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  • 2011/05/27

父が息子に贈るコンサルティング講座(4)~「仮説脳を目覚めさせる-2」 見えてきた営業改革方法

営業2部から5部の部長を集めた、営業支援システムのフェーズ1の評価会議は、「説得の設計」で狙ったとおりの成果を出した。4人の部長は、営業1部の原部長と僕、そして担当の石津の説明で、現行の営業システム(フェーズ1)の徹底活用を約束したのだ。もちろん、谷川事業部長がその場に居たことは大きい。それと、親父が言っていた、原部長の、会社をよくしようという思いが通じたようだ。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

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 ただし、困ったことも起きた。谷川事業部長が、システムによる売り上げ拡大効果に感心し、フェーズ2の内容を聞いたのだ。その時に、よせばいいのに、突然石津が立ち上がり、フェーズ2のシステムの説明を始めた。彼としては、関係者にフェーズ2の内容を示す絶好のチャンスだった。しかし、顧客データベースや営業パーソンの間の情報共有、営業パーソンの実績や能力の見える化に対して、機能の詳細や実現方法の説明に終始した。辛抱強く聞いていた谷川事業部長は、次回もう少し具体的な内容を聞こうかと言って、会議はお開きとなった。

 このまま部下の石津に任せっきりでは、効果の出ない、使われないシステムができ上がる心配がある。親父と幸恵に「仮説構築脳」を使う方法を教えてもらった次の日、僕は石津に対して、「答えを聞く」ことにした。ライトクエスチョンは、1つに絞った。「効果を上げる方法は何か」だ。

効果を上げる方法は何か

「それで、顧客データベースの構築で、何で売り上げが上がるんだ」

 僕の席の横で、べっ甲のフレームのメガネを拭いていた石津は、驚いたように僕を見た。

「え?それは、顧客を良く理解して、営業精度や営業効率を高めるからでしょ」

 石津は、昨日誰かが、苦し紛れに言ったのと同じことを言った。僕は、石津を会議室へ連れて行った。

「あのなぁ。システムの投資をするからには、売り上げや利益を上げなきゃいけないだろう。具体的な、効果を上げる方法を聞いてるんだ」

「それは、ユーザーの原部長に考えてもらわないと」

「それがわからないのに、システムの機能がわかるわけがないだろう。たとえば、顧客の需要のタイミングを捉えるためにどんな情報を知るべきか、営業パーソンの間で標準化して情報のヌケモレをなくし、調査結果をデータベース化して、そのタイミングに合わせて提案を計画的に仕掛けることで、競争相手よりも早く十分な準備をして、勝率を上げるとか。または、顧客の魅力度と攻略の難易度を同じようにヌケモレなく把握して、重点顧客を明確化し、そこに営業リソースを傾斜配分することで勝率を上げられるとか。石津もこの仕事長いんだ。いろいろ考えられるだろう」

 これも、昨日どこかで聞いたような。

「あ、そうそう。吉川さん。さすがですね。2番目のやつです。攻めるべき顧客の明確化と、そこへの営業パーソンの重点配分。たしか原部長、そんなことを言ってました。魅力度は、顧客の当社部品を使った製品の生産の伸び率。攻略の難易度は、当社全製品の顧客内のシェアとか言ってました。あ、それと、重点顧客は、部として決めるのと同時に、各営業パーソンも自分で判断して、訪問頻度を調整するような仕組みにしたいとも言ってました」

「だとすると『効果を上げる方法』は、営業パーソンの間で顧客の魅力度と攻略の難易度を標準化して情報収集でヌケモレをなくし、調査結果をデータベース化して、これを基に部として重点顧客を明確化し、そこに営業リソースを傾斜配分する。また、各営業パーソンも、顧客の魅力度と攻略の難易度を基に、自ら顧客ごとに妥当な訪問頻度を設定することで勝率を上げる、となる」

 石津は、僕に向って親指を立てると、グー、と言った。この男、上司を上司だと思っていない。

「営業パーソンの間の情報共有の方は、どうやって効果を出すんだ」

「それは、これから営業パーソンがどのような情報を持っているか、何は共有すべきか、分析して明確化します」

「方法ではなくて、答えを聞いているんだ」

「ええと。営業日報の共有は、フェーズ1のシステムでやりましたよね。フェーズ2では、顧客攻略で悩んでいる営業パーソンに、ほかの営業パーソンがアイデアを与えるとか、同業の顧客への攻略方法を、関係する営業パーソンがフォーラムなんかで一緒に考えるとか、そういう話です。つまり『効果を上げる方法』は、営業パーソン一人では解決できない顧客攻略に関わる問題を、営業パーソンの衆知を結集して解決することで、勝率や利益率を上げるとなりますね。あれれ。現状詳しく知らないのに、効果を上げる方法。考えられますね。そうか。こういう説明をすれば、谷川事業部長にも、もっとわかってもらうことができたんですね」

 あいかわらず、石津の理解力はすばらしい。彼は、何だか興奮している。

「吉川さん。説得の設計に続いて、またスゲー技法を身につけたみたいですね。原部長に、ほかの『効果を上げる方法』がないか、聞きに行きましょうよ。夜は遅くまでいるから、いつでもハラセーに来るように言われてるんです」

「何だ。ハラセーって」

「え。原部長の席に決まってるじゃないですか」

 わかるわけないだろ。こいつは、興奮すると日本語が乱れる。


【次ページ】仮説構築脳を使って「効果を上げる方法」を仮説する

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