- 2012/07/30 掲載
野村総合研究所、「NRIビッグデータ・ラボ」を始動 今後3年で350名体制に

執行役員
IT基盤インテグレーション事業本部長
嵯峨野文彦氏
発表にあたって野村総合研究所 執行役員 IT基盤インテグレーション事業本部長の嵯峨野文彦氏は、「現在、ビッグデータというと、IT投資を増やしてもらおうとするITベンダーのマーケティングの思惑が見え隠れする。しかし、企業としてのビッグデータ活用で重要なのは、いかにビジネスモデル開発していくのか、それをどうデータ分析で検証していくのか、そしてそれをエンジニアリングしていくのかということ」と語る。
従来からあるCRM(Customer Relationship Management)ではなく、顧客情報資産を収益化する新しいCRM(Customer Resource Management)としてとらえ、それに必要なことを顧客と共同で実施していくという。
「NRIビッグデータ・ラボ」では、NRIのコンサルタントをはじめ、データアナリスト、システムエンジニアといった各部門のスペシャリストを組織化していく。まず、BIやビッグデータ分析にかかわるデータアナリストやBIを利用するシステムエンジニアを加えた約60名で「NRIビッグデータ・ラボ」のコアチームを組織する。
ラボという名称を採用したのは、顧客と共同研究を持ち寄る体制であることも理由の1つ。ディスカッションから開始するので、その議論自体は費用はかからないとしている。研究の成果は、各社と個別契約で共有の仕方を考える。

ビジネスインテリジェンス事業部長
柿木 彰氏
最初の1社は、ある耐久消費財メーカーの事例。同社は顧客と直接コンタクトできない立場にあったため、顧客のことをより深く理解したいと考えていた。そこでNRIが提案したのが、同メーカーの顧客専用の会員サイトの構築である。その中で会員がSNSなどに書き込んだ場合、その発言内容を取り込み、インフルエンサー(ネットで影響力の強いユーザー)を発見、スコア化する。
顧客の影響力(発信力)は5段階に分類。調査したところ、Lv4、Lv5の会員が情報発信の大半を占めている状況にあったという。こうした会員に積極的に働きかけることで、ランダムに会員を抽出する場合と比べて、クチコミの波及効果は7倍に高まった。
たとえば、年間150万円を購買するユーザーAと、同50万円のユーザーBでは、従来の売上ベースでの指標ではAのほうがロイヤル顧客だったが、情報発信力を加味した場合、Bの情報発信により、友人7人が20万円を購買したとすると総合購買力は190万になるため、Bのほうが顧客価値が高い、といったことになることがわかったという。
もう1社はある金融機関との共同実験。同機関では、金融商品の解約を予測し、予兆があれば早めに営業アプローチを行いたいというニーズを持っていたという。そこで、NRIはコールセンターすべての対応記録の分析を提案。顧客情報とコールセンターの対応記録をひも付けて、解約予測率の向上を図った。
この結果、顧客の解約要因を、顧客のライフステージの変化といった顧客自身の内部要因(企業の外部要因)と、会社の信用度低下といった企業の内部要因に分解。因果関係構造の抽出を実施した。
同社では実は従来からコールセンターの情報をもとに、人手で解約予測を分析していたが、「従来の人手の予測に比べて2倍以上の精度になった」(柿木氏)という。
一方で、こうしたネット上での取り組みがマッチしない業種もあるとしており、その場合は別の仮説に基づいて実施内容を検討していくという。
嵯峨野氏は、「ITとビジネスを両輪でまわせるようになった。効果検証までのサイクルが早くなり、その結果費用も抑えられた」とラボ型のメリットを強調。今回、約60名で構成される「NRIビッグデータ・ラボ」は、今後3年で350名超の体制に拡充する予定だという。
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