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- 2016/08/02 掲載
中国人の「爆買い」終了、地方のほうがよほど深刻なワケ
中国人は今も「爆買い」している?
高島屋大阪店の免税取扱件数は6月、前年同期に比べて0.3%減った。ここ数年続いていた20~30%という急激な増加に歯止めがかかっている。同店の広報担当者は「高額品から日用品へ買う商品が変化し、1人当たりの購入金額が少なくなった」と打ち明ける。
日本百貨店協会がまとめた大阪地区の百貨店売り上げは、6月で前年同月比5.7%減の574億円。これで6カ月連続の前年割れとなった。商品別にみると、化粧品以外のほとんどの分野で売り上げが減少している。
東京も状況はよく似ている。6月の売り上げは前年同月比3.2%減の1,301億円。4カ月連続で前年割れが続いている。商品別では化粧品が15カ月連続で前年同期を上回ったのに対し、貴金属や家電製品など高額商品の落ち込みが目立つのは大阪地区と変わらない。
三越伊勢丹ホールディングスは「銀座、新宿など東京の基幹店舗では、高級腕時計など高額商品からより生活に密着した商品にシフトしてきた。買い物客は増えているが、売り上げは減少している」と現状を説明する。
中国人の財布のひもが固くなったのは、日本銀行大阪支店の調査でもはっきり表れている。今年1-3月に関西空港から入国した中国人の消費額を調べたところ、1人当たり約14万4,000円だった。1年前に比べると約3万円の減少だ。
購入品は時計など高額商品の割合が2年前の38%から24%に低下する一方、化粧品など日用品の割合が25%から45%に増えた。最も満足した商品に関するアンケートでも、高額商品を挙げる声が低下している。日銀大阪支店は「中国人の消費マインドに大きな変化が生まれた」とみている。
大手家電販売店のヤマダ電機が爆買い吸収のためにつくった東京・新橋の免税専門店を5月、オープンからわずか1年で閉店させたのも、こうした変化に対応したものと受け止められている。
中国人観光客が最も満足した購入商品に関するアンケート | |||
2014年1~3月 | 2015年1~3月 | 2016年1~3月 | |
カメラ、ビデオ、時計 | 9.5 | 6.7 | 4.2 |
電気製品 | 10.5 | 8.8 | 7.1 |
化粧水、香水 | 7.6 | 11.1 | 11.2 |
医薬品、健康グッズなど | 6.4 | 9.3 | 12 |
和服、民芸品 | 4.9 | 5.2 | 4.1 |
服、かばん、靴 | 19.9 | 19.2 | 18.4 |
マンガ・アニメキャラクター商品 | 5.6 | 5 | 8.2 |
菓子類 | 17.4 | 15.3 | 16 |
その他食品、酒、飲料品、たばこ | 7.2 | 7.4 | 8.5 |
出典:日本銀行大阪支店資料から筆者作成 |
なぜ「爆買い」は終了したと言われるのか
訪日外国人観光客の数は中国人も含め、依然として伸び続けている。日本政府観光局によると、2015年は過去最高の1,974万人を記録したが、2016年も上半期だけで1,171万人に達し、前年を上回るハイペースだ。中国人だけに限っても6月の訪日観光客数は58.3万人。前年同月の46.2万人を大きく上回っている。訪日中国人観光客の増加は、中国の経済成長と日本政府のビザ発給要件緩和、円安元高の進行が重なって発生した。中国の経済成長や円安に陰りがみられるとはいえ、訪日観光客が増え続けているのに、なぜ中国人の財布のひもは固くなったのだろうか。
理由として挙げられているのは、リピーター客や富裕層でない中間層の来日増加、円高、中国政府の関税引き上げなどだが、観光振興を目指す外国人旅行者誘致促進地域創生機構の坂口岳洋理事長は「中国政府の贅沢禁止令の影響も大きい」と指摘する。
これまで爆買いの主役だった公務員は、プレゼント用に高級品を大量に購入していた。しかし、周囲の監視の目を恐れ、購入を見合わせるようになっているという。
坂口理事長は「待っているだけで中国人がどんどん高級品を買ってくれる爆買いは、そう長く続きそうもない。百貨店の免税品売り上げが落ち込んでいるのは、その兆候ではないか」との見方を示す。
【次ページ】地方の観光客誘致はどうなったのか?
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