- 会員限定
- 2014/12/02 11:00 掲載
「勝ち負け」という将棋電王戦の結果を、プロ棋士が乗り越える術はあるか?
【IT×ブランド戦略(30)】
1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。製造業DX・人材ビジネス・IT開発・新規事業などの経験から、プロジェクト活動における「未知」という難しさを痛感。解決策を模索する中で、学生時代に学んだ設計学・サービス工学のプロジェクト活動への応用を着想した「プ譜(プロジェクト譜)」は、進行設計を計画書ではなく「譜面」として表現することで、管理に寄りすぎず、柔らかな進め方ができる手法として、静かながらも長年の支持を得ている。組織マネージャ、ITプロマネ、二児の父という三足のわらじが履ききれなくなって、2019年5月に独立。企業研修や実務支援に取り組む中で、どの業界、企業、人にも共通する悩みがあると理解し、何か一助になりたいと思いながらも試行錯誤を続けている。近年はプ譜を用いた壁打ちセッションを試行中。
プロ棋士は、「勝ったか負けたか」という
対局の結果が評価される仕事
正義が勝つのか、勝った者が正義なのか。
人類の歴史が始まって以来の、常に問われてきた疑問のひとつであろう。これを一心に背負い、職業として、金と名誉を賭けて、勝負に明け暮れているのがプロ棋士である。
もちろん、プロのアスリート全般に同じことは言えるが、身体的スポーツの場合は視覚的な妙技そのものがショーとして楽しめるという側面がある。またチーム競技の場合、そこにはマネジメントも含めた総合的な物語がある。
一方で、個人競技で、互いの「読み」だけを競う将棋は、そのようなある種の通俗性が少ないため、より先鋭的な形で「勝ち負け」が問われる。
将棋のプロ棋士にとって「勝ち負け」という言葉ほど、因果なものはない。
どんな達人がやっても、どんな素人がやっても、最終的に得られる結果は「勝ち」か「負け」という同じ言葉で語られる。ゲームの内容がどんなに大差でも、どんなに僅差でも、「勝ち」は「勝ち」。これはふと冷静に考えると、不思議なことだ。
たとえば「トヨタの出身者は工程改善に強い」といった組織ブランドを考える。素人とトヨタの出身者が同じ工場のコンサルティングに取り組んだら、明確に結果は違ってくるはずだ。彼らの行為は様々な観点で計測され「改善率◯◯%」といった形で、言語化され、評価される。
しかし、将棋という一対一の勝負事の世界では「勝ったか負けたか」つまり「オール・オア・ナッシング」でしかそのパフォーマンスを測定しようがないのである。
将棋の面白さは、そのゲームの内実のわからなさゆえに「当事者にとってすら、勝ったか負けたかでしか、その意味が計測できないこともあるという、なんだかよくわからない点にもある。そしてその奥深さによって、多くの人がその魅力に取り憑かれているのは事実である。
なぜ人がそこに注目するのかと言えば、そこには抽象化された人生とも言うべきドラマがあるからだ。人生という茫洋とした戦場においていかに良い選択をするかという問題こそが、人間にとって共通のテーマであり、興味関心事である。
【次ページ】プロ棋士の「レベルの高さ」をどう表現することができるか?
デザイン経営・ブランド・PRのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR