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- 2017/02/15 掲載
VR市場の「本当の可能性」はどこにあるのか?「ゲームに固執するとソニーでも負ける」
シリコンバレーのアナリストに聞く
VR市場の最新動向、グローブ開発やウェブVR機能など
マーク・ザッカーバーグ氏まで証人として裁判に呼ばれ話題を呼んだが、テキサス地裁は守秘義務違反は認めたものの、ZeniMax社の知的所有権侵害については否定、という結果になった。
2月1日にフェイスブックがZeniMaxに対し5億ドルを支払う合意が発表されたが、うちOculusが守秘義務違反に対し2億ドル、商標違反について5000万ドルを負担。また元CEOブレンダン・イリべ氏が1億5000万ドルを負担するなど、フェイスブック本体へのダメージは少ない、と言われる。
このように否定的なニュースはあったものの、ザッカーバーグ氏は2月9日には「Oculus VRグローブ」のプロトタイプを発表。これはヘッドセットと連動し、実際にそこに物があるかのように思わせるVRの新技術だ。
ザッカーバーグ氏は「自分の手をVRやAR(拡張現実)の世界に運ぶ新しい技術を開発中だ。このグローブをつければ絵を描いたりバーチャル・キーボードを叩いたり、銃を撃つなどのアクションができる」と自ら公開した写真にコメントを加えた。
また、グーグルは独自のクロームブラウザにウェブVR機能を付け加える、と発表。ウェブVRはすでにフィアーフォックス、サムスン、フェイスブック、マイクロソフトなどが導入しており、今回グーグルが参入することでVRが一気に広がる様相を見せている。
VR市場予測、楽観的な見通しは本当か
「2017年はVR元年になる」業界の多くがそう予言する。しかし一般の人々が気軽にVRを利用する社会は本当にすぐそこまで来ているのか。シリコンバレーでIT関連のマーケットリサーチを行うマーケン・コミュニケーションズのアンディ・マーケン氏は「一般の人々がVR技術を気軽に楽しめるようになるのは2018年、そして2020年にはVRは『普通』のものになるだろう」と語る。CB Insights社によると、米国でのVR技術に関するベンチャー投資額は2013年の2億3800万ドルから14年には7億8700万ドルに増加。2016年には一気に26億ドルを突破する見込みだ。
またグリーンライト社による予測ではVR業界の売り上げは2017年からの5年間は比較的緩やかだが、その後急カーブで上昇、2026年には年間380億ドルに達するという。
さらにIDCの調査では、2016年時点で960万台だったVR機器の出荷台数は、2020年には6480万台まで増えるとの予測だ。
しかし、このような業界の予測は楽観的に過ぎるのでは、という疑問も当然ながら沸き起こる。たとえば、リサーチ会社のSuperDataはソニーのPS VRの売上予測を下方修正しているし、フェイスブックにしてもOculusを買収し、それをどう使っていくのかという戦略はまだはっきりと見えてこない。
悲観的な理由の一つには、VRコンテンツがまだまだ「リアリティ」にはほど遠い、という現実がある。今年のCESラスベガスで、ホンダは米アニメ会社ドリームワークスと提携した車内VRエンタテイメントシステムを発表した。
車の動きに合わせてVRの世界を探索、ゲームなども行えるという内容だが、期待に反して繰り広げられる動画は平面的でシンプルだった。この機能はAR的要素も含み、近くの建物や施設の情報も得られるが、純粋にVRの映像の精度という点から見れば驚くほどの内容とは言えない。
【次ページ】VRの「本当の可能性」はどこにあるのか
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