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- 2015/11/26 掲載
東大 暦本純一教授が語る、IoTの次に待ち受ける「IoA」とは何か
自分の感覚が他のモノに乗り移る「Jack-In」と、自分の感覚から外に飛び出す「Jack-Out」
しかし、こういった知的産業がリプレイスされてしまうという兆候は、いまから20年も前から現れていた。それは人とコンピュータとの対決で、チェスのチャンピオンがIBMのコンピュータに負けてしまったことだ。いま、まさにこれと同じことが将棋の世界でも起きようとしている。コンピュータと人の能力を比べた場合、ある部分ではコンピュータのほうが上回っていることは明らかだろう。
暦本教授は「単にコンピュータが人と置き換わるのではなく、人がより強化され、拡張される。究極のテクノロジーは我々を高め、オーギュメントするために使われるだろう。こういった能力は、知的能力のみならず、身体能力や存在感などにも応用できる」とし、同氏が現在研究中のドローンについて紹介した。
ドローンのセンシング能力と人間の空間認識の能力が結びつくと、ドローンにおける「テレプレゼンス」が実現する。人に着けたヘッドマウントディスプレイに、ドローンからの映像が伝送され、人があたかも空を飛んだような感覚が得られるわけだ。
「その場所にいなくても観光旅行をしたり、災害時にいち早く専門家が現場を検証することも可能になるだろう。このように人の能力を高めることができる」
暦本教授は、ドローンの中に人が全感覚的に没入することを「Jack-In」と呼んでいる。Jack-Inとは、SF好きなら誰でもご存知の『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン著)の小説で使われた言葉だ。同氏は「これはサイバースペースで電脳空間に突入(接続)するときに使われたものだが、電子的な世界だけでなく、ドローンだったり、他の人間だったり、自分たちの感覚が他のモノに乗り移れるかもしれない」と熱弁する。
実は、Jack-Inの反対の概念に「Jack-Out」という言葉もある。これは自分が没入したものから離脱する、つまり自分の感覚から外に飛び出す、ある種の幽体離脱のようなものだという。もし自分の体から外に飛び出せるとしたらどんなことができるのか。スポーツでは、自分のフォームをチェックすることが重要だが、通常では自分の姿が見えないため、鏡の前に立ったり、ビデオ映像を後からチェックしたり、コーチを雇ったりする。
「たとえばドローンがあれば、スポーツをしている瞬間の姿をリアルタイムに見られるようになるだろう。自分の存在を超えて、目の位置を変えて自身を見直したり、有名なコーチがドローンにJack-Inしてリモートでアドバイスしてくれるかもしれない。つまり空間や時間の制約を超えて、能力が行き交うことが新しい姿になるだろう」
ドローンと人間のJack-Inが可能になれば、さらに一歩進めて、人と人の間でのJack-Inも実現できるかもしれない。これは、ある意味では二人羽織のようなものだ。
「何か楽しい体験をしているときに、全周囲・全感覚的に他人と共有できれば素晴らしい。あるいは料理をしているときに、専門の料理人がジャックインしてアドバイスしてくれると便利だ」
【次ページ】テクノロジーは人を置き換えるものではなく、自身の能力や価値観を拡張してくれるもの
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