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  • 2017/12/18 掲載

ブロックチェーンの新テクノロジー一覧、ハイプサイクルでわかる「これから来る技術」

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ブロックチェーンに対する過剰なまでの期待が高まっている。ビットコインはじめ、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)やアルトコインといった新しい活用方法のほか、多様な業界での利用の模索も続いている。しかし、このテクノロジーはまだ発展途上であり、企業として取り組む場合には未知のリスクもある。ガートナーのリサーチ部門でバイス プレジデント 兼 ガートナーフェローをつとめるデイビッド・ファーロンガー氏が、ブロックチェーンのハイプサイクルからテクノロジー一覧を読み解くとともに、企業導入にまつわるさまざまな課題の解決方法を解説する。
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ブロックチェーンで注目するべきはビットコインだけではない
(© noumasa – Fotolia)

※本記事は「Gartner Symposium/ITxpo 2017」の講演内容をもとに再構成したものです。

ハイプ・サイクルから読み解くブロックチェーンの実情

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 ブロックチェーンに対する熱気は高まるばかりだが、企業はこのテクノロジーで成功するための投資のタイミングをどのように見極めればよいだろうか。

 Gartner Symposium/ITxpo 2017に登壇したガートナーリサーチのバイスプレジデント兼ガートナーフェローのデイビッド・ファーロンガー氏は、ブロックチェーンを取り巻く現在の状況を「過剰な宣伝が続いている」とみており、ハイプ・サイクルに照らし合わせて冷静に判断することの重要性を説いた。

 ハイプ・サイクルとはイノベーションとテクノロジーの成熟度(期待度)が時間の経過とともに変化していくパターンをグラフィカルに表したモデルで、大きくは「黎明期」「『過度な期待』のピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産性の安定期」という5つのフェーズで推移していく。

 ファーロンガー氏が示したブロックチェーン関連テクノロジーの2017年のハイプ・サイクルによると、ブロックチェーンはもとより分散型台帳や暗号通貨ソフトウェア・ウォレット、暗号通貨ハードウェア・ウォレット、サイドチェーン/チャネルといったキーワードが「過度な期待」のピーク期にある。

 この時期こそ熱狂的な過度の期待が生じて非現実的な予測が行われるフェーズであり、広範かつ頻繁な宣伝活動によって早い段階からさまざまな成功事例が生まれてくる。ところがテクノロジーが限界に達すると、一転して失敗事例が目立ち始めるようになり幻滅期に突入していくのだ。

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ブロックチェーン・テクノロジのハイプ・サイクル:2017年 (世界市場)
(出典:ガートナー)


 実際、ブロックチェーン関連のテクノロジーは将来に対する不確実性が非常に高い。「データのスタンダードもなければ、アーキテクチャーのスタンダードもありません。分散台帳が異なれば相互運用性も保証されません。しかもこれらのテクノロジーはビジネスと切り離せないだけに、導入には慎重な判断が求められます」とファーロンガー氏は強調した。

ブロックチェーンの最新トレンドと留意すべきポイント

 現在、ブロックチェーンの周辺ではどんなトレンドが起こっているのだろうか。

 ファーロンガー氏によると、これまでの方法を代替する新興企業の新たな資金調達が急増している。たとえばICO(Initial Coin Offering)に着目すると、レイヤー化されたアルトコインとトークン発行が急増し、資本調達のための新しいメカニズムとして定着しつつある。

 これによりDapps (分散型アプリケーション) の構築と、流動性のない機能/資産のマネタイゼーションが促進されているのだ。「各国の規制当局の立ち位置や成熟度がどれくらいのレベルに達しているのかも見据えつつ、それぞれのメカニズムが上手く機能するかどうかを見極めなくてはなりません」とファーロンガー氏は語った。

 ICOは株式投資のIPO(Initial Public Offering)ともよく比較されるように、新規未上場の仮想通貨が上場前に売り出されるため非常に高いパフォーマンスを期待できるといわれているが、そのぶん高いリスクが伴うことをしっかり認識しておく必要がある。2017年4月に施行された我が国の改正資金決済法の要件を満たしていない仮想通貨も珍しくなく、詐欺の温床となっているケースさえあるのだ。

 また、サプライチェーンと在庫における生産性/効率性の向上へのニーズ増大を受け、企業向けの「エンタープライズ」あるいは「プライベート」と呼ばれるブロックチェーンの試験的導入が進んでいるが、これについても注意が必要だ。「誤解や不整合があると、結局失望して終わってしまいます」とファーロンガー氏は警告した。

 エンタープライズ/プライベート型のブロックチェーンは基本的には既存のテクノロジーを継承しており、集中型のデータベースで台帳を管理している場合もある。すなわち広範な分散型のノードでトークンをやりとりすることはできず、ブロックチェーン本来のメリットを得ることは困難となる。

 「いずれにしても今後、プライベートとバプリックのブロックチェーンの考え方はもっとあいまいになっていき、台帳の融合も進んでいくと考えられます。その意味でもどのテクノロジーに投資をすべきか見極めることが重要なのです」とファーロンガー氏は強調した。

 そしてもうひとつ留意すべきポイントは、各国で規制が異なり企業のリスク管理もまだまだ未熟であることだ。この観点から注視しなければばらない項目は、プライバシーとセキュリティをはじめIAM(IDとアクセス管理)、データ管理、トークン、スタートアップ、標準の存在まで広範な領域にまたがることになる。

 一方でブロックチェーン関連テクノロジーは、さまざまな業界において活用の検討が広がっているのも事実だ。これまでブロックチェーンの導入に率先して取り組んできたのは金融サービス業界で、世界ではすでに約31%企業がPoC(概念実証)に乗り出していると見られる。

 これに対して他業界のブロックチェーン導入率は依然として3%未満にとどまっているものの、政府機関(10%)、ICT(9%)、メディア(8%)、決済(7%)、小売(6%)、法曹界・E&U(5%)、製造・医療/製薬(4%)などの業界で、平均を上回るブロックチェーンの導入が始まっている。

 ファーロンガー氏は「ブロックチェーンのビジネス面の付加価値は、2015年に1,760億ドル、2030年までに3.1兆ドルに達する」という市場予測を示すとともに、「今後ブロックチェーンは、スマート・アセットやキャッシュレスなどによる新しいビジネスモデルを生み出していくでしょう」と語った。

 これは従来のeコマースやデジタル・ビジネスに続く「プログラマブル・エコノミー」とも呼ばれるもので、スマートで自律的なモノが新しい形のインタラクション、価値体系の民主化とディスラプション(創造的破壊)を促し、その成果として新しい経済システムを確立していくと予測されている。

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ブロックチェーン・ビジネスのハイプ・サイクル:2017年 (世界市場)
(出典:ガートナー)


【次ページ】ブロックチェーンのスキルセットをどう獲得すればよいのか

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