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- 2020/02/07 掲載
「採用単価は他業種の2倍」まるで雇えないトラックドライバーの現実
物流危機の問題はさらに深刻化
2015年10月、経団連は「企業の競争力強化と豊かな生活を支える物流のあり方」という提言書を発表した。同提言書では、「物流業界が官民連携で課題の克服や新しい産業構造への適切かつ迅速な対応をとらなければ、我が国産業全体の競争力が弱体化するおそれ」と記し、物流業界が抱えるさまざまな課題について、強い危機感を呈している。同提言書から4年が経過したが、物流危機は解消するどころかますます混迷を深めている。「荷物を運んでくれない」といったメーカーなどの悲鳴は、物流難民という新たな問題を引き起こしている。
物流危機の根幹にある課題の1つはトラックドライバー不足だ。運送会社がトラックドライバーを集めることができないがゆえ、荷物を運びたくても運べないのだ。トラックドライバー不足について、実際の採用データなどを数字ともにご紹介しつつ、考えてみよう。
採用広告の表示回数に8倍近い差
筆者はここ数年、創業100年の老舗運送会社である秋元運輸倉庫のドライバー採用を支援している。同社の協力を得て、トラックドライバー採用の実例を紹介しよう。同社では、2019年4月から10月にかけて、求人情報検索エンジン「Indeed」を使ったトラックドライバー募集を行った。募集広告を打ったのは、東京都港区、神奈川県川崎市川崎区、千葉県袖ケ浦市にある3つの営業所である。以下がその結果だ(2019年6月)。
募集営業所 | 表示回数 | 広告費1円あたりの表示回数 | 平均クリック単価 |
東京都港区 | 1449 | 0.13 | ¥288 |
神奈川県川崎市川崎区 | 4251 | 0.12 | ¥286 |
千葉県袖ケ浦市 | 11092 | 0.14 | ¥222 |
Indeedは採用に特化したリスティング広告を行っている。採用広告出稿企業が1クリックあたりの単価を設定し、広告効果をコントロールできる仕組みだ。
2019年6月、秋元運輸倉庫では3つの営業所でIndeedを用いた採用活動を行った。クリック単価は比較的近い金額に設定した。結果、東京営業所:1449回、川崎営業所:4251回、千葉営業所:11092回と、採用広告の表示回数に大きな差がついた。
繰り返しになるがクリック単価や予算に大きな違いはない。むしろ表示回数の多い千葉営業所では、クリック単価は少し低額に設定した。にもかかわらず、これだけ大きな差がついたのはなぜだろうか?
東京都にはトラックドライバーになりたい人が少ない?
求人数 | 対象地域の求人にクリックした求職者数 | 求人1件あたりの求職者数 | |
東京都 | 2169 | 12901 | 5.9 |
千葉県 | 1257 | 9143 | 7.3 |
Indeedのデータによれば、2019年8月、東京都内でトラックドライバーに対する求人件数は2169件。対して「東京都 トラックドライバー」でIndeedを検索した求職者は12901名であったから、求人1件あたりの求職者数は5.9名となる。
同時期、千葉県におけるトラックドライバーの求人件数は1257件。同じく求職者数は9143名であった。求人1件あたりの求職者数は7.3名であり、東京と比較すると1.2倍ほどの開きがある。
同じように採用広告を出稿しても東京都港区および川崎と袖ヶ浦で表示回数に大きな差が生じた一因は、これである。
実際秋元運輸倉庫では、千葉営業所のトラックドライバーの募集においてはある程度の結果を出せているものの、川崎営業所、東京営業所については非常に苦しんでいる。
競争の激しい都市部は人口も多いが職業も多い。たとえば東京都の就業者数は792万2千人(平成30年度実績)だが、トラックドライバーよりももっと魅力的に見える職業が東京都にはあふれている。そのために、トラックドライバーへの就職希望者が少ないのであろう。
【次ページ】トラックドライバーの採用単価は他業種の約2倍!?
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