をもらっていることもありますし、内定承諾の決め手として、直接自分の目で確認してもらいたいところです。魅力付けという意味合いでは、リアル(オフライン)を織り交ぜる必要があるでしょう。

 また、ひと口に業務のオンライン化といっても、向いている業種や業界があります。IT、情報通信をはじめ設計、知的生産系は確実にオンライン化しています。一方、難しいのは製造・物流・小売の現場です。小売はeコマースにするという手もありますが、物理店舗を持っている企業は簡単にはオンラインに移行できません。オンライン移行を本格的に進めるのであれば、人材定義の再考が必要になることも注意ください。

人事評価やイノベーション人材採用の変化

 業務のリモートワーク化は、人事評価にも影響を与えています。現状、WHIのユーザーにおいては、大手企業を中心に目標管理制度(MBO)が72.8%と主流です。MBOに加えて行動特性評価も実施しているのは約5割となっています。「コロナ禍を機に成果主義への移行が進むのでは」という声もありますが、大手はもともとその傾向が強かった印象です。

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MBOの実施状況と、行動特性評価の活用状況
(出典:Works Human Intelligence)

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MBOは浸透しており、一方で能力評価を継続している企業は少数
(出典:Works Human Intelligence)

 在宅勤務の拡大により、人事評価においてはフィードバックの増加が見られます。これまでは年1、2回が主流でしたが、四半期や年3回、中には毎月行っている企業もあります。リモートワークにより、上司や部下との1対1でのコミュニケーションを図ることも増えたでしょう。1on1のコミュニケーションを重視する流れにもなっており、従業員の「エンゲージメント」を重視する傾向があります。成果主義というより、成果を出すためのプロセス主義に変容しているのではないでしょうか。

 この変化の中の課題としては、「イノベーション人材の発掘」が挙げられます。イノベーション人材には、「シーズを発見する人材」と「シーズを事業化する人材」の2種類の定義があり、働き方の変容が起こったときには、「シーズを事業化するイノベーション人材」が求められます。これは社内に限った話ではなく、社外から新たな人材を採用する場合にも当てはまるでしょう。

 ここで指標となる想像力、イノベーション力の「数値化」に取り組む企業も多く、スピーディーな広がりを見せています。1つのヒントになりそうなのが、VISITS Technologiesが提供している「デザイン思考テスト」です。創造性がどれくらいあるか、創造的なものを高く評価できる力があるかなどを計測した点数と偏差値がスコアで表現されます。

 また、性格検査については、リーディングマークが提供する適性検査クラウド「ミキワメ」などがあります。これは、「性格にも特性がある」という考え方で作られているもので、たとえるなら左利きの人に無理やり右投げをさせないよう見極めるためのツールです。

 WHIでは、在宅勤務にストレスを感じるか感じないかの性格因子と組み合わせて「ミキワメ」を検証してみました。結果として「独立性」「ポジティブシンキング」が高く、「社交欲求」が低いという3つの性格因子がそろえば、在宅勤務が効率的に行えるという結果が得られました。

 ポストコロナ時代において、従業員が働きやすい環境を提供することは人事の最優先課題です。昼間は子育てに専念し、朝と夜にリモートワークで業務を行えるように制度設計を見直したお客さまもあります。従業員のライフステージに柔軟に合わせていきたいと考える企業が多い印象を受けました。

【次ページ】ジョブ型シフトは進むのか? 見直される「無限定正社員」

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