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  • 2018/12/14 掲載

まだ人工知能を「検討」? 先進企業が注力するAIの“用途とスキル”

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多くの企業では、AIをブームとして扱うのではなく、実際に「導入し、活用するもの」と認識しつつある。AIの「導入の仕方」も再考の動きが進んでおり同時に、AI時代に求められる人材のあり方に注目が集まっている。 未来に備えるには何に注力するべきなのか。さまざまなコンサルティング企業や官公庁の資料や調査から実態を読み解いてみよう。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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人工知能を検討する段階は終わりつつある
(©taa22 - Fotolia)

「AI導入」の現実と未来

 AIは単なるブームで終わりそうもない。多くの企業で、AIを「情報収集段階」から「具体的なAI導入」へ、再考する動きが見られる。同時に、「AI時代の求められるスキル」も注目されている。

 調査会社のガートナー ジャパンは10月に、「人工知能 (AI) の推進に関する提言」を発表した。2018年のハイプ・サイクルでは、AIは「過度な期待」のピーク期の中でも、幻滅期の直前に位置付けられている。

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人工知能は「過度な期待」のピーク期から幻滅期へ
(出典:ガートナー)

 多くの企業がAIの概念実証(Proof of Concept:PoC)を行ってきたが、2018年後半から一連のブームは去りつつあり、市場ではAIを冷静に捉えるようになっているという。

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 経営者は現場に対し「AIの導入を検討せよ」という指示だけを出し、現場もAIの提案依頼をベンダーやシステム・インテグレーターに丸投げという状況が散見されている。

 「AI導入事例」は多く紹介されるようになっているものの、スポット的な改善やアピールを目的したケースが多い。現場だけの短期的な改善ではなく、中長期の継続的改良を前提とした戦略的なアプローチが求められるとしている。

 ガートナーでは、「中長期の観点で自らリスクをとり、自らの戦略的意思を持って『顧客満足度の向上』『競争優位の確立』『企業価値の向上』などを狙ってAIプロジェクトを進める必要性」を示している。これは、AIの本質とリアリティを理解していることを前提だ。

 そして企業は、AIに関する取り組みを再考する時期にきているという。特にAI関連の人材投資を加速し、「AIを自分で操るスキルを獲得すべく準備を開始する必要性」を指摘している。

 AIの導入が進むことで、社員の働き方や人材戦略のあり方も大きく変わることが予想される。

 米調査会社のIDCは11月、デジタルトランスフォーメーションに関する予測「As Global Leader in Digital Transformation Market Research, IDC Reveals Worldwide Digital Transformation Predictions」を公表した。

 その中で、AIによる働き方に関しても予測している。

Prediction 6: By 2023, 35% of workers will start working with bots or other forms of AI, requiring company leaders to redesign operational processes, performance metrics, and recruitment strategies.

予測6:2023年までに、35%の労働者がボットやAIを活用して業務を行うようになり、企業のリーダーは、人材の運用プロセス、パフォーマンス指標、採用戦略を再設計する必要があるだろう。

 「35%の労働者がボットやAIを活用して業務を行う」という予測にもあるように当面、すべての業務がAIに置き換わることは現実的ではない。社員とAIとの間にどのような補完関係を作るかということが重要となる。

 ここで、社員とAIとの補完関係について整理する。社員とAIとの補完関係では、以下のような3つのアプローチが考えられる。

<マネジメントアプローチ>
企業の経営者や管理職が、これまで社員が対応していた単純業務をAIに置き換えて、自分自身は事業推進にあたっての統合的な判断を行う「マネジメントアプローチ」がある。たとえば、コールセンターでAIがチャットボットやRPAなどの自動化のタスクを行い、コールセンター業務を統合的にマネジメントするといった役割だ。

<コアアプローチ>
企業の社員が自分の業務において、AIに置き換え可能なタスクをAIに任せて、自分自身はコアとなる業務に集中する「コアアプローチ」がある。たとえば、公認会計士がデータ処理をAIに任せて、自分自身はユーザー開拓や財務などのアドバイスによる信頼関係の構築など、人間にしかできないコアな業務に労力を費やすといった役割もある。

<介入アプローチ>
業務の多くがAIによる自動化がされた中で、社員によるプロセスチェックや最終判断などを行うことで、自分自身の価値を発揮するというアプローチもあるだろう。

 このように、AIとの補完業務が増えていくと、人材リソースをどのように運用し、AIがやったことも含めてどのように社員のパフォーマンスを評価するかが問われる。どのような人材を求めていくかといった、企業の人材戦略にも大きな影響を与えるだろう。

「AI人材」に必要な能力

 では、企業はAI関連のどのような人材を求めているのだろうか。

 コンサル大手のDeloitteは2018年10月、「State of AI in the Enterprise, 2nd Edition」を公表した。この調査は、米国の“アーリーアダプター企業”の幹部1100人を対象に実施している。

 企業の多くは、データの分析や活用のできるAIやコグニティブ関連の人材不足を感じており、AI関連で求められる人材の上位は以下のとおりとなる。

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AI関連で求められる人材
(出典:Deloitte State of AI in the Enterprise, 2nd Edition 2018.10)

 最もニーズが高いのが、AI researchers(AI関連の研究員)の31%となっている。続いて、AI software developers(AI関連のソフトウェア開発者)が28%、Data scientists(データサイエンティスト)が24%と続いている。

 上位に続くのが、User experience designers(UXデザイナー)の23%やChange Management/ transformation experts(マネジメント変革者)22%  となっている。

 AI researchersは、業界をリードするような新規のAI関連のアルゴリズムやシステムを見つけ出すことが求められているという。

【次ページ】日本は「AIの活用余地が大きい」

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