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2017年09月19日

ソフトバンクの「対話型AI」が、阿波おどりのFAQを支えていた

ソフトバンクが自社開発した、対話型AI(人工知能)のFAQエンジン「APTWARE」(アプトウェア)。自然言語処理技術による多言語対応が特徴だ。グローバル化する利用者の対応に迫られるコールセンターからは、業務を効率化するソリューションとして期待が寄せられている。すでにコールセンターを運営するテレコメディアは、APTWAREを活用した無人/有人チャットのハイブリッド化を目指し、ソフトバンクと提携した。両社の提携で、どのようなソリューションが登場するのか。APTWAREは、コールセンターの世界をどう変えるのか。阿波おどりのFAQを始めとする先端の導入事例とともに、テレコメディアの代表取締役社長 橋本 力哉氏、ソフトバンク ICTイノベーション本部の尾曲 博隆氏に話を聞いた。

(聞き手/構成:編集部 中島正頼、執筆:井上猛雄)

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テレコメディア 代表取締役社長
橋本 力哉氏


無人チャットの“おもてなし”には限界がある

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――まずはテレコメディアの概要について教えてください。

橋本氏:テレコメディアはテレマーケティング創世記の1981年に、コールセンター業務を中心として設立しました。長い歴史があるため、顧客基盤が厚く、700社ほどのお客様がいらっしゃいます。そのほかにもBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)全般の業務にも対応しています。

――他社コールセンターとの違いはどういった点でしょうか?

橋本氏:我々の特長としましては、まず応対レベルや品質が高いこと。この点はお客様から評価をいただいています。また、“マス”の消費者とコミュニケーションを行うコールセンターとしての強みがあります。さらに7年前から多言語対応のコールセンター業務もスタートさせました。現状では300社の法人や自治体などのお客様を擁しています。国内に拠点を設けた多言語サービスという点で、高い実績を誇っています。

――テレコメディアはソフトバンクと提携し、コールセンター業務を強化していますね。その協業に至る経緯を教えてください。

橋本氏:もともとテレコメディアは、Googleの「G Suite」を扱うために、販社であるソフトバンクさんとお付き合いしていました。また多言語対応コールセンターも、エンドユーザーを介してソフトバンクさんと取引もありました。今回の対話型AI FAQエンジン「APTWARE」は、2016年にある展示会で、(ソフトバンクの)尾曲さんにお声がけいただいたことが契機となりました。

尾曲氏:実はその当時から、APTWAREは音声合成にも多言語にも対応していました。文字解析を行う自然言語処理についても、多言語に対応するように水面下で動いていたのです。AIというと無人チャットが主流の世界ですが、ソフトバンクのAPTWAREは、有人チャットとのハイブリッド化を実現できることが大きな特徴でした。

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多言語対応の自然言語処理技術による対話型AI FAQエンジン「APTWARE」の動作


橋本氏:テレコメディアとしても、多言語対応のハイブリッド・コンタクトセンターを構築したい希望がありました。ですから「渡りに船」でソフトバンクの力を借りようと思ったのです。

――コンタクトセンターを始め、企業のFAQなどで「無人チャット」は見かけるようになりました。しかしなぜテレコメディアでは、有人チャットが必要なのでしょう?

橋本氏:お客様に対する“おもてなし”を考えたとき、無人チャットでは十分にサポートしきれないのです。そこで有人チャットによる対応が重要だと考えました。また生産性の問題もあります。有人チャットは1:1での対応ですが、無人チャットは同時に平均3人ぐらいのお客様に対応できる。一見すると無人チャットのほうが生産性は高いように見えますが、お客様が文字を入力したり、考えたりする時間があるため、連続して発話することができません。

尾曲氏:無人チャットは、自ら文章生成をしているわけではないのです。あらかじめ用意されたアンサー文があり、それをベースにお客様のさまざまな“言葉の揺らぎ”を吸収し、引き当て処理をする対話技術です。そのため想定外の質問には答えられません。しかし、そういう質問にも答えなければ、本当の意味での接客になりません。たとえば、外国人観光客から「マップが欲しい」という問い合わせがあったとき、有人チャットならば、臨機応変にPDFファイルなどを配布できます。そういうことを実現できるのが、APTWAREなのです。

日・英・中・韓のマルチリンガルAIが会話を記憶

――APTWAREの機能や特徴を教えてください。

尾曲氏:第一の特徴は、日・英・中(簡体字)・韓の4か国に対応する点です。意味を持つ最小単位に(言語を)分割し、それぞれの形態素の品詞などを判別する「形態素解析」を4言語で可能にしています。英語は単語と単語の間にスペースがありますが、スペースのない言語ほど、形態素解析が難しくなるのです。そのような中、APTWAREでは中国語や韓国語でも形態素解析ができるのです。

 また、途中まで文字入力すると、該当する単語の候補をサジェストしながら絞り込んでくれます。これを初めて多言語で実現できるようにした点も大きな特徴です。さらに、サイト内検索で、誰でも自然な発話でキーワードを絞り込める新技術も搭載しています。目的が曖昧な質問をすると、それに対して「何をしたいのか?」と聞き返してくれます。雑談レベルのチャットも可能です。

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多言語で文字を途中まで入れると、候補をサジェストしながら絞り込んでくれる


橋本氏:テレコメディアのデータセンターには、多言語を操るオペレーターがいます。ですから、コンテンツの成形や生成をするのに適した環境なのです。APTWAREでは、会話内容をテキスト化し、それをExcelに蓄積できます。さらに無人での対応が難しい場合は、「どんな会話をしていたのか」「どこのページを閲覧しているか」など、その内容を有人チャット側と連携しながら処理することが可能です。

 たとえばAPTWAREには、直前の話題を記憶する「状態保持」の機能があります。「メールの操作について教えて」と問合せた場合、前の文脈で「スマホ」についての問い合わせがあれば、「スマホ」という問い合わせ内容を記憶しているため、 スマホのメール操作について回答できるのです。このように、会話をしっかり引き継げることが重要なのです。

――競合他社のコールセンターでは、こういったサービスは提供していないのですか?

橋本氏:そうですね。コンシューマーの問い合わせに対し、国内でオペレーターが対応したり、複雑な専門領域を多言語でサポートしたりしているのは、テレコメディアだけだと思います。

尾曲氏:音声合成で発話し、APTWAREで考え、その知恵をオペレーターが与えるという図式です。ソフトバンクはクラウドでAPI(Application Programming Interface)を提供し、事業テナントをパートナー企業に払い出しをしています。つまりAPTWAREという“祭り場”で、パートナー企業さんにいろいろな“お店”を出してもらい、お客様の接点となるインタフェースの部分を開発していただいているのです。

橋本氏:知恵をオペレーターが与える部分――想定問答をAIに覚え込ませる部分――に、ソフトバンクの価値があると考えています。最終的にお客様が求める答えは数パターンしかないのですが、それに対する問い掛けのバリエーションを紐づける作業が重要になります。先述した通り、APTWAREならばこの処理をExcelで簡単に実現できるのです。大量の“教師データ”を用意する必要もありません。

 またAIによるFAQ回答率についても、シミュレーションによってリアルタイムで結果がわかる点も便利です。「あるフレーズを追加してから質問をすると、どのくらい回答率が向上するのか」や、「データとしてどのような言葉が足りないのか」といったことがわかるのです。必要なキーワードを示唆してくれるため、類似の言葉も多く登録できます。

【次のページ】阿波おどりで活用、徳島県からも高い評価

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