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  • 2015/12/15 掲載

トヨタ流の「在庫」管理術、リードタイム短縮のための7つのポイント

トヨタ生産方式の導入方法(6) 在庫は罪庫

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トヨタ式が考えるムダはいくつもあるが、その中で最も警戒すべきムダは「つくり過ぎのムダ」だ。世の中には「機会損失」を恐れる人がいる。せっかく売れるのに、つくるほうが間に合わず「儲け損なった」というわけだ。しかし、実は「儲け損なう」には実害はない。企業にとって本当に怖いのは「つくり過ぎ」であり、つくり過ぎをいかに防ぐかこそがトヨタ式改善では最も大切なポイントの一つとなる。ただし、実際に取り組もうとすると、ことはそう簡単ではない。今回はトヨタ流 在庫管理のポイントを解説する。

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。

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大量の在庫はムダを生むばかりか、「つくる力」の欠如ともなる

つくり過ぎは会社を潰す

連載一覧
 トヨタ式の基本は「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」にある。つまり、ものをつくるための部品や部材に関しても余分な在庫を持たず、製品に関しても需要に合わせてものをつくり、余分な製品在庫を抱えないということだが、トヨタがなぜこれほどに「つくり過ぎ」を恐れるかというとやはり1950年の経験が大きかったからだ。

 この年、トヨタは倒産の危機に瀕して、銀行からの融資を受ける条件として創業者である豊田喜一郎氏の社長退陣と2000名近い社員の解雇という辛い決断を行っている。なぜそれほどに追い込まれたのか。理由は景気の悪化もあったが、一番の理由は需要を無視して売れると思って続けていた「見込み生産」にあった。

 当時の辛さを、トヨタ式の基礎を築いた大野耐一氏はこう話している。

「いくら車をつくっても、ものが売れない限りお金は入ってきません。工場は在庫の山、会社は金がないという最悪の事態でした。工場で売れない在庫の山に囲まれて、その時私がつくづく痛感したのは『ともかく、つくり過ぎは会社を潰すことになる。つくり過ぎは罪悪だ』ということでした。売れないものをいくらつくってみても在庫の山をつくるだけで、最終的には売れ残ってスクラップにすることになる。それよりも『売れるものを、売れる時に、売れるだけつくる』ことがいかに大切かを本当に身にしみて感じました」

 このときの「在庫の山を抱えて困り果てた」惨めな体験が当時のトヨタマンにはある。在庫の山を生む原因は市場でいくら売れるかという「必要数」を無視した「見込み生産」にある。景気が良ければ次々とものをつくって倉庫に保管しておいたとしてもいずれは売れることになるが、少しでも景気が悪くなったり、あるいはお客さまの嗜好が変化するとせっかくの在庫は決して売れることのない「罪庫」になってしまう。

 だからこそ、ものづくりは必要数を意識しながら、「売れるものだけをつくる」というのがトヨタ式の考え方だ。

 とはいえ、「売れるものだけ」をつくり、在庫は極力持たないようにすることの大切さは理解したとしても、それでも大量の在庫を抱えたがる企業はとかく絶えない。在庫がないと注文にすぐに応えることができず、「売り損ない」になると恐れるからだ。

 だが、機会損失を防ぐには、多すぎる在庫は必要ない。トヨタ式改善を進めることで、たとえば注文を受けて何時間かでものをつくり、すぐに納品できる体制をつくればいいだけのことだ。つまり、大量の在庫はムダを生むばかりか、「つくる力」の欠如という問題の放置ともなる。

リードタイム短縮のためにやるべきこととは?

 では、在庫を最小限にするためには何が必要かというと、リードタイムの短縮が不可欠になる。リードタイムにはいくつかの種類がある。

生産リードタイム:生産着工から完成まで
商品リードタイム:受注から納品まで
開発リードタイム:開発から納品まで

 こうしたリードタイムの短縮は、競争力のアップと多品種化への対応を実現することになる。

【次ページ】リードタイム短縮のための7つのポイント

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