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  • 2019/01/30

公共施設の民営化は問題ないのか? コンセッション方式にも欠点がある

国や地方自治体が施設の所有権を持ったまま、運営権を民間に任せる「コンセッション方式」による民営化が全国に広がってきた。空港は大阪府の関西空港、宮城県の仙台空港など7空港を民間が運営しているほか、和歌山県の南紀白浜空港など3空港が4月から民営化される予定(関連記事)。有料道路や下水道、文教施設でも民営化した例がある一方で、上水道では各地で民営化に反対する住民の声が上がっている。奈良県立大地域創造学部の下山朗教授(地方財政論)は「コンセッション方式の民営化にもデメリットがある。国や自治体はリスク対応を忘れてはいけない」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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大津市企業局が入居する大津市役所別館。ガス事業は4月から大阪ガスなど民間3社に委ねられる
(写真:筆者撮影)

南紀白浜空港は民間の発想で観光振興に期待

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 白浜温泉とアドベンチャーワールドのジャイアントパンダで有名な和歌山県南部のリゾート地白浜町。

 首都圏からの玄関口となる南紀白浜空港は和歌山県が管理する地方空港だが、4月からコンセッション方式で民営化される。運営を受け持つのは東京のコンサルタント会社経営共創基盤など3社で構成する南紀白浜エアポートだ。

 南紀白浜空港は日本航空グループのジェイ・エアが東京羽田空港線を1日3往復運航している。年間の搭乗客は2017年度で約13万2,000人。主に首都圏からの観光客が利用しているが、運航便数、搭乗客数とも少なく、早急な黒字化は難しいとみられている。

 そんな中、南紀白浜エアポートは機材の大型化や国際チャーター便、ビジネスジェットの誘致などで2028年度に年25万人に利用客を増やす目標を掲げた。和歌山県が負担する運営費は10年間で上限31億円とされていたが、これにより24億5,000万円に抑えられるという。

 白浜町はリゾート地として西日本では絶大な知名度を持つが、首都圏以北では西日本ほど名前が浸透していない。和歌山県港湾空港振興課は「熊野古道や潮岬など県南の観光名所は多い。民間の柔軟な発想で空港を活性化し、県南の振興につなげてほしい」と期待する。

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4月から経営共創基盤などでつくる南紀白浜エアポートがコンセッション方式で運営を始める和歌山県の南紀白浜空港
(写真:筆者撮影)
 4月からは国管理の福岡空港、静岡県管理の静岡空港も同じ方式で民営化される。民営化される空港はこれで10になるが、さらに北海道内7空港と熊本、広島の両空港も民営化に向けた準備が進んでいる。

有料道路、下水道、文教施設でも相次いで活用

 コンセッション方式は国や自治体が施設の所有権を残し、運営権を民間事業者に設定する制度で、2011年のPFI法改正で導入された。国や自治体は運営権設定の対価を民間事業者から受け取り、民間事業者は公共施設を使って自由度の高い運営ができる。

 背景には国や自治体の深刻な財政難がある。運営費に民間資金を充てて国や自治体の支出を減らしながら、民間の柔軟な発想で公共施設の新しい可能性を切り開き、地域振興につなげようとしているわけだ。国や自治体に施設の所有権を残すのは、行政側が一定の統治機能を維持する思惑もある。

 内閣府によると、コンセッション方式による民営化は2015年以降、空港以外でも幅広く実施されている。2018年7月現在では、有料道路で愛知県道路公社、下水道で浜松市、文教施設で国立女性教育会館(埼玉県嵐山町)が民営化に踏み切った。公営住宅は収益型事業、公的不動産利活用事業を含めると、神戸市、東京都など6自治体が事業契約を結んでいる。

コンセッション方式による民営化の主な国内事例
空港名事例
仙台空港 東急電鉄などが出資する仙台国際空港会社が2016年7月から事業実施
関西空港・伊丹空港 オリックスなどでつくる関西エアポートが2016年4月から事業実施
神戸空港 オリックスなどでつくる関西エアポートが2018年4月から事業実施
高松空港 三菱地所などでつくる高松空港会社が2018年4月から事業実施
鳥取空港 鳥取空港ビル会社が2018年7月から事業実施
愛知県道路公社 前田建設工業を中心とする愛知道路コンセッションが2016年10月から事業実施
浜松市下水道 仏ヴェオリアなどでつくる浜松ウォーターシンフォニーが2018年4月から事業実施
高知県須崎市下水道 須崎市が2018年2月、実施方針を発表
旧奈良監獄 法務省が2017年12月、清水建設などでつくるコンソーシアムをホテル利用の優先交渉権者に
大阪中之島美術館 大阪市が2018年10月、実施方針を発表
有明アリーナ 東京都が2017年12月、実施方針を発表
滋賀県大津市公営ガス 大津市と大阪ガスなどでつくるびわ湖ブルーエナジーが2018年12月、契約を締結
(出典:内閣府「コンセッション事業等の重点分野の進捗状況」などから筆者作成)

 民営化に向けて手続きが進んでいるのは、下水道で高知県須崎市、文教施設で法務省の旧奈良監獄(奈良県奈良市)、東京都の有明アリーナ、国際会議や展示会の会場となるMICE施設で横浜市などだ。

【次ページ】コンセッション方式による民営化の主な国内事例

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