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  • 2018/06/05

中国フィンテック市場が伸び続けるワケ、背後にアリババ・テンセントら「三馬」の戦略

連載:中国への架け橋 from BillionBeats

中国ではキャッシュレス生活が完全に普及している。フィンテックが庶民の生活を一変させた。牽引するのは同じ「馬」の姓をもつ3人の経営者だ。中国の動向は、日本のフィンテックの発展に大いに参考になるはずだ。本稿では「三馬」が率いる中国フィンテック企業の分析と戦略の核となるプラットフォーム化を考察したい。

大内昭典+BillionBeats

大内昭典+BillionBeats

BillionBeats(http://billion-beats.com)は、ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト。 パートナーの大内昭典は、大学在学中に公認会計士試験合格、米系証券会社投資銀行部門を経て、北京にある長江商学院でMBA取得。中国で企業投資に6年間従事。

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“三馬”のひとり、テンセント創業者の馬化騰(ポニー・マー)氏(中央)
(写真:ロイター/アフロ)

アリペイの年利は4%、当たり前になった中国のキャッシュレス/財布レス

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 中国の平均的な都市生活者のマネー管理をご存じだろうか?

 彼らは給料が銀行に入ったその日に全額、スマホの中に入れているアリペイに送金する。理由は明快だ。アリペイ(の金融商品)の年利は約4%もつくのである。さらに、毎日(日割りの)利子がつくうえに、いつでも自由に出し入れできる。

 アリペイとウィーチャットを使えば、コンビニ、薬局、町の食堂など、どこでも支払い可能で現金はなくても生活にまったく困らない。さらに、ウィーチャットの中にあるミニプログラムという機能(アプリの中から利用できるアプリ)を使えば、わざわざ企業のホームページやアプリを立ち上げることなく、ウィーチャットからすぐに企業のサービスを利用できる。アプリの中でポイントを貯めて管理できるので、会員カードも持ち運ぶ必要がない。

 これが中国人のマネー管理の現状であり、筆者が深センで通う中国語学校の教師は、「もう1年半以上財布を持ってない」と話した。

 モバイルアプリを利用した中国のキャッシュレス、「財布レス」生活は日本のはるか先を行っている。このような中国の世界最先端フィンテックを牽引するのは「三馬」(サンマー)だ。

世界を牽引する中国フィンテック企業

 「三馬」とは、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)、テンセント創業者の馬化騰(ポニー・マー)、民営保険大手・中国平安保険創業者の馬明哲のことである。三馬は、中国にとどまらず、世界のフィンテック市場をリードしている。

 世界で最も成功しているフィンテックイノベーターを紹介する「Fintech100」を見てみよう。KPMGがH2 Venturesと共同で行っているこのランキングの最新版(2017年版)では、中国企業がトップ3を独占し、さらに6位にも入っている。いずれも三馬が関わる企業だ。

順位会社名主要な株主(持ち分)
1位アント・フィナンシャル2018年5月現在、ジャック・マー(実質過半数) → 2018年中にアリババが33%取得で合意済み
2位衆安保険アント・フィナンシャル(13.5%)、テンセント(10.2%)、中国平安保険(10.2%)
3位Qudian(趣店)アント・フィナンシャル(11.5%)
6位Lufax(陸金所)中国平安保険(43.7%)


 スピードと規模が求められるフィンテック市場で世界のトップを疾走するこの三馬の企業のあらましは、次の通りだ。

 首位はアリババの金融事業を率いるアント・フィナンシャル。決済サービス「アリペイ」(MAU5.2億人)を軸にプラットフォーム化したアプリ上で金融・生活サービス全般を展開。

 業績はNY上場のアリババのアニュアルレポートより、2017年税前利益132億元(2,244億円)と分かる。未上場だが直近の投資ラウンドの企業価値は1500億ドル(16.5兆円)と、三菱UFJフィナンシャル・グループの時価総額、約10兆円を大きく上回る(1USドル=110円、1香港ドル14円、1人民元=17円換算、以下同)。

 収益源は多様化しているが、主にアリババのネット通販向けの決済業務で決済全体の約3割を占める(決済の手数料率約0.6%)。一方、利益は小口融資事業の花唄:ホワベイ(注1)と借唄:ジエベイ(注2)の税後利益が80億元(1,360億円)(推定)にも上り、アリペイで個人の決済と信用情報を広く押さえ、融資で稼ぐ構図が見える。

注1:小口融資サービス。クレジットカードと同様、当月消費翌月一括払い(無利子)、分割払い(有利子)
注2:小口融資サービス。短期(4-45日)は年利率14-15%、長期(3-12カ月)は年利率12-13%

 2位の衆安保険は、2013年に三馬が結集して設立した、中国初のネット専業の損害保険会社だ。三馬など提携先の顧客を活用し急成長を遂げ、2017年6月に香港上場。時価総額は740億香港ドル (1.0兆円)、世界最大のInsurTech(保険×テクノロジー)企業だ。2017年売上のうち実に60.5%は三馬を主とした5社の提携先からの収入であり、三馬がその事業を支える。

 3位のQudian(趣店)は、2014年設立のネット専業の小口融資会社。2015年8月にアント・フィナンシャルから2億ドル(220億円)の出資を受け、アリペイとの提携を開始。膨大なアリペイの顧客と信用スコア「芝麻信用(Zhima Credit)(注3)」を活用し、事業を一気に拡大して2017年10月にNY上場した。その業績は2017年売上47.5億元(811億円)、税後利益21.6億元(367億円)と高収益企業だ。

注3:アント・フィナンシャルが独自開発した個人信用評価スコア。アリペイの決済履歴、学歴、家や車など資産保有情報などから個人の信用力を点数化し、評価点数が高い人には、ローン枠の増額や金利優遇、賃貸住宅やホテルのデポジット不要などさまざまな生活サービスでメリットが享受できる

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「FinTech100」に入った中国企業は9社だが、そのうち5社がトップ10(1位~3位、6位、9位)に入った(9位はEC大手JDドットコムの金融部門が独立したJDファイナンス)
(出典:KPMG 報道発表)
 6位のLufax(陸金所)は中国最大の個人間融資ネット仲介事業(P2P融資)を軸にプラットフォーム化したアプリ上でさまざまな投資商品を販売する。

 中国平安保険が設立して現在も43.7%出資している、同社のフィンテック事業を代表する企業である。中国平安保険の高いブランド力と信用力を背景に、投資利回りは年利4-8%と高収益が人気を集めている。2017年に黒字化を果たし、直近の投資ラウンドでの企業価値185億米ドル(約2兆円)、今年中に香港上場予定である。

 また補足すると、テンセントの金融事業は分社化していないためこのランキングには入っていないが、ウィーチャットペイ(月間アクティブユーザー 8億人)を軸に、アリペイと同様にプラットフォーム化したアプリ上で金融・生活サービス全般を展開している。

 アリペイとウィーチャットペイの決済シェア(2017年末)はそれぞれ54.2%、38.1%と、メッセンジャーアプリから金融、生活アプリ全般へと事業を拡大させ、徐々にアリペイに迫っている。業績は非開示で年間収支はいまだトントンとの臆測があるが、中国の証券会社の試算では金融事業のみで推定の企業価値1200億ドル(13.2兆円)と、アント・フィナンシャル1500億ドル(16.5兆円)に迫る高い評価を得ている。

【次ページ】中国を成長させる、三馬のプラットフォーム戦略

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