医薬品ネット販売紛争の最高裁判決
医薬品のネット販売に対する規制は、当初から賛否両論を巻き起こしていた。インターネット上では対面販売を行うことができず、副作用被害などのおそれが大きい、従ってネット販売は望ましくない……というのが規制の理由なのだが、これに対しては、募集に応募されたパブリックコメントの85%が規制反対、という状態だったのだ。
現在の日本では、特に企業活動に対する規制について、制定手続が複雑で政治対立などを引き起こしかねない法律には曖昧な規定を置くに止め、その下位に位置する「制令」や「府令」、「省令」で具体的な規定を置く、ということが珍しくない。医薬品のネット販売も、薬事法上は禁止されているのか否か明確でなく、「省令」によって明確に禁止とされていた。「同じような規制は自社の関わる業種にもある」、という人も多いのではないだろうか。
今回の訴訟は何を争っていたのか
今回の訴訟で争われていたのは、ケンコーコム・ウェルネットが、「第一類医薬品」および「第二類医薬品」をインターネット上で販売する権利または地位(以下簡便のため「医薬品ネット販売権」と呼ぶ)を持っているか否か、という点だ。
医薬品は安全性によって3種類に分類されており、ネット上で販売できるのは、最も安全性の高い「第三類医薬品」のみだとされていた。例えば、アリナミンEXが第三類、ルルAゴールドが第二類だ。ネット販売事業者であるケンコーコム・ウェルネットは、「第一類」「第二類」の医薬品を売ってはならないとされていたのだが、しかし、それらを売る権利があるのではないか、ということを確認する訴訟だ。
「侵害」と法律の根拠
今回の訴訟や医薬品のネット販売規制について検討する前に、まず確認しておきたいのは、「医薬品をインターネット上で販売すること」は本来自由であり、法律や省令による規制は、それを制限するもの(侵害)である、ということだ。