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- 2013/11/25 掲載
【IT×ブランド戦略(17)】なぜ私達は宮崎アニメを批評したくなるのか
スタジオジブリ最新作「かぐや姫の物語」公開記念
「宮崎アニメ」は本当にブランドだったのか
今回のテーマは、第二の問題、「宮崎アニメ」は本当にブランドなのだろうか、ということだ。
日本文化における存在感。多くの人々を魅了し、ときにその人生を変えるほどの世界観。セールスその他を含めた経済的な影響力。宮崎アニメはいかなる観点においても、ブランド的な性質を持っているように思える。
にもかかわらず、「宮崎アニメは本当にブランドだったのか?」などとわざわざ問題を蒸し返すのは何事かという話だ。しかし、実はここにもブランドというものを考えるにあたって、重要なポイントが含まれているので、しばしお付き合いをいただきたい。
「スタジオジブリ」は企業名であり、その企業名はブランドとして成立している。
言い換えれば、「スタジオジブリ」=「最高峰の才能が集まる制作集団」としての評価が定着しているのだ。たとえ採用担当者が黙っていても、是非ともそこに入りたいと、多くのアニメーター志望者が集まる力を持っている。この企業に入れば、多くの制作会社に比べて相当に有利な条件でスタートできるだろうことは、想像に難くないからだ。
企業名がブランドとして成立しているということは、すなわちこういうことであって、こうしたことが企業経営におけるアドバンテージの源となるわけだ。
とはいえ「ブランド」といえば、「ヴィトンの財布」といったように、普通は企業間の活動よりもやはり、最終消費者向けのパワーを持っているかどうか、というところが問われるもの。では「スタジオジブリ」の、一般的な顧客向けのパワーが強いかといわれると、どうだろうか。
その意味で言うと、「スタジオジブリの商品」が「スタジオジブリだから」というだけで、無敵の力を持っているというよりはむしろ、そこの役割を担っていたのは「宮崎アニメ」という言葉の力によるところが大きい。
とはいえ「宮崎アニメ」が本当にブランドなのかというと、厳密に考えていくと、ちょっと違う様相が見えてくる。
ブランドの持つ力の本質とは、「『不確実な未来に対する葛藤』による『意思決定のストレス』を極めて低くする」ということだ。「宮崎アニメ」がブランドであるとするならば、それはどのようなシーンで、この力を発揮しているのだろうか?
【次ページ】「ただ面白いと知っているからもう一度観る」という話
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