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  • 2017/10/18

日本版DMOとは何か? 地域観光業活性化の組織が抱える課題とは

東京都と地方の格差が拡大する中、日本でも地域活性化を目的とした「DMO(Destination Management Organization)」に注目が集まっている。DMOとは、地域の観光資源に精通し、地元と連携しながら観光名所を作り出す法人のこと。海外では一般的な仕組みだが、ようやく日本でも本格化している。一方で、ここ数年の取り組みから、多くの課題も明らかになってきた。ここでは、日本版DMOが必要とされる背景やその役割とともに、現在、日本版DMOが直面する課題について基礎から解説する。

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もある。

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ITなども活用して地方創生をけん引するDMOだが課題も多い
(©Route16 - Fotolia)

DMOとはいったい何か?何をするためのものか

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 ここ最近「DMO」という言葉をメディアなどで目にする機会が多くなった。DMOとは「Destination Management Organization」の略で、自然、食、芸術、芸能、風習、風俗など、それぞれの地域にある観光資源に精通し、地域と協力しながら観光地域を作り出す法人のことを指す。

 海外では、地場に根付いた法人が活発に機能することで、観光客の集客にも成果が出始めており、日本でも観光庁が主導する形で、「日本版DMO」を支援する動きが始まっている。

 観光庁によれば、日本版DMOは地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役となることが期待されているという。

 そもそも、観光地域づくりを実現するには、多様な関係と協力しつつ、明確なコンセプトに基づいた戦略を策定しなければならない。つまり、日本版DMOはこれらの戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人であることを狙った存在であると言える。

日本版DMOに求められる3つの役割

 日本版DMOの役割を分かりやすくまとめると、以下の3つが挙げられる。

  1. 内外の有益な人材・ノウハウを積極的に取り込むことで、関係者間の連携を高める
  2. 観光活性化に必要なデータの収集や分析をしっかりと行う
  3. 行政の発想だけにとらわれることなく、民間の手法の導入を行う

 以上を踏まえると、これまでの地域の観光開発にはない部分をしっかりと確立させることや、地域の中心的存在として観光を盛り上げること、そしてデータに基づいた施策を実施することなどが、日本版DMOの主な役割と言えるだろう。

国内観光事業の市場規模について

 観光庁が発表している「旅行・観光消費動向調査平成28年年間値(確報)」によれば、2015年の日本人国内旅行の消費額は20兆9,547億円で、前年比2.7%の増加となっている。このうち、宿泊旅行消費額は16兆0,335億円で前年比1.4%増、日帰り旅行消費額は4兆9,212億円で前年比7.1%増となった。

 ちなみに、日本人の国内旅行者数は6億4108万人(前年比6.0%増)となり、このうち宿泊旅行は3億2,566万人(前年比4.0%増)、日帰り旅行は3億1,542万人(前年比8.1%増)で、景気回復を背景とした旅行者数増が目立つ結果となった。

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日本人国内旅行消費額の推移
(出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査平成28年年間値(確報)」)


 一方、海外からの外国人観光客が消費した金額(インバウンド消費額)も、2016年の訪日外国人全体の旅行消費額(確報)は3兆7,476億円となって、前年に比べて7.8%も増加した(観光庁の「訪日外国人消費動向調査 平成28年年間値(確報)」より)。インバウンド消費額は2011年から右肩上がりを続けており、年換算で30%超と世界でも最速の成長を遂げている。

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訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移
(出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査 平成28年年間値(確報)」)


 日本政府は、東京オリンピックが開催される2020年の年間訪日外国人客を4000万人まで増加させる計画を打ち立てており、インバウンド消費のさらなる拡大が予想されている。

日本版DMOの設立に必要なこととは?

 日本版DMOを設立するには、まず候補となる法人の登録が必要となる。登録対象となるのは、地方公共団体と連携して観光地域づくりを行う法人であり、DMOの登録区分としては以下の3つが設定されている。

・広域連携DMO

 複数の都道府県にまたがる地方ブロックを1つの観光地域として、マーケティングやマネジメント等による観光地域づくりを行う組織

・地域連携DMO

 複数の地方公共団体に跨がる区域を1つの観光地域として、マーケティングやマネジメントなどによる観光地域づくりを行う組織

・地域DMO

 基礎自治体である単独市町村の区域を1つの観光地域として、マーケティングやマネジメント等による観光地域づくりを行う組織

 このDMO登録業務の主体は国(観光庁)だ。また、DMOには支援制度が設けられる予定で、「まち・ひと・しごと創生本部」の新型交付金による支援の対象となる。

 それに加えて、観光庁をはじめとする関係省庁(観光庁、国土交通省、内閣官房、総務省、金融庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)で構成される観光地域づくり関係省庁連携支援チームによる重点的支援も実施されることになっている。

日本版DMO候補法人の状況

 観光庁の開示情報によると、すでに多くのDMO候補法人が名乗りをあげている。2016年8月末時点で、広域連携DMOは4件提出されているが、それらはすべて特殊法人の機構組織だ。そのため、官民一体となって立ち上げた法人で構成されていることが1つの特徴といえるだろう。

 また、地域連携DMOも同様で、公的なものに近い法人が名乗りをあげている状況である。一方、地域DMOの領域は、本民間法人企業も候補として手を挙げている。

 これらを踏まえると、地域が限定されればされるほど、本来の民間企業が関与しやすい状況になることがうかがえる。もともと地方公共団体との連盟で登録をする形になっているため、どうしても公的な機関に近い法人が登録する傾向が強くなっているのである。

具体的な登録プロセスについて

 日本版DMOの具体的な登録のプロセスは以下の通り。

1.地域からの申請

 地域で日本版DMOの役割・機能を担おうとする法人が、当該地域における日本版DMO形成・確立計画を作成し、それを地方公共団体と連名で提出する。

 登録の対象となる法人は、登録申請の時点で、実際に存在し、活動している必要はない。法人を立ち上げる構想や意欲を持っていれば、構想段階での登録申請も可能だ。この点の柔軟性は高いといえよう。

2.観光庁による登録

 観光庁が行う形成計画の審査に通過すれば登録となる。この審査によって、日本版DMO候補法人としての登録を受けた法人は、少なくとも年に1度、取り組みの評価・検証等を実施しなくてはならない。そして、その結果を事業報告書等にまとめ、観光庁に報告する必要がある。

日本版DMOの登録要件について

 観光庁によると、DMOに登録するには、以下の要件を満たす必要がある。

(1)日本版DMOを中心とした観光地域づくりにおいて、多様な関係者の合意形成ができること

 次の1~4のいずれかに該当する、または該当する予定であること。

  1. 取締役、理事など日本版DMOの意思決定に関与できる立場で行政、文化、スポーツ、農林漁業、交通等の幅広い分野の関係団体の代表者が参画すること
  2. 日本版DMOの組織内に行政や関係団体をメンバーとするワーキンググループなどの委員会等を設置すること
  3. 日本版DMOが行う取組に関する連絡調整を行うため、DMOとは別に、行政や関係団体から構成される協議会等を設置すること
  4. その他、関係者の合意形成が有効に行われる仕組みが存在すること


(2)各種データ等の継続的な収集・分析、データ等に基づく明確なコンセプトに基づいた戦略の策定、KPIの設定・PDCAサイクルが確立されていること

 次のすべての取り組みを行っている、または行う予定であること。

  1. 各種データなどの継続的な収集・分析
  2. データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略の策定(地方公共団体が策定する観光振興計画が存在する場合は、当該計画と戦略との整合性をとるための見直しができること
  3. KPIの設定・PDCAサイクルの確立


(3)関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション

 次のすべての取り組みを行っている、または行う予定であること。

  1. 地域社会とのコミュニケーション、地域の観光関連事業者への業務支援を通じて、関係者間で戦略を共有すること
  2. 地域が観光客に提供するサービスについて、維持・向上・評価する仕組みや体制を構築すること
  3. 観光客に対し、地域一体となって戦略に基づく一元的な情報発信・プロモーションを行うこと


(4)日本版DMOの組織

 以下のすべてに該当している、または該当する予定であること。

  1. 法人格を取得していること
  2. 意思決定の仕組みが構築されていること
  3. 専門人材が存在すること
    (とくにデータ収集・分析等の専門人材CMO等がDMO専従で最低1名存在している、または確保する予定であること)
  4. 安定的な運営資金の確保


 以上を踏まえると、設立要件はそれなりに厳しいものといえるが、それと同時に「データ分析に専門性を発揮できる人材が確保されていること」を要件として強調していることがわかる。

【次ページ】国内の取り組み事例と大いなる課題

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