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  • 2014/06/24 掲載

Mt.Gox倒産でもビットコインは終わらない? 現代型の仮想通貨とは何なのか

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2014年2月、仮想通貨「ビットコイン」の最大級の取引所であった「Mt.Gox(マウントゴックス)」が破産した。何年も発覚しなかった窃盗行為によって同社内のビットコインが流出したから……と言われているが、真相はまだ何とも言えない。Mt.Goxの倒産によってビットコインバブルは弾けた、とも言われているが、しかし、ビットコインは現在も「仮想通貨界の基軸通貨」として機能しており、そして「仮想通貨」は、今後も進化・発展が大いに期待される分野だ。ビットコインとは何なのか、「お金」なのか「物」なのか、そしてビットコインや仮想通貨は今後どこに向かうのか。法的な視点からビットコインやMt.Gox倒産、仮想通貨全般などについて解説する。

弁護士 河瀬 季

弁護士 河瀬 季

東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年からIT関連フリーランスとして、SBクリエイティブ社の雑誌への寄稿、書籍の全編執筆などの執筆活動や、各種ウェブサービスの開発等を行う。司法試験合格後は弁護士として、ITとビジネスに強いコスモポリタン法律事務所(東京・音羽)に所属。自らも、複数のIT企業の顧問弁護士などとして、新興企業支援や知的財産権管理、資金調達などを含む、各種の企業法務に携わっている。
個人サイト:http://tokikawase.info/
Twitter:http://twitter.com/tokikawase


そもそもビットコインとは何なのか

 ビットコインは、インターネット上で流通する、仮想的な通貨だ。ただ、「仮想的な通貨」というだけであれば、特に今更注目すべきものではない。我々は日常的にSuicaに電子マネーをチャージして缶ジュースなどを購入しているが、あれだって「仮想的な通貨」だ。ビットコインが大きな話題となった理由は、大きく二つ。転々流通性と、分散型であることだ。

 まず、ビットコインは転々流通する。たとえばSuicaの場合、「ユーザーがSuicaポイントで買い物を行い、その店の店長がユーザーから貰ったポイントを別の店で使う」ということはできない。店長は、単にSuicaポイントの発行主体から現金を貰うだけだ。これと異なりビットコインの場合は、あるユーザーと別のユーザー間で取引を行ってビットコインを渡し、受け取ったユーザーがまた別のユーザーにビットコインを渡す……ということが可能だ。このようにして、ビットコインはインターネット上を転々流通する。

 次に、ビットコインは「分散型」であり、「発行主体」や「管理主体」が存在しない。日本円は日本政府、アメリカドルはアメリカ政府が発行して管理する通貨だが、ビットコインには、「ビットコインを発行、管理する主体」が存在しない。この意味では、ビットコインは日本円よりダイヤモンドなどに近い。本稿では技術的な部分の詳細は割愛するが、ビットコインは、IT技術によって「希少であること」が担保されていて、希少であるが故に交換価値を持つ。

 ……と、以上がビットコインの概要だが、「ビットコインが技術的に新しいのはどういう点か」というと、どちらかといえば、「分散型」の方だ。既に忘れている人が多いと思われるが、「Mondex」という転々流通性を持った仮想通貨が、90年代にも一度流行しかけているからである。

ビットコインは「お金」なのか?

 法律家がよく質問されるテーマは、「ビットコインはお金なのか?物なのか?」ということだ。まずは、この質問について考えてみよう。

 法律の世界では、「お金」の最大の特徴は、「価値そのものである」ということだ。どういうことか、簡単に解説する。

 たとえば、筆者の友人が、人から携帯電話を預かり保管する倉庫屋を運営していて、筆者と他の9人がそれぞれ自分の携帯電話を彼に預けた、としよう。

 そして彼の倉庫が火事で燃え、全10台の携帯電話のうち5台が消失してしまった……という場合、携帯電話を預けていた人が彼に求めることは、明らかに2パターンだ。

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(1)携帯電話が燃えずに残っていた人→その携帯電話を返してもらう
(2)携帯電話が燃えてしまった人→代わりに金銭賠償を求める

 何を言いたいかというと、「10台中5台しか残っていないから、0.5台の返還を求める」ということは、およそ考えられない。そもそも、他人の携帯電話を返して貰っても意味がない。

 これに対し、筆者が友人に貸していたのが「1万円」で、同じように1万円を預けていた人が他に9人いて、そして火事で5万円が消失してしまった……という場合には、おそらく直感的にも、処理が異なる。即ち、「10万円中5万円しか残っていないから、一人に5千円ずつ返す」ということになりそうだ。

お金には、「占有」と離れた「所有」は観念できない

 上記の違いを、法律は「占有」「所有」という概念で説明する。

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 携帯電話の場合、「倉庫」に預けているにせよ、筆者の携帯電話を「所有」しているのは、あくまで筆者だ。その携帯電話を現実に支配し「占有」しているのは倉庫の運営者だが、しかし「所有」しているのは筆者なのだ。

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 そしてこれに対し、お金の場合、「所有」「占有」は常に一致する。お金を貸したら、そのお金は借り主が「所有」するものだ。貸し主は「所有」を失い、単に「お金を返せと彼に求める権利(債権)」だけを得る。借り主は、お金を「占有」し、そして「所有」する。

 ……実のところ、厳密に考えていくと、お金の場合も携帯電話と同じような処理を行うことが、絶対に不可能だという訳ではない。お金、たとえば1万円札には、それぞれ固有の記番号が記載されている。だから、燃え残った1万円札を倉庫から回収し、自分が貸したお金の記番号と照らし合わせれば、「この1万円札は自分が貸した1万円札だ」という判断は可能だ。「その判断は可能だけど、しかしお金の場合、その判断は意味を持たない(いずれにせよ筆者は5千円しか返して貰えない)」ということである。

 このように、法律は「携帯電話」と「お金」を区別する。

【次ページ】 ビットコインは「ビットチェーン」による追跡が可能

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