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  • 2021/10/26 掲載

露わになった自動車業界サプライチェーン「4つの弱点」、復活には「5W」を再考せよ

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新型コロナウイルスによるパンデミックは世界のサプライチェーンに大きな影響を及ぼしたが、最も強い打撃を受けている業界の1つが自動車業界だ。パーツやコンポーネントの問題もさることながら、現在の自動車は周辺領域も含めてコネクティビティー、データに強く依存しており、世界的な半導体不足も自動車の生産に影を投げかけた。こうした厳しい環境下で、信頼できるサプライチェーンを再構築するためには何が必要なのか。TU Automotive社が開催したウェビナーの内容をレポートする。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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自動車業界のサプライチェーンが持つ4つの弱点がコロナで露呈した
(出典:Interos)


業界特有の複雑なエコシステム

 自動車業界のエコシステムは、コネクティビティーとデータに深く依存している。自動運転、EVが普及する中で自動車のシステムはクラウドサービス、スマホやPCなどのアプリ、スマートシティ、スマートモビリティなどと連動し、自動運転のためのデータサービスだけではなくさまざまなコネクティビティーが要求されている。

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さまざまなコネクティビティーに依存している自動車業界のエコシステム
(出典:TU Automotive)

 今やIoTと並んでIoV(Internet of Vehicle)という言葉も生まれ、その市場規模は2024年には2,000億ドル以上に到達すると予想されている。IoVは主にV2V(Vehicle to Vehicle)、V2I(Vehicle to Infrastracture)を指すが、家庭用のIoTに接続して車の中から家電や玄関ロック、照明などを操作するものも次々と生まれている。


 このサービスにはさまざまな可能性があり、たとえば米ゼネラル・モーターズ(GM)は新たなソフトウェアプラットホーム「Ultifi」(アルティファイ)を発表した。このソフトウェアにより、特にEVシステムの無線アップデート、サブスクリプションサービス、さらに「顧客のロイヤルティーを高めるための新たな機会」が模索されるという。

 しかし、このように車のシステムが複雑化する中で、パンデミックによるサプライチェーンの遅延は多大な影響をもたらすことにもなった。特に米国内では、2021年に入り1日あたりの新車の供給量が極端に減少している。人気車種、たとえばテスラ「モデルY」などは6月の時点ですでに2021年分の予約が終了し、車を買いたくても買えない顧客が増えているのだ。

 供給不足は販売の減少にもつながり、パンデミックの始まりで落ち込んだ自動車業界の売上は2020年後半には持ち直したものの、2021年3月以降再び落ち込みを見せている。世界の半導体不足もまだ解消されず、多くの企業が遅れてきたパンデミックの影響に苦しんでいる。

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2021年に入り、1日あたりの新車の供給量が極端に減少している
(出典:Wards Intelligence)


浮き彫りになった自動車業界サプライチェーン「4つの弱点」

 今回のパンデミックは、自動車業界のサプライチェーンが持つ弱点を浮き彫りにした。それが「複雑化」「不透明性」「一極集中」「安全性の確保」の4つだ。

1)複雑化
 デジタルソーシング、専門特化型、コストの可視化などはグローバルサプライチェーンに非常に複雑な要素をもたらした。

2)不透明性
 サプライチェーンの複雑化、マルチティアのチェーン全体を通した制限された透明性により、脆弱な部分が見通せなかった。

3)一極集中
 ボトルネック、チョークポイント(重要な海上水路)、中国の役割の増大などにより、一極集中のリスクが明らかになった。

4)安全性の確保
 複雑化、制限された透明性などによりIP盗難やサイバーセキュリティの脆弱性などが増大し、法的処置を受けるリスクが高まった。

 そしてサプライチェーンの弱点をさらに複雑にしているのが、データの増大だ。Interos社の調べによると、自動車業界だけで2025年までに貯蓄されるデータ量は200ゼタバイトを超え、さらにその半分がクラウドに保存される。

 また、2025年には全世界で750億台のIoTデバイスが存在すると予測される。さらに世界人口の増大と都市化により、2030年には何らかのデータをやり取りする人口は75億人に達する見込みだ。

【次ページ】加速する「国内回帰」の流れ、再確認したいそのリスク

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