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- 2014/08/12 掲載
「人」のポテンシャルを見誤らない、本当に勝てる組織ブランドの条件とは何か
【IT×ブランド戦略(26)】
組織ブランドは、ブランドイメージの認識が先にあって初めて発現する
「商品」に対してブランド的なものを感じるということと、「人」に対してブランド的なものを感じるということは、現象として共通した部分もあるが、決定的に違う部分もある。私達が商品に触れてブランドを感じる時とは、一体どのようなことが起きているのだろうか。様々なシーンでブランドというものは作用するが、ここでは最もわかりやすい場合のひとつを考えてみたい。
私達は、日々の暮らしのなかで、夢のような機能が実装された通信機器を手にしたり、素晴らしい味がする料理を食べて、その効用を実感し、感動を覚えるということがある。
「この商品はものすごく素晴らしい!一体どんな人が、どんな思いで生み出したのだろう?」
こうした経験をきっかけにして、その商品の作り手や提供者について興味を持ち、そこに刻印されたマークを記憶するということがある。これこそまさに「その人の心のなかでブランドが宿った」瞬間である。
しかし、「人」に関するブランドを考えると、そのようなことは起きない。
特定の組織の出身者が、何らかの場(ボランティアでも、PTAでも、スポーツでも、もちろんビジネスでも構わない)で目立って素晴らしい働きをして、そこに感動が生まれるということが起きるということはある。
この際に、「○○大学の人だよ」とか「キャリア官僚の人だよ」とか「××会社で期待のホープらしいよ」とか、その人の出自があらかじめ明らかにされており、その組織ブランドに対する一定の認識があれば、その後で「ああ、やっぱり、○○出身者は△△だ!」「やっぱりこの人、いかにも○○の人っぽいよね」「○○出身といっても、意外とこんなものなのか」といった理解がくる。
しかし、その人の所属組織を知らせていなければ、「この人はものすごく優秀だ!一体どんな組織に所属しているのだろう?」とは考えない。単純に、「この人の働きは素晴らしい!一体どんな風に生きてきたのだろう?」と考えるだけである。
組織ブランドは、商品におけるブランドと違って、まず受け手がそれに関する認識を持っていないと、そもそもそのブランド価値は認識されない。
「商品」とはその作り手、提供者が、独自の考え方で設計を行い、品質保証を行なって世に送り出している、まぎれもない「人工物」であるが、「人」というものは誰かの手によってそのように「生産」されるものではない。もちろん教育によって多くの要素が付与される存在ではあるが、基本的には、人とは自律的に、主体的に様々な能力を獲得するものである。
もちろん商品ブランドにも「先に伝聞によるブランドイメージ形成があって、その認知フィルターを通して商品価値を感じる」という体験はある。それはそれで大きな力となるものだが、「直にその商品に触れることが感動をあたえ、原初的なブランドイメージを形成させる」という点が、組織ブランドとの決定的な違いなのだ。
【次ページ】「人」のポテンシャルが色眼鏡を通して測定される?
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