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  • 2014/03/19 掲載

リーダーの資質を問う前に考えること 難局を乗り切る最後の手段は、意志の力か戦略か

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(4)

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ここまでの連載をまとめてみると、クラウゼヴィッツからこのような学びがあった。計画が計画通りに進まないのは、「計画のもとになる情報が互に矛盾したり間違っていたり、なにより多くの部分は不確実だから」ということ。そして「情報が不測かつ不足な状況においても、いざというときは強い精神力で決心せよ」ということだ。しかし、クラウゼヴィッツ「戦争論」でも指摘されているように、問題の本質は、実はそこにはない。大ヒット漫画「進撃の巨人」を副読本に、この普遍的なビジネス課題への処方箋を探る。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

居酒屋でのグチは「リーダーの資質」か「戦略」の2パターン?

連載一覧
 プロジェクトが、計画通りに進まない。ふと周囲の状況を見回すと、不確かな情報に振り回され、時間に追われ、資金は足りず、メンバーのやる気も沈滞気味だ。どう考えても、あらゆる面で、リソースが不足している。

 こんなとき、「駄目な理由を探すんじゃない、できるためにはどうすればいいかを考えろ」とは優秀なビジネスパーソンが守る鉄則である。しかし、実際のところはさしたる妙案もなく、気がつけば飛び交うのは無内容で威勢のいいスローガンばかり。「とにかくいまが勝負時だから、ここを乗り切ろう」って、それ一年前も言ってなかったっけ・・・

 そんなときに飲み会でのグチが最終的に行き着くのは、二種類の結論である。「だいたい社長があの調子だから」か、または「うちは戦略というものが機能してないんだ」というかのどちらかだ。

 この手のグチは本質的には非建設的であり、無意味なものではある。しかし、その中に「リーダー(社長)の資質」と「戦略」というキーワードが選ばれているということは、極めて示唆的である。筆者にはその飲み屋で起こった問題提起の水準がクラウゼヴィッツ「戦争論」と同じレベルの議論に達しているのでは?とすら思える。

 前回見たとおり、クラウゼヴィッツは、「計画が、計画通りに進まない」という課題に対して「情報」の力には、限界があると断定している。そこで、どのように対処すべきかを考えた時に「意思の力で対抗する」というアプローチがある。日本人が、駄目だと思いながらも結局は頼りにする、「みんなで頑張ってなんとかする」という方法だ。

 戦争論では、この方法論に対して一定の有効性を認めつつも、それだけでは解決できないとしている。この問題の本質的な課題解決に至るためには、「リーダーの資質」及び「戦略」の二つが大切なのだ、という主張があるので、順を追って説明したい。

必要なのは意思の力である、といういかにも有力な主張

 例えば新規事業を始めようというとき、あるビジネスモデルを実際に現実化していくための「工程表」が作られる。工程表は、商品の製造拠点を作ろうとか、商品を販売していくためのチャネルを開拓しようとか、事業立ちあげに必要な工程の全体像を過不足なく分類する、ということだ。その後、「半年後にサービスをリリースしたい」という締め切りや目標に対して、逆算し、時間も含めた計画に落とし込む。

 ここで大事なのは「タスクのレベルまで工程を分解する」ということ。最終的には、できる限り具体的に、詳細に、一つ一つのアクションが明確になるように項目出しを行う。複数の人間でそれらを分担する場合は特に、個別タスクの納期設定、責任者も明確にしていく。

 これが計画策定の大枠だ。工程表が完全であれば、理屈上は、目論見通りの事業が予定日に立ち上がる、ということになる。しかし、大抵の場合「まずはこれを3日後までには終わらせよう」なんて思っていたことがゆうに一ヶ月ぐらいかかったりして、時間をかけて練った工程表がみんなパーになるという悲劇に見舞われるのだった。

 類似の案件に関する経験が多ければ、あるいは一緒に戦うメンバーがこれまで数々の戦いをともにしてきた歴戦の仲間であれば、この種の不具合の多くは避けることができる。しかし、取り組む案件の新規性が高くなるに従って、それらの助けは期待できなくなるものだ。

 この問題に対処するにあたって、最も単純で強い解決策は「強い意思によって無理やり状況を打開する」ということではないだろうか?完璧な計画は存在しない。であれば、計画が狂った時に、目標を見失わずに軌道を修正し、実現にひたすら向かい続けることしか、手立ては残されない。

 実際、世にある多くの成功物語は、計画性よりも目的を貫く「意思の力」が大切だと強調している。この問題に対して、かのクラウゼヴィッツはどのように書いているのか。

【次ページ】そもそも、戦略とは何なのか

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